普通は抵抗感の強いインフレターゲット政策 --- 岡本 裕明

2013年01月24日 23:55

カナダ中央銀行が開いた定例政策会議。市場関係者に利上げを見込んだ人はいませんでしたが、ステートメントに今後の見通しがどう表現されるか、というのはいつもながら注目されます。そして今回は更にトーンダウンして「利上げは当面ない」としています。なぜなら、インフレターゲット導入国であるカナダにおいてインフレが期待値より下回り、当面、インフレになる兆候がないというのが理由であります。カナダでは2010年からずっと上がる、上がるといい続けてきた利上げは既に19回もなく、狼少年を通り越しています。ちなみにカナダ中銀の総裁は今年イングランド銀行の総裁になるマークカーニー氏。氏はイギリスの中央銀行総裁のあとは将来のカナダ首相の呼び声もあるほどの優秀な人なのですが、なぜ、中銀は見込み違いをし続けたのか私にはよくわかりません。


北米の人にとって利上げは敏感であり、いつか必ず利上げが行われると信じる一種のトラウマのような記憶があります。カナダでは1982年には20%近くになり、1991年あたりまで10%を越えていた同国の政策金利において中高年層はいつかまたあの日が来ると思い続けています。

なぜ、政策金利がそこまで高くなっていたかといえば物価抑制であり、日本以外では物価は上がることが当たり前でありますからそれを冷やすという重要な役目であったわけです。ではなぜ、その政策金利が90年代初めを境に安定的に下がり始め、いまや、1%という水準を維持しているのかいえばインフレターゲットの導入が効いているというより物価そのものが上がりにくくなったということです。

物価は原油など資源価格に大きく影響されること、国内の中流層の生活水準の向上に伴う消費性向の上昇が主因です。しかし、カナダが住宅バブルの風に吹かれている頃でも政策金利はせいぜい4%台に納まっています。その点からすれば私は資源価格が引き起こす国内物価への影響が最も大きいものである、と考えています。

カナダは産油国ですが、産油するコストが下がり、産油量も増えていることはひとつ大きな物価安定の要因であります。また、カナダもご他聞にもれず、シェールガスが出ますので今後はこれも原油価格を潜在的に抑える作用がでるでしょう。

今、メキシコあたりでもインフレは収まり、利下げの機運が高まっています。つまり、アメリカを含む北アメリカ大陸では物価安定に伴う政策金利の低迷が起きているのです。

日本ではインフレターゲットを導入しましたが、もともとインフレターゲットとは高インフレの国がそのインフレ率を下げるための政策のニュアンスが強いものです。いわゆる解熱を狙ったものです。日本の場合は逆の効果を求めているのですのでこれは世界で初の試みになるはずです。私は安倍首相のいうインフレターゲットの本質をそこまで理解されて主張されているのかはわかりません。その点は明らかに違うということだけは言っておきましょう。

地球を俯瞰する限り、先進国の中央銀行はインフレ退治をするのは上手になりましたがインフレを意図的に引き起こすことについては第一時世界大戦後、戦債圧縮のため行ったドイツなどで経験が非常に少ないと思います(しかもそれはハイパーインフレを引き起こしました)。新興国においては金利を引き下げることで消費を増やすという効果を維持していますのでインフレを作り出すこともありますが先進国では中流層の消費は既に持つ物は持っているので大幅に増えないのであります。それは特に住宅です。

先進国における持ち家比率は大体日本でもカナダでもアメリカでも三分の二であります。国の政策で持ち家がその水準まで引きあがるとインフレを引き起こすのは容易ではないということなのです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年1月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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