円安トレンドは続くのか? --- 岡本 裕明

アゴラ

このところ為替相場を見ていてどうも波長が変わってきている感じがするのですが、そう思っているのは私だけでしょうか? 黒田日銀総裁は4月3日、4日の政策会議でそれなりの金融緩和策を打ち出すと思われるのですが、市場は既にそれを織り込んでしまっている可能性があります。今日はそのあたりを考えてみましょう。


為替市場や株式市場では往々にして噂先行、正式発表は材料出尽くしとなるものです。つまり、あやふやな想像が市場のあいまいな夢を盛り上げるのですが、それが発表された段階で現実のものとなる、という一種の心理的現象であります。

昨今の円安は主に安倍首相がアベノミクスなる三本の矢を発表し、特に日銀総裁、および副総裁を金融緩和主導派の黒田、岩田両名、それにプロパーの中曽根氏はさほど抵抗勢力にならないというラインで夢を膨らませました。ところが最近のメディアのトーンはお祭りからそれをどう現実化させるかというストーリーに少しずつ軌道修正しています。つまり、金融緩和もあくまでもデフレ脱却という目的の中での話であって結果として2%のインフレが2年程度内に実現できるのか、というリアリティの話に変わってきています。

そんな中、為替についてみると以前から申し上げているように天秤にかけた場合、USやユーロに対してどちらに傾くかというシーソーゲームでありますので、日本の夢物語にやや食傷気味になってきている感がありました。

そこにユーロ圏ではイタリアの選挙の問題、そしてキプロスの問題が生じたことがユーロにやや弱気なイメージを与えてしまいました。特にキプロスについては私のブログで指摘させていただいたように、問題の根源が別の次元にあること、それとドイツでもフランスでもイタリアでも使っているユーロという通貨の預金カットをキプロスで行ったという重い意味がこれからボディーブローのように効いてくる気がします。キプロスの問題は最終的にユーロ離脱議論がもう一度噴出してもおかしくありません。なぜならアイスランドのように通貨切り下げが出来ないのですからキプロスは経済低迷、貧困に向かってまっしぐらになる可能性があるのです。

事実、ユーロ円は2月7日が潮目の変わりどころでした。それ以降、トレンドとしては円高ユーロ安の展開になっています。今後、イタリアの政権の安定化、及びキプロス問題が収まるまではこのトレンドが続くのでしょうか?

一方アメリカ。歳出削減は同国経済には大幅なマイナスになります。いくら民間部門が堅調であっても公共部門と軍事支出の削減はその影響の波及効果はあまりにも大きくなります。例えば空港職員が減ってきていますので入国審査の行列はたまらないものになるでしょう。そうなると航空運輸や観光あるいは国境近くの経済に影響します。また、北米は行政と経済の機能を別々の街や都市にしていることが多いのも影響を大にします。例えばニューヨークとワシントン、あるいはワシントン州ならばシアトルとオリンピアといった具合です。更に軍で持っている街やエリアも多数あります。つまり、局地的な打撃が生じるということです。結果としてこれは為替では円のシーソーが強くなるわけです。円ドルも3月中旬からトレンドが変わってきている感じが見えます。

では噂される日銀黒田総裁の手腕。それなりのものが出てくるのでしょうが、サプライズを引き起こさない限り市場は素通りになるのではないでしょうか? これは白川前総裁が予定通りの金融緩和をしても株は下がる、為替は無反応だったことが何度もありますが、それと同じなのであります。市場は理論どおりには動かないのかということをそのときに改めて検証するよいチャンスだと思っています。

円が本当に円安に動くときとは長期国債が下がり始めたときにその不安感を伴うものではないでしょうか? とすれば、今の日本の長期国債は驚くほど強い、いわゆる国債バブルといわれる水準であります。もちろんバブルならいつかパーンと破裂しますから以前あったように1%ベーシスも一気に下落することもありえるのでしょうけど常識的に考えて日本は三本の矢で成長するのですから日本は強くなるのです。つまり、その通貨の円を売らなくてはいけない理由はないというのが本来ある市場の夢ではないかと思います。

為替や株は予想が本当に難しいものです。なぜなら詳しく知っている人、細かいデータを見続けている人ほどだまされやすいものです。市場心理とはなかなかつかまらないネズミを追っかけるようなものなのかもしれません。

来週よりいよいよ実質新年度入りです。外から見る私には日本には大きな太陽が昇りかけているように見えます。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年3月29日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。