「新卒一括採用」は本当か?

2013年03月30日 15:20

常見陽平氏の「就活の時期を遅らせよう」では学生も企業も救われないを拝読。私が疑問に感じたのは、新卒を一括しての採用は全体のどの程度だろう?という点である。


先ず第一に、私は普段ベンチャー企業経営者に会う事が多い。彼らが人の採用と労務管理に頭を痛めているのは事実である。しかしながら、彼らの口から新卒を雇ったという話を今だ嘗て聞いた事がない。

忙しいから新規に人を雇う訳で、マンパワーを割いて教育などしている余裕はない。従って、即戦力として期待出来る人材を業界内で引き抜いて来る訳である。

求められる人材は大別して二種類と思う。

先ずは、経営者が新規事業の立ち上げに忙殺され、既存ビジネスが疎かになるケースである。その場合、今ある事業、業務を社長に代って仕切れる人間を採用する事になる。

充分に利益が出ている優良ビジネスであっても、その内薄利ビジネスとなり撤退を余儀なくされる。それまでの雇用という事になる。

今一方は、新規事業を具体的に立ち上げる事なった時に実際に立ち上げを担当する人間である。

ベンチャーの場合、資金に余裕がないケースが殆どであるからマネタイズを急ぐ必要があり、商流の構築などは、別途業界で「顔」が効く人間を雇う事になる。

この場合も、事業が立ち上がってしまえば高給を支払って雇い続ける必要性がない。

以前、アメリカの大学を卒業して外資系企業を渡り歩くというキャリアパスで紹介のN氏は、ベンチャーではないものの新規事業の立ち上げ責任者として大手外資系保険会社にスカウトされている。

次いで、歴史のある大企業の実態はどうだろうか?

私は1979年に地元の国立大学の工学部を卒業し、就職した。その時の所属学科同級生の就職及び内定状況は大体下記の様であったと記憶している。

先ず、定員40名の学科でスタートするも医学部を受験し直したり、ドロップアウトしたりで講座配属決定の4月の4年進学時には30名になっていた。そして、同時に3名の企業奨学金の受給が決定している。

配属された講座の研究対象毎に産学共同研究がなされており、その関係もあり学生に対し奨学金を支給していた訳である。奨学金を受給した学生は慣例に従い、自動的にこの企業に就職する事になる。

9月に大学院の試験があり、私を含め4名の就職組以外は全員受験し、合格。同時に、この内10名以上の半年後の大学院入学時からの奨学金受給が決定した。

4月の受給決定者同様慣例に従い奨学金支給企業に就職する事になる。

奨学金受給者の就職は以上の様に誠に以て判り易い。一方、そうでない学生であっても配属された講座毎に研究対象が同じという理由で関係が密な企業があり、まるでお見合いの様に先生方が学生に企業を紹介していたと記憶している。

多分、余り公にならないだけで一定以上のレベルの大学工学部では今も一般的なのではと推測する。

そもそも、各製造業の人事部で研究者の目利きが出来るとはとても思えない。

一般公募にして面談するだけのマンパワーが揃っているとはとても思えない。

又、大卒で入社させて世界レベルの研究者にまで育成するのも大変な負荷である。

従って、講座の責任者である教授の推薦で奨学金の支給を決定し、これを実質的な「内定」通知とすると共に、対象学生が大学院に進学し、入社時即戦力化を期待した訳である。

このスキームのメリットは下記の通りである。

企業:比較的質の高い学生の長期、安定しての採用。人事部での採用、研修負荷の軽減。

学生:生活費の獲得。就活に時間を取られる事なく本来の研究に専念可能。

大学:大学の基礎研究と企業応用研究のシームレスな一体化。

製造業の生命線ともいえる研究開発担当者の採用に関しては、少なくとも1979年時点では「新卒一括採用」ではなかった。そして、現在もほぼ同様ではと推測する。

上記は理工系卒業者のケースであるが、文系はどうだろうか?

実態として、今尚「体育会系」の人気が高いのではないか?

表立っては、「脳味噌筋肉なんて今時使い物にならない」と確かにいっている。しかしながら、本音では「頭でっかちでおててはお留守」には懲りた。矢張り、体育会系が戦力になる!」が企業幹部一般認識の様に見受けられる。

こういう人材は別枠で早い時期に内定が出ているに違いない。

最後は、ユニクロの様に大学1年生での内定を堂々と宣言している企業の存在である。離職率が高いとか、鬱病を発症するケースが頻繁とか、同社に対し批判が多いのも事実である。

しかしながら、ユニクロが示すのは生き残るグローバル企業のあからさまな実態であり、将来の雇用の創出はユニクロであるか否かは別としてこういう類の企業に依存すると思う。

私の経験が偏っているのかも知れないが、「新卒一括採用」が扱うのは企業に取って「コア」な人材ではなく、「埋め草」的な人材ではないだろうか?

仮にそうであれば、仮に採用されたとしても「解雇規制」が緩和されれば簡単に解雇されてしまう様に思う。

山口 巌

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑