ポップパワー策へのコメントに対し、メモ的に追記します --- 中村 伊知哉

アゴラ

一昨日のブログ「日本のポップパワー発信10策」は、ツッコミをあおるためのものでした。いろんな方面から早速コメントをいただき感謝申し上げます。やまもといちろうさんからも、批判・コメントをいただいています。

●「規模の経済」が働かないコンテンツ産業に変な振興策を持ち込むのはやめて欲しい: やまもといちろうBLOG
ツイッターでコメントを返したのですが、簡単な追記を含め、まとめておきます。


指摘されている「予算」はぼくも最もナーバスな点です。補助金行政はできるだけ避けたい。役人だったころからの持論です。また、上から手をさしのべるのではなく、これも指摘どおり、民間の自然発生的な動きを支援すべきと考えます。このため手法としては、民間にインセンティブを付与するための「減税」と「規制緩和」がいい。全国で実施することに霞ヶ関(特に財務省)の抵抗があるなら「特区」で。

ただし、日本の文化予算は他国に比べかなり低い。文化予算/政府予算は、日本が0.13%に対し、フランスや韓国は1%近くあります。「ハコからソフトへ」を促していいと思います。道路に100兆円使うなら、その1%を回すだけで発信機能は格段に向上します。文化政策のプライオリティーを全政策のどのくらいに位置づけるか、を考える機会かと。

もう一つの指摘、「誰が」推進するのかも大事なポイント。ポップカルチャー支援はいいけど政や官が仕切るとロクなことがない、というのはそのとおり。では案件をどう発掘・採用するか。ぼくは有識者委託よりネット投票を取り入れたいと思いました。

他方、「知的財産権管理徹底、二次利用・情報発信のための著作権関連の法律整備、発信すべきもののレーティング組織」というやまもとさんの提言は大事な論点。今回の 検討会は早期に取り組むアイディアレベルに留まりそうですが、知財本部などでこういう本質的な論点を取り上げていってもらいたい。

このほか、ツイートやブログへのコメントも多数いただいています。もちろん、賛成ばかりでなく否定も多い。それはもとより承知しています。その批判には、おおざっぱに言って2種類あります。
・政官が主導するのはムリ。補助金は利権と化す。
 つまり、官や業界に対する、ユーザやファンの反発です。
・そんなことより労働環境改善するとか、足下を考えろ。
 つまり、業界内部からの声。タダで協力させるよりカネ回せ、ってことかな。

この分野の政策には、何を打ち出しても必ず反発があります。インフラ政策や教育情報化と違い、進めろ一辺倒では立ち行かない。政策論としては超難問です。

政官ともにポップカルチャー支援したいが知恵がないという状況なので、民の知恵をぶつけるチャンスと思います。政府が音頭を取り、ヘンな利権が群がり、クリエイターやファンは罵倒するというパタンを打破する知恵を期待します。

なお、ポップカルチャー政策なんて霞ヶ関や永田町にできるワケねーだろバーカ。という声が響いておりますが、ヒトコトだけ言いたい。それでも何とかしようと、断られようとも、村上隆さんやきゃりーぱみゅぱみゅさんに頭を下げて協力を請い汗をかく官僚は、エラいと思います。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2013年4月10日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。