人口の都市集中が必要だ

池田 信夫

東京・大阪・名古屋の3都市で地下鉄の24時間運行を行なうという案が発表された。こんなことは「アベノミクス特区」などと銘打つまでもなく、世界の主要都市では当たり前のことだ。「これで人口の都市集中が進む」という批判もあるようだが、むしろ今やるべき「成長戦略」はさらなる都市化なのだ。

都市


上の図のように、1960年代まで日本の人口は大都市圏に集中を続け、それが高度成長の源泉になっていた。しかし70年代から急速に人口集中率が下がり、成長率も下がった。これは一般には石油危機にともなう不況が原因と考えられているが、増田悦佐氏は逆に、田中角栄以来の地方に公共事業を集める政策が都市集中を阻害して成長率を下げたと論じている。

特に今後の人口減少時代には、全国に満遍なく公共事業をばらまく「国土強靱化」なんて、もっての他だ。必要なのは、3大都市圏と地方中核都市に人口を集中し、公共投資やインフラ整備もコンパクトシティに集約して効率化することだ。この点で、アベノミクスの中で一番バカにされている公共事業にも重要な役割がある。

都市の高度化も遅れている。それは次の写真(上は東京、下はNY)を見れば一目瞭然だろう。NYのマンハッタンの容積率は最大1800%で、ミッドタウンの住宅地でも1000%を超えているが、東京の山手線内の容積率は236%しかない。これをミッドタウン並みにするだけで4倍の昼間人口が収容できる。

キャプチャ

もちろん都市再開発のためには、道路・鉄道や上下水道などのインフラ整備も必要だが、田舎の山の中に猿しか通らない高速道路を引くよりはるかに費用対効果は高い。金融政策に注目が集まる一方、昔ながらのバラマキ公共事業は放置されているが、これにも「集中と選択」が必要だ。