都市は人類最高の発明である

池田 信夫

都市は人類最高の発明であるNYタイムズによると、猪瀬都知事がインタビューで、次のように発言したそうだ。

Islamic countries, the only thing they share in common is Allah and they are fighting with each other, and they have classes.

IOCの規約では候補都市の他の都市に対する中傷を禁じているので、オリンピックの選考で東京は不利になった、とこの記事は報じている。もともと東京で開催する意味はなく、いったん落とされたのだから、この際、辞退した方がいい。東京には政治・経済・文化の機能が集中している。その一極集中をさらに促進するオリンピック開催は、有害無益である。


本書はハーバード大学の都市経済学の専門家が書いたものだが、グローバル化の主役は国家ではなく都市であり、その多様性と競争が重要だと論じている。グローバルな都市間競争で勝敗を決めるのは、高層ビルのような建物やオリンピックのようなイベントではなく、そこに集まる人的資本である。主権国家では「首都」という形で特定の都市に政治・経済機能が偏在しているので、これを中核都市に分散して多様な人々が集まることが望ましい。

アゴラにも書いたように、成長率と人口集中率には強い相関があるので、日本が成長するためには「国土の均衡ある発展」ではなく、人口の都市集中が必要だ。これからは日本と中国が競争するのではなく、大阪と上海が競争するのだ。

こういうと「地域間格差」を批判する人が出てくるが、国内では移動の自由があるので、過疎地の人は都市に移動すればいい。それを支援する政策は必要だが、全国の隅々まで公共事業をばらまくよりはるかに経済的だ。

都市化で所得分配の格差は広がるので補正が必要だが、助けるべきなのは貧しい人であって貧しい地域ではないので、負の所得税や教育バウチャーのような個人ベースの支援が望ましい。地方には本来の自然を残し、リゾートや食糧生産基地にしたほうがいい。

日本維新の会も、国政で数十人のすきま政党になるより、大阪にエネルギーを集中して、東京と競争してほしい。そのためには憲法改正より、東京に集中している規制や許認可の権限を地方政府に分散する改革が必要だ。いま日本に必要なのは、東京と競争できる都市を育てることであり、この意味でも東京オリンピックはやめるべきだ。