変化変質せざるを得ない今後の中国進出 --- 岡本 裕明

アゴラ

中国経済の行方に注目が集まってます。今年1月から3月、第一四半期のGDPの伸びは年率換算7.7%と2012年10月─12月期と比べ0.2ベーシスポイント下落したことでさまざまな憶測をよんでいます。また、この数字そのものへの疑惑もあるのですが、その話をし始めるとまったく違う方向になりますので今日はあくまでも7.7%が正という前提で考えてみましょう。


中国の落ち込みの大局的なポイントは対外的には貿易収支の伸びが低下のトレンドから抜け出せないことでしょうか。リーマンショック回復後の2010年から見ると貿易収支の前年同月比増減率のプラスの数字は着実に下落しています。その上3月の貿易統計は1年1ヶ月ぶりの貿易赤字となりました。

理由は人件費の高騰による「世界の工場」としての中国のポジションを維持し切れていないということかと思います。日本や韓国を中心に生産拠点の東南アジアなどへのシフトは中国の人件費の問題だけでなく、国内情勢への不安対応というリスク回避の意味も大いにあるでしょう。

大局的なもうひとつの理由は国内消費が伸びない、ということです。中国の貯蓄率はIMFの調査によると50%を超え世界最高水準といわれているのですがなぜ、そこまでそこまで溜め込むのかという研究の明白なる結果は出ていないようです。ただ、一般的に言われている社会保障がないため自分の将来を自分でカバーしなくてはいけないという懸念、及び、最近でこそ革命的政変は起きていませんが、文化大革命が終わったのは70年代半ばでその後、天安門事件もあり、中年から上の人はあの時の苦労を覚えています。つまり、メンタルに開放的になれないということがひとつあるでしょう。

そんな環境の中国で日本企業が中国とうまくやっていけるか、と考える時、歴史的に日本がアメリカの商品をどう捉えていたかを考え直すのはひとつのヒントを与えてくれるのではないでしょうか? 日本がアメリカに強い影響を受けてきたなかで「舶来商品」、特に欧米のものには飛びつく嬉しさがありました。70年代以前を知っている人はよくわかるでしょう。信じられないかもしれませんが、我々の世代はmade in USAという商品タグを自慢したことだってあるし、当時のソニープラザや青山の紀伊国屋のアメリカの商品はいつも斬新でした。それは文化、社会に強い憧れを感じたがゆえに一種の神聖化した部分があったのだろうと思います。

一方で徐々に工業製品を中心にアメリカ製に魅力を感じなくなってきたことも事実です。それは日本の品質がそれを上回ったと確信した時点で明白になりました。アメリカ自身も工業国アメリカを半ばギブアップしたといえます。アメリカではその後、バイアメリカン主義というのがたびたび起きるのですが、日本でもそういう言葉こそないもののバイジャパニーズ主義の傾向はあったのだろうと思います。韓国だって自国製品への愛着は日本より高いと思います。ならば一定の発展を遂げた中華思想の中国ではなおさらなのであります。つまり、日本製品の魅力がなくなったというよりも、国家の成長と共に国民もメンタルに自信をつけた成長の結果だと考えたほうがよさそうです。

ならば、日本からむやみやたらな直接的中国進出は今後、成功しにくいということもいえなくはありません。最終消費財は特にその「出生」が見えすくなりますから日本の自動車会社が進めている現地企業とのパートナーシップや直接的に見えない部品やサービスなどがビジネスの安定性という意味では分があるのかもしれません。

中国における日本製品排除、という表現をマスコミでよく見かけますが、では日本にアメリカからダイレクトで入っている商品がすぐに思いつきますか? 今では対消費者ビジネスのBtoCでは思ったより少ないような気がします(ディズニー、コカコーラ、スタバ、コストコは代表例。一方でセブンイレブンは日本の会社、マックは契約形態が特殊でアメリカの会社とは言い切れない気がします)。

こう考えてみると中国ビジネスのキーは対法人ビジネスであるBtoBなのかもしれませんね。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年4月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。