政府はニコ超会議を支援できるだろうか --- 中村 伊知哉

2013年05月06日 17:07

「オーイ、ひろゆき~っ!」

頭上で叫び声がする。あっ、ホリエモンだ。コッチから来た山車の上に乗っている堀江貴文さんが、アッチの端でシンポに登壇している西村博之さんに声援を送っているのです。でも、声は届くまい。幕張メッセのだだっ広い会場を埋め尽くす人混みの中では。
BI2VbewCQAACRLb

ニコニコ超会議。昨年に続いて、いそいそとやって来ました。でも、不思議な感覚。その前夜、堀江さんがぼくのオフィスを訪ねてきたのです。子育てビジネスをしている起業家を紹介しろというのでセッティングしたのです。でも、堀江さん、しゃべる、しゃべる。仮出所後に走らせているいろんなプロジェクトについて、一方的に、速射砲のように。


2年以上も休んでいたので、貯まってるんでしょうけど、ちょっと生き急いでない?大丈夫? だって、そのままテレビ局に行って朝ナマに出演、ぼくが支援しているTOKYO PANDAちゃんとからみあってたし、また今は幕張で叫んでるし、寝てないよね?リアルで会い、バーチャルで見て、またリアル。

そういや堀江さんは去年この場では檻の中に写真が飾ってあるバーチャルな存在でしたね、ぼくはそこで猪子さんと記念写真を撮りました。

超会議。超歌ってみた。超演奏してみた。超ボカニコ村。超鉄道エリア。超クリエイターズサミット。超ニコニコ言論コロシアム。超ゲームエリア。超ニコニコ結婚式。戦車もあれば痛車もある。ミクもいればアベもいる。バーチャルのニコ動がリアル空間に進出して、どいつもこいつも入り乱れる。

だからといって、バーチャルとリアルが調和している、というわけでもなさそう。ドワンゴの川上会長によれば、ここは「ネット民とリアル民の戦いの場」。分断されているリア充文化とネト充文化が衝突する最前線だというのです。今はぶつかる段階。それを経て「ネットとリアルの和解」がもたらされるかどうか。壮大な実験場であり、公益的な挑戦であります。

かつてニコラス・ネグロポンテ師匠がBits meet Atomsを唱え、リアルはバーチャルに、そしていずれはバーチャルがリアルに、と喝破しました。その後段、B→A、つまりV→Rの運動をいま世界で最も体現しているのがここ、ニコ超会議です。それは無論、ユビキタスを夢見ていた強者どもの想像を超えた、ポップで脱力的で非論理的でカオスな、でも考えてみればネットなんだから当然の、現実です。

とうとう、そのパワーに大人も気がつきました。自民、民主、維新、そして共産!それぞれブースを出して迎合しています。国会議員だけで80人!ぐらい来ていたそうです。ここで国会開けばいいじゃん。恥ずかしいほど実現しなかったネット選挙運動がやっと始まります。それを目前にして、政治がデジタルネイティブに向き合う切迫度も増したのですな。フフンと見向きもしなかったマスメディアも、日経、朝日、NHKともに大きく扱っていました。

ものづくり、コンテンツ、お祭り、何でもあります。ものづくりの技術力と、コンテンツの文化力のかけ算が日本の地力。さらにみんなが参加して作ってみたりいじってみたりする、ソーシャルな力、それが日本の強みである増殖炉。ぼくが議長を務めた政府ポップカルチャー分科会の提言でも、まずは「みんな」の力を活かすことを第一に据えました。

傍観者は、まるで学園祭のようだ、と言います。でも、昨年の超会議は4億7千万円の大赤字。今年も1億円ばかり赤字の模様。ハナからそのつもりで運営しているんだから、覚悟が違います。

パッション!
そうなんですよね。クールジャパンを発信するには、あれこれややこしいことを提言するより、政府には「ニコニコ超会議ヲ支援セヨ」とだけ要求すればいいんだ。ネットの力でアラブの春が到来し、ソーシャルの力でロンドンやニューヨークでは格差デモが勃発したけど、日本ではニコニコの力で超会議でありますと。どうだいクールだろ、と。

でも、ヘタに支援するとネット民もリアル民も引くだろうし、そこんとこ、難しいです。首相も来れば、仮出所も来る、そのカオスの応援というのは。

ところで、「刑務所なう2」にサインをもらってしまい、汚すのがイヤだから、iPad miniで読みました。ホリエモンのまるでバーチャルなリアリティーを、リアルの本じゃなくてバーチャルなタブレットで読む。で、そのバーチャル書店に小林秀雄「考えるヒント」をみつけ、ついでにゲット。

高校でイヤイヤ読まされたその本の冒頭は「常識」というコラム。すっかり忘れていましたが、東大原子核研究所の電子頭脳が将棋を指すお話。将棋の神様同士が駒のコンビネーションを計算し尽くして対戦するとどうなるか、それを考えると「不愉快になって来て」「無意味な結果が出る筈だ」とあります。1959年の作。

ドワンゴが主催した「第2回将棋電王戦」は、人間vsコンピュータ、リアルとバーチャルの関係を問い直しました。とうとう人がコンピュータに敗れた。なのに、プロ棋士側もコンピュータ運営側も感動と感謝を表しているのは、実際の対戦にしろ、プログラムの管理や棋譜データベースの構築にしろ、つまるところリアルの人と人の所業だったからでしょう。

機械は人を超えたのか。いやあ、その問いは、小林秀雄が記すとおり、無意味ですね。自動車と競争したって人は勝てません。飛行機とは競争になりません。じゃあ人は自動車や飛行機に敗れたのか。はい、それがなにか? 百年ぐらい経って、コンピュータがニコニコ超会議をグランドデザインするパッション!を示すようになれば、そのときは、実に敗北感にまみえるかもしれません。そうなってくれれば楽しいけど、それでも首相も仮出所も動員するカオスを実現するのはムリなんじゃないかなぁ。

来年のニコ超会議もこっそり足を運びます。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2013年5月6日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑