インターネット選挙運動のためのメール配信入門 --- 新谷 貴司

アゴラ

普段はアゴラの記事を読む側ですが、インターネット選挙運動解禁って? — 岡 高志を読んで、いくつか気になる点があったので、インターネットでの集客支援を業としている身として記事投稿します。

今回の改正では、電子メールは送っていいんだけど、あらかじめ「選挙運動用電子メール」の送信について先方の同意があることが必要で、その証拠がなくてはいけないし、メールの文面にも「選挙運動用電子メール」であることを明記しなければいけないということになります。

なんだか面倒です。


順序は前後しますが、

・選挙運動用電子メールである旨
・当該選挙運動用電子メール送信者の氏名又は名称
・当該選挙運動用電子メール送信者に対し、前項(送信不要の旨)の通知を行うことができる旨
・電子メールの送信その他のインターネット等を利用する方法により前項の通知を行う際に必要となる電子メールアドレスその他の通知先

を明記するのが面倒という発想は、もしかして「一通ずつ手書きで毎回書く必要がある」と勘違いしておられるのでしょうか?

メールの配信を希望される方への一斉配信(=メールマガジン配信)は、専用のサービスが10年以上前からあります。メール一斉配信サービスなら、メールの冒頭や末尾に定型文を挿入できますから、そこに上記の項目を書いておけば全く手間はかかりません。

あらかじめ「選挙運動用電子メール」の送信について先方の同意があることが必要で、その証拠がなくてはいけない

これも、まともなメール一斉配信サービスならメール配信の登録や解除の記録を残してくれます。イタズラやトラブルを避けるなら「ダブルオプトイン(仮登録 → 確認メールが届く → 文中のURLをクリック → 本登録)」を導入すれば安心です。

・選挙になって、応援してくれる有権者からお友達のメアドをもらって、投票依頼のメールを送る
・候補者発信の投票依頼のメールをお友達に転送してもらう

2つ目の「投票依頼のメールを友達に転送してもらう」というのはまだしも(これも解禁されるとトラブル多発の予感がしますが)、1つ目の「有権者からお友達のメアドをもらって、投票依頼のメールを送る」の方は確実にトラブルが起こります。

仮に私が自分のサービスを宣伝するために同じことをしたら、スパム扱いされることは間違いありませんから。

仮に法改正で法的な問題がなくなっても、いきなり選挙の候補者からメールが届いて「読んでみようか」と思ってくれる人がどれだけいるかは疑問です。それどころか Gmail や Yahoo! メールなどを使っている人なら【迷惑メールとして報告する】ボタンをクリックしかねません。

私のところにも毎日スパムが100通以上届きますが、まず読みませんし、仮に目を通したところで「商品やサービスを購入しよう」とは思いません。

スパム業者の発想は「1万通に1件も反応があれば御の字」ですから、残りの9,999人に無視されようと忌み嫌われようと問題ないのです。しかし、政治家にそんな「贅沢」が許されるのでしょうか?

個人的には、制限を緩めるにしても「メール配信の可否を問うメールを送信する」あたりを限度にしていただきたいです。そして、「●●候補者の配信するメールに多少なりとも興味がある」人にしか配信すべきではないと考えます。

同じように勝手に届けられるものでも、メールはポスティングチラシよりも「土足で踏み込まれた感」が強いので、効果を焦ってアンチを増やすようなことにならないようご注意いただきたいです。

新谷 貴司
地元密着なび代表