「選択の科学」で選挙を読む

2013年07月19日 16:55

参院選の投票日が近づいてきた。先日の都議選では投票率が戦後2番目の低さだったが、特に若年層の投票率の低さには危機感を覚える。今回の参院選も投票率が低くくなるという予測が各所でなされているようだが、その要因を「選択」という観点から少し考えてみたい。

少し前に売れ筋本として、『選択の科学』という書籍がクローズアップされていた。著者はコロンビア大学ビジネススクールの教授で、インド系シーク教徒の家庭で育ち、高校にあがるころには全盲になったというバックグラウンドの持主でもある。着るものから結婚相手まで全て両親が決めていたコミュニティから、選択こそが力だと教えこまれるアメリカの教育に投げ込まれ、選択を研究テーマにすることを思いついたとのこと。

選択の科学
選択の科学 [単行本]


いろいろと興味深いことが書かれているが、その一つが選択と満足度の関係について。人は選択権を持つほうがそうでないよりも満足度が高いが、選択肢が多くなり過ぎると、適度な数の選択肢から選ぶよりも満足度が下がるというのだ。たとえば、6種類のジャムの試食に立ち寄った客はその30%が購入したのに対して、24種類の試食の場合、たったの3%しか購入しなかったそうだ。あまりにも豊富な品揃えは、逆に店の売上を下げてしまう。どうやら、人間が処理可能な情報量は7までが限界なようで、それより多くなるととたんに間違いを犯すようになるそうだ。

これはどこかの選挙区でも同じような光景を思い出す。5人枠に20人も立候補している東京選挙区だ。好みの政党がない無党派層で、さらに政治リテラシーが高くない場合、20もの選択肢から選ぶという行為は拷問に近い。選挙広報の公約もちょっと開いただけでうんざりしてしまう。実際に、東京や候補者の多い選挙区の投票率は、一人区の地方よりも投票率が低い傾向にある。もちろん、投票率が高い高齢者の割合の影響もあるだろうが、立候補者数もその要因と推測される。選択肢が絞られる小選挙区制の衆院選の方が参院選よりも投票率が高いのも、選択肢の数が影響しているのかもしれない。

本来なら多種多様な方が自由に立候補することは民主主義にとって好ましいにも関わらず、有権者としては投票という選択に困難を感じ、投票率が下がってしまうというジレンマに陥ってしまう。ただし、選択の科学が示すように、多数の選択肢から選り分ける方法もある。それが専門知識であったり、属性によって選択肢を振り分けたり、絞り込んだりすることだ。

たとえば、当選可能性のないようないわゆる泡沫候補は完全に無視して、当選可能圏の中から選ぶ。政権選択という観点から自民か民主かで選ぶ。多様な代表を国会に送り込むために女性候補や若い候補を優先するといった具合だ。本来ならあまり単純化せずにしっかりと人物と政策を吟味すべきだと思うが、もし選択に困るから行かないということであれば、絞り込んだ選択肢から選ぶという方法も検討していただきたい。

単純なことではあるが、無党派層が大多数を占める日本において、そんな単純なことの積み重ねが国の行く末、国民一人ひとりの生活を左右することになる。絞り込む物差しがたとえ単純でも、それが一人ひとり多様であれば、その選択が積み重ねられた結果はそれなりの意味を持つことになる。それが民主主義というものだ。ということで、週末は選挙に行って選択を楽しもう。

学びのエバンジェリスト
本山勝寛
http://d.hatena.ne.jp/theternal/
「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。

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