来年度の新卒採用 ~インターンシップをどう考えるべきか?~ --- 中尾 英明

アゴラ

私はこれまで様々な立場から人事業界から採用の”現場”を見て、自らも実践者として多くの企業を支えてきました。また縁あって学生のビジネススクールの運営に関わっており、最近の学生の生の声にも触れています。

2014年度新卒採用もほぼ終わりにさしかかり、丁度、各社2014年度新卒採用の振り返りをしている頃だと思います。そしてまた休む間もなく、2015年度新卒採用の計画を立て始めなければならない時期に入ってきます。


今回はそうした企業への参考になればと思い、「2015年度新卒採用~インターンシップをどう考えるべきか?~」をテーマにまずは進めていきたいと思います。2016年度から大きく変わる新卒採用のスケジュールを見据え、少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

1.2015年度新卒採用、企業の動きは早期化、学生の動きは例年通り

大手人材総合サービス企業各社のデータを見てみますと2014年度新卒採用は大手企業含め、内定出しの早期化の傾向が見られました。また、学生のほうも最初に内定をもらった企業が必ずしも第一志望の企業ではなかったとしてもその会社に就職を決める、といった動きも増えてきているように思います。

2014年の流れを受け、かつ、2016年度からの新卒採用スケジュールの大幅な変更を踏まえ、2015年度新卒採用は企業の動きはインターンシップの実施を皮切りに更に早期化することが予想されます。

しかしながら、企業の早期化の動きとは異なり、学生の動きは例年通り、各社の就職ナビがオープンになる12月からになると思われます。もちろん、インターンシップに参加する学生は増えると思われますが、インターンシップに参加する学生と企業の、そもそもその考え方の違いがあるように思います。

それにつきましては2.で述べたいと思います。

2.インターンシップ、企業・学生、それぞれの捉え方の違い

倫理憲章の問題はあるものの、実際問題、企業側の心理でいくと、インターンシップで早期に優秀な学生と接触し、なんとか採用まで持っていきたい、と思っているのに対し、学生はインターンシップの段階では会社の規模や知名度はともあれ、まずは会社というものの雰囲気を知っておきたい、で、それを就活に活かしていきたい、と思っている学生が多いように思います。

その証拠に企業規模がかなり小さい企業でもインターンシップへ参加する学生の顔ぶれ(=仮に大学レベルと仮定する)は通常の会社説明会等には参加しないような顔ぶれの学生が結構多いことがあります。要は企業と学生のインターンシップに対する捉え方に大きな違いがあるということです。すなわち、中堅中小企業の場合、インターンシップからの採用はなかなか難しいと言わざるを得ません。

3.インターンシップ、本来は中長期的な採用戦略として位置づけるべき

2.でも述べさせていただいたように学生=純粋に企業を学びたい、企業=採用に紐付けたい、といった双方にギャップが生じることにより、双方にメリットが無い形でのインターンシップが行われてしまうが多くあります。結果、企業側にとっては労はかかるけど、実が無い、という話になり、結果、インターンシップをやめてしまう企業も結構あります。

綺麗事に聞こえてしまうかもしれませんが、本来、インターンシップは極端に採用に紐付けるべきではなく、数年かけて「採用ブランディング」を高めていく手段と位置づけるべきだと思います。また学校との関係構築のツールであるべきだとも思います。「採用ブランディング」も学校との関係構築も数年かけて醸成していくものですので、インターンシップの導入=採用結果の改善、を拙速に求めるべきではないと思います。

また私が定義する上記「採用ブランディング」とは世間一般的には有名ではないが、学生間では「就職する(したい)会社として有名」ということであり、その「採用ブランディング」を高めていくことが、中長期的な視点で新卒採用を考えていった場合、結果、企業にとって有利に働くものであると考えています。

以上、何かのご参考になれば、幸いです。

中尾 英明
クレスコ株式会社 代表取締役

66年東京浅草生まれ。株式会社リクルート入社。 新卒・中途採用のコンサルティング営業に従事。350社以上のクライアントを抱える。96年日本における採用コンサルティング・アウトソーシングの先駆けとなるレジェンダ・コーポレーション株式会社の立ち上げに参画し、取締役に就任。自分の仕事観を更に具現化すべく、09年4月、クレスコ株式会社を設立。 人事にまつわる経営者の目線と実務者の目線の両方を熟知した上での各種講演、コンサルティング等に全国を飛び回る。