アベノミクスという言葉にまどわされず本質的な問題解決をすべき --- 岡本 裕明

2013年08月14日 23:38

カナダの大手銀行TDバンクのシニアエコノミストが8月12日付で発出したアベノミクスに関するレポートの内容が大変厳しいものになっています。

結論からすると目先はともかく、中期的(10年後程度の意)にみて日本は現在の経済を維持することは出来ない、と断言しています(Japan’s fiscal position is unsustainable in the medium-term.)。その論理には特に目新しいものがあるわけではないのですが、カナダで二番目に大きな銀行のエコノミストの声には耳を今一度、傾ける必要がありそうです。


レポートの趣旨は高齢化する日本と財政赤字が巨大化しつつある現状を指摘しているのみならず、労働参加率の低迷と労働生産性の低さが日本を支えきれないとしています。そのために女性の労働市場への参加を促し、女性の労働市場への参加率を今後10年で10%増加させ、女性54歳、男性59歳から上の年齢層の労働参加率を7%程度引き上げるシナリオをレポートの中で検討してます。また、労働生産性をアメリカ並に引き上げることも指摘しています。

ちなみに2011年度の労働生産性の国際比較において日本はOECD加盟国で34ヵ国中20位、製造業の労働生産性はアメリカの63%でOECD加盟国主要21カ国で10番目であり、明らかに劣っているのがお分かりいただけると思います。

よって、安倍首相の成長戦略の第一弾で女性の社会進出の後押しは政策的には正解であり、また、企業が定年を60歳から65歳に移行しつつあることも労働参加率を改善することに繋がる点では評価できると思います。一方で労働生産性を上げるということは社員を減らしたり、非正規雇用を増やす、というインパクトを伴う可能性があり、日本の労働環境を根底から変える意味合いを伴うのではないでしょうか? これは簡単ではないという気がします。例えば、日本はチーム経営であり、数人の力をあわせて大きなものを作り出す「三人寄れば文殊の知恵」的なところが日本の歴史であります。欧米のように営業担当ひとり一人が絶大なる権限を持つ場合と大きく異なります。

日本の国債市場についてもその特殊性(新発の国債が91%以上が国内で買い取られる)を指摘し、日銀の強力なバックアップもあり当面は問題ないとしながらも中期的にはこれを維持することはできないのではないか、としています。

いくら国債市場はドメスティックなマーケットであったとしても日本の株式市場は外国人投資家が主体であり、その動向については圧倒的な影響があります。また、つい半年ちょっと前までは金融機関は薄利の国債売買に精を出していたのですが、この数ヶ月は圧倒的な売り方になり、金融機関の持ち高は大幅に減少しています。結果としてそこには日銀が一人、買い手として防波堤になっています。ちなみにアメリカでも国債市場からの離脱が大幅に進んでいるため、国債を主力としているファンドは大きな穴を開けている状況です。

TDバンクのレポートはアベノミクスが小手先の政策にとらわれず、本質的な部分を改善しない限り、日本の復活はなく、外国人投資家は失望をすることになるという警笛であります。つまり、海外の目はアベノミクスや日本市場にやや懐疑的になりつつあるのかもしれません。ならば、抜本的な対策を打ち出す必要がありますが、それは日本の労働市場そのものを根底から見直すぐらいの気持ちがなければ出来ないでしょう。

また、社会保障費の増大に歯止めをかける方策も必要です。私は日本の健康保険は公的保険と民間保険の二階建て方式にして公的カバーをある程度制限するというアイディアもあろうかと思います。

安倍首相もゴルフに勤しんでいらっしゃったようですが、世界の日本に対する目はキュキュと締まるような感じで厳しさを増している、という感じに見えます。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年8月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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