24時間テレビの募金は何に使われているか

本山 勝寛

夏の風物詩、24時間テレビが今年も放映された。高視聴率と4億3605万円という募金総額が報道された一方で、出演者ギャラや番組制作費、定番のお涙頂戴的な番組内容自体にも批判の声があがっていた。番組自体の是非はともかくとして、チャリティ番組のあり方に関して議論が起きることはよいことであると思う。ただ、単純な番組批判に留まるのではなく、NPOのファンドレイジングや、芸能人やスポーツ選手などのチャリティ参加のあり方、国内外で一体どんな社会問題があるかなど、議論が深まるような提案が挙がるとより建設的であるように感じる。そういう意味で、「集められた募金って何に使われているの?」という純粋な疑問はあまり他では書かれていないようなので、簡単な考察をしてみたい。


24時間テレビのHPを見ると、福祉、環境、災害援助の3つの分野に、「経費を一切差し引くことなく全額、支援活動に活用」しているとある。35年間で総額323億円、ここ数年は311のあった2011年を除くと10億円前後が毎年集まっているようだ。4億円強という今年の額が最終金額であるか定かではないが、もしそうならほぼ半減ということになる。この点については、最終総額が発表されていないので、評価は避けたい。

次に中身の詳細だが、メイン事業である福祉の支援は福祉車両の贈呈と、盲導犬などの身体障害者補助犬の啓発事業、図書館における障害者情報保障のための機器支援だ。福祉車両は毎年250台から300台ほど贈呈しており、金額にするとおそらく5億円ほど、募金総額の半額近くだと推察する。

次に環境については、各地で清掃活動を行い、寄付金による支援というよりボランティア参加の促進がメインのようだ。最後の災害援助については、今は東日本大震災の被災地支援で、これも車両や機器などの支援が目立つ。

24時間テレビの募金が何に使われているか、その支援内容を総じて考察すると、日本国内の古典的な(多くの人に知られている)社会問題に対する、古典的な(多くの福祉団体が行っている)支援方法を続けているといった印象だ。たとえば、24時間の主要事業である福祉車両については、私の勤める日本財団でも年間2000台以上支援しており、社会的ニーズは認められるものの、広く社会に啓発する力を持つ24時間テレビでやらなきゃいけないのかなという疑問は残る。同じ障害者福祉であれば、作業所の工賃向上に向けて努力している現場のマーケティング支援や、それらで販売されているかなり高品質な商品をテレビで紹介するなど、やり方はいくらでも考えられる。

環境も清掃活動という悪くはないけどザ・ボランティア的な活動、災害援助も車両や機器支援と、テレビの持つ社会的影響力という特性をいかしているとは言い難い。いや、むしろテレビというマスを扱うメディアだからこそ、誰にも文句を言われないリスクの少ない、妥当な支援になるのかもしれない。

もちろん、テレビ局はチャリティ事業が本業ではないので、玄人向けの支援活動を展開することを期待するのは酷かもしれない。そうであるなら、もっとその道のプロフェッショナルと協働するという選択肢はないのだろうか。これは番組内容にも言えることで、障害のある方や子どもたちが出演しているのに、その演出方法のため障害者の方々のなかで評判があまり良くないという声も聞こえる。チャリティ番組として、番組企画そのものに当事者や支援の第一線の方々の意図や願いがより反映されることを願う。視聴率をあげるために番組編成のプロが切磋琢磨しているなら、社会的事業についてもその道のプロが知恵を絞ってつくりあげるべきではないだろうか。

学びのエバンジェリスト
本山勝寛
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「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。