法の支配とその敵

2013年09月26日 23:25


上の写真(BLOGOSより転載)を見て、あなたはどう思うだろうか。東電の広瀬社長が深く頭を下げているのだから、新潟県の泉田知事も下げるのが日本人の普通の礼儀だが、彼はまったく頭を下げなかったという。まるで殿様のようだが、実は彼には何の権限もない。原子力規制委員会の安全審査は国の業務だからである。


だからこのあと泉田氏の出した「審査を承認する」というコメントにも、何の意味もない。このように政治家が法を無視して裁量権を振り回すのは先進国に共通の問題で、ファーガソンは泉田氏のような人物を法の支配の敵と呼んでいる。

近代社会のコアは民主主義でも資本主義でもなく、(立憲君主制を含む広義の)共和主義であり、その根幹は法の支配である。選挙で選ばれれば「偉い人」になり、法律に違反することもすべて彼の裁量で決める、というのは僭主である。何も決められない日本がここまで無事にやってこられたのは泉田氏のような僭主を阻止したからだが、菅首相が法を破壊し、「超法規的」な行政指導が続いている。

泉田氏が岐阜県庁に出向していたときの裏金問題について、県庁から「彼も裏金問題に関与したので105万円を返還せよ」との通知が出ているのに、彼だけが拒否し続け、「勝手に個人情報を公開するな」と開き直り、こういうときだけは「法的な行政処分ではないから返さない」と抵抗している。

近代国家が行政ではなく立法を最高機関としていることには意味がある。行政には裁量が入り込むので、法で裁量の余地を縛ることが重要なのだ。「原発を動かすのは適法だが、何となく世間がいやがるから認めない」とか「安全審査に新潟県は何の権限もないが、いやだと言い続ければ東電も頭を下げてくるだろう」といった裁量を許していると、本物の危機になったとき、民主党政権のような大混乱が起こる。

安倍政権は、泉田知事のような法の支配の敵を排除し、法に従って安全審査と並行して原発の再稼働に向けての手続きを開始すべきだ。経産省は電気料金の値上げを原発を動かしたことにして抑制しているが、このような裁量権の濫用も許されない。原発の停止による9兆円以上の損害をただちに電気料金に転嫁し、そのコストを明らかにすべきだ。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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