「高野連への喧嘩売り」は、やや過大評価な件

2013年10月08日 07:00

プロ野球は今夜が大詰め。パ・リーグは2位の座をかけて、ロッテと西武が最終戦で争うというサバイバルマッチになった。そんな熱い秋風が吹く球界関連で先日、ネット上でこの記事が話題になっていた。


●芦屋学園の挑戦が話題に
ヤフー個人で人気を博していた「高野連に喧嘩を売った芦屋学園の画期的な取り組み」。筆者は、鈴木友也さん。日本のスポーツビジネス界の若手論客の第一人者で、現在は米国を拠点に活躍中だ。佐々木俊尚氏の「朝キュレ」で拾われたこともあってか、「いいね」が7千を超える(8日零時時点)ほど、爆発的に拡散した。先に取り上げられたので当初書く気が失せていたのだが、感想を友人からSNSで求められ、やり取りしているうちに原稿の骨組みが出来てしまった(笑)折角なので鈴木さんとは対照的な、超ドメスティックな私なりの意見も書き置こうと思った次第。ま、一応、元野球記者でもありますので。

記者発表を報告する芦屋学園のホームページ
131008芦屋学園

記事では、芦屋学園が高野連に加盟しない硬式野球部を作り、関西独立リーグの下部組織として活動するプロジェクトを紹介した。プロを目指す上で甲子園(高野連傘下の硬式野球部)以外に新たなルートが出来たことは確かに鈴木さんの言うように画期的だ。かつて高野連と“抗争”を繰り広げた筆者としては、芦屋学園の挑戦を大いに応援したい。50件を超えるコメントの多数も好意的だ。みんな高校野球は愛していても、大会運営のあり方や高野連の体質に不満は持っているのだ。この取り組みが成功すれば、「より『近代的』な取り組みを促す強力な外圧」(記事より)になるだろう。

●サッカー界が示唆する勝算と課題
私からも芦屋学園の「勝算」を付言する。
高校生の育成にプロのノウハウが組織的につぎ込まれた先例としては、サッカー界の取り組みがある。Jリーグ創設までトップクラスの高校生は、高体連、サッカー協会傘下の高校のサッカー部に主に所属していた(読売クラブ等の例外はあるが)。Jリーグ開始後、各クラブにユースチームが出来たが、しばらくは同様の傾向だった。しかし、ガンバ大阪ユース出身の稲本潤一選手が97年、17歳7か月でJリーグ最年少出場(当時)を果たしたのを象徴に潮目が変化する。サッカーどころの静岡でも90年代は、高校の県選抜チームの大半は藤枝東などの強豪校の生徒で、清水エスパルス、ジュビロ磐田のユースは少数派だった。ところが、Jリーグ開始から10年も経つ頃にはユース選手が台頭し、レギュラーの多くを占めるまでになった。数年前、この経緯を熟知する球界関係者から「やはりトップクラスの高校生はプロになりたいのが本音と感じた」と言われたこともある。

ただし、プロのコーチに技術指導を受けながら練習をしても、選手は試合経験を積まねば真の上達はない。実は芦屋学園以外にも、高野連に加盟せず、元プロ選手の指導を受ける高校生の受け皿をつくり、独自の活動をしている学校は存在していた。しかしそのルートからプロ入りして、一軍で目立った活躍をしている選手は記憶にない。結局、独自ルートの方はビジネスで行われる以上、プロで活躍するスター選手を輩出してナンボだ。その意味で、鈴木さんの記事の見出しは少し煽り気味かなと思う(僕も人のことは言えないが…苦笑)。もちろん、記事で警告しているように、関西独立リーグが今後MLB系列に組み込まれ、MLBへの選手供給源となるシナリオが現実になる可能性はある。

●12球団にユース構想が広がるか
芦屋学園の現状だけに話を戻すと、サッカー界の歴史に当てはめれば、アマチュア全盛の70年代、「プロ」として孤高の存在だった読売クラブの下部組織が思い浮かぶ。芦屋学園の高校生選手がどのような形で実戦経験を積むのか、報道から見えない部分もあるが、実際、同世代のトップクラスの99%はまだ高野連傘下の強豪校でプレーしている。昔、甲子園で取材したセ・リーグ球団のベテランスカウトは「甲子園で一発勝負のトーナメントの修羅場を経験しないと成長しない」と指摘していた。逆に言えば、綿密な育成プランの下で選手たちの実戦経験をどう積ませるか運営側の手腕が問われる。

高野連以外での育成が普及するかは、結局、NPB傘下の12球団で高校生世代のユースチームが出来て、高野連が関与しないところで実戦をできる環境が整うかにかかっていると思う。幸い、プロ側は近年、問題意識だけは見え隠れしている。育成選手制度導入を果たした清武さんが巨人時代に「高野連だけに選手育成を任せていいものか」と問題提起したし、彼は追放されたものの、現在の12球団オーナーの中では、ミッキーも実はユース構想を持っていることが明らかになっている。その意味では、次のコミッショナーの椅子にどういう人物が座るのか、ビジネスの知見を持った人材になるかで展開が左右されるだろう。

ことは野球界のお話だが、規制改革といった日本の政治や社会の問題にも通じるところがあるので、引き続きご注目いただけたらと思います。
ではでは、今夜の最終戦を観に行きたいので仕事を片付けます。ちゃおー(^-^ゞ

【ご参考までに関連記事】
「朝日記者が死んでも書きたくない甲子園の増収策」
「次のコミッショナーは誰がいい?」

新田 哲史
Q branch
ところでハフィントンポストは何時になったらオファーしてくれるのかなと思う
広報コンサルタント/コラムニスト
個人ブログ

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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