2020年の後のことを真剣に考えろ --- 岡本 裕明

アゴラ

2020年のオリンピック開催決定は今年の10大ニュースのベスト3には入ると思います。それにあわせて各方面から関連の投資のみならず、民間部門の投資が具体化してきています。ホテルの建設をはじめ、あらゆるインフラ、箱物が官民合わせて多くスタートしようとしています。まさにオリンピックを目指して日本の全精力を集中するといってもおかしくないでしょう。


私は2020年後のオリンピックの残影を少しでも頭に描きながらオリンピックにかかわらず、何が本当に必要な開発事業で余計な投資はないのか、改めて精査するべきかと思います。アベノミクスとオリンピック関連でこれだけプロジェクトが並ぶとプロジェクトの推進母体はプロジェクトをやることに意義を感じ、全体像が見えなくなります。プロジェクト担当者は自分のプロジェクトこそ最も正しいものであると一切の疑いを持たず、イケイケどんどんのスタイルに陥りがちです。事実、その間違いに陥ったのがバブル時期の開発事業でした。不動産開発にどっぷり浸かっていた私も勿論その一人でした。

2020年から先の日本を想像するには大きな与件をクリアしなくてはいけません。その一つは政府が人口減への対応をするのかしないのか、ということでしょうか? 日本は2020年を過ぎれば高齢化はさらに加速度を増し、人口減のピッチも上がってきます。その時、「産めよ、増やせよ」と言ってもまず無理でしょう。

子供を増やしたくなる社会的バックグランドが生じていない限り若者の心の変化はしません。そして何十年もかけてその変化はやってきます。少子化担当大臣なるものが日本にできてずいぶん経ちますが、どんな成果があったのでしょうか?

なぜ子供を増やしたくないのか、経済的な問題だけでなく、社会的要因は大きいはずです。アメリカは先進国の中で突出して出生率が高いのはなぜでしょう? アメリカの医療やその保険料は高いのです。それでも経済的理由を掲げている声はあまり聞きません。物的欲望と自己願望の強さが日本、韓国、中国は共通して高いような気がします。日本の場合には高い相続税により資産を通じたファミリーツリーの創造がなされないこともあるでしょう。

それを考えると少子高齢化がすぐに止まることはなさそうです。ならば、移民を受け入れるのでしょうか? この議論は大きいので今日は取り上げませんが、拡大する投資を通じて箱モノやインフラの拡充はそれを利用する人が十分にあることを見込んでのことだろうかよく考える必要があるでしょう。

もう一つは2020年までに65歳定年をヒットする人が極端に増えるものの、多くの会社は2020年まで忙しいため定年延長をかける可能性は頭に描く必要がありそうです。そうすると2020年に膨大な数の人が一気に本当の定年を迎えることにならないでしょうか? これは達成感後の放心状態みたいなものであり、経済、社会に極めて大きなドローバックとなることでしょう。この反動は見過ごせないレベルになるはずです。

そこを考えればオリンピックに向けた投資というより2020年後の日本を見据えた投資を考えるべきです。

勿論、社会保障費の問題はさらに深刻になっているでしょう。年金も対策を取らなければどうなるかわかりません。そのような日本が7年後に待ち構えているという気持ちを持てば浮かれたことばかりの言えなくなるでしょう。

要は気持ちは常にプラスとマイナスを見据えてよく考えることが必要だ、ということだと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年10月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。