テキサス地元紙、クルーズ米上院議員を批判 --- 安田 佐和子

アゴラ

ようやく、米上下院が債務上限引き上げと政府機関の閉鎖解除(暫定予算の確保)で16日間の混沌の幕引きしました。

民主党が多数派の米上院案が可決した直後、リベラル寄りMSNBCの「レイチェル・マドウ・ショー」では、こんなチャートを作成し、勝利宣言してましたっけ。

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分かりやすいとはいえ、こちらのチャートは正しくありません。2011年に通過した予算管理法や今年3月から施行される強制歳出削減を維持するなど、マコネル米上院院内総務(共和党、ケンタッキー州)が16日に振り返った通り支出削減の大枠は共和党の主張が通っていました。

もちろん米上院が策定した債務上限引き上げ・暫定予算案では、共和党が削除を主張した米財務省による財源確保のための特別措置、および医療保険改革案の修正などがことごとく盛り込まれませんでした。世論調査で共和党の支持率が過去最低に落ち込むなかでは、民主党に旗色の良い内容となったことは確かです。

オバマケア修正の急先鋒だったこの方には、風当たりが尚更強まること必至でしょう。

米上院での予算審議に、似非フィリバスターで対抗した米上院議員1年目のテッド・クルーズ氏(テキサス州)。なんと鉄板の共和党支持基盤である地元紙ヒューストン・クロニカルが16日、クルーズ議員への支持取り下げを連想させる論説を掲載したんです。

論説では「ハチソン前議員がもつ、必要なときあらゆる道筋を通じ合意を目指す優れた理解力を思い出されてならない」と、2012年の中間選挙で新人だったクルーズ氏に敗北したケリー・ベイリー・ハチソン前上院議員を懐かしみます。さらに「ハチソン氏なら、(米上院で妥結を探ったメイン州選出・共和党員である)スーザン・コリンズ議員と肩をならべ政府機関の閉鎖へ向けた方策作りに励んでいたはずだ」とクルーズ議員を痛烈に批判。同紙が1年前にクルーズ氏に支持表明していたため、今回の論説は各メディアで「地元紙が支持取り下げ」と一斉報道する騒ぎになりました。ヒューストン・クロニクル紙は、「支持を’取り下げたわけではない」となぜか否定してますけどね。

アメリカを政府機関の閉鎖とデフォルト危機に落とし込んだ戦犯として、クルーズ議員はデフォルト回避前から支持率は低下していたんです。10日付けのギャラップ調査では、不支持率が6月時点の18%から2倍の36%に急伸していたんです。支持率は26%から24%へ低下してました。

米上院での採決で反対票を投じたマイク・リー米上院議員に対する支持率も、地元ユタ州で低下してました。ブリガム・ヤング・カレッジの調査では、不支持率が6月時点の41%から51%へ上昇し過半数を超えたんです。ティーパーティー勢力、ここに来て共和党支持基盤から完全にお荷物化してきた感がありますね。

オバマ米大統領は17日、ホワイトハウスで会見を開き債務上限引き上げと暫定予算案に署名したことを明らかにした際「誰も勝者ではない」と発言。政府機関の閉鎖についても「アメリカ国民はワシントンに相当辟易している」、「この数週間は全くもって必要のない打撃を経済に与えた」と苦々しく振り返りました。

同時に「アメリカ国民に焦点を絞れば、年内に合意が可能」と述べ、2014年1月15日に期限切れを迎える暫定予算案のずっと以前の合意を目指すよう呼び掛けました。今回の暫定予算案では、12月13日までに財政に関し米上下院での協議を義務付けていますから、あらためて不毛な争いが幕開けするリスクは大きい。今回の教訓を踏まえ、次こそ建設的な協議を取り交わしていただきたいものです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年10月18日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。