「Yahoo!ショッピング」が出店料や売上手数料を無料化するという、「価格破壊」を始めました。現在の出店数は通販サイトが約2万店、オークションサイトが約1万6千店なのに、料金を値下げしてから、法人の出店希望が約1万件、新たに受け付けを始めた個人の出店希望者は約1万6千件。さらに、出店料のみを無料としたオークションサイト「ヤフオク!」も通常の30倍となる数百件の出店申し込みがあったそうです。
収益はともかく、まずはシェアを取りに行くという目的は順調に始まったように見えます。楽天やアマゾンに遅れを取っている成長率を高めるというヤフーの「爆速戦略」の1つなのでしょうが、このようなビジネスモデルの大きな変化は、自分には直接関係ない業界の出来事と思っているだけでは勿体ないと思います。
「自分事」として真剣に考えてみると、ビジネススキルの向上の格好の問題になると思うのです。例えば、こう考えてみてはどうでしょうか。
「あなたが、ヤフーのライバルの楽天の三木谷さんだったら、どうしますか?」
楽天から見れば、「Yahoo!ショッピング」の出店料や売上手数料を無料化は、言ってみれば隣のお店がいきなり、激安セールを期間無制限ではじめたようなものです。
楽天には約500人のECコンサルタントがいて、4万店舗をサポートする仕組みがあるそうです。サイトのデザインや販売方法まで、きめ細かく指導し、楽天大学でビジネスに必要なネットやマーケティングを学ぶこともできます。
また、楽天カード、楽天銀行、楽天証券、楽天トラベルなど、ショッピング以外のグループ企業があって、共有化されている楽天ポイントが強力な集客力になっています。
楽天のECサイトは出店料やロイヤリティを取って、加盟する店舗にメリットを与える仕組みなので、今回のヤフーの価格競争には、巻き込まれないという見方もあります。
しかし、発表してからのヤフーへの顧客の殺到は、市場の激動を想像させます。勝ち組の楽天といえども、この流れが続けば、自分たちのモデルに固執しているうちに、ヤフーが新しいマーケットを作り出してしまうかもしれません。
では、もし自分が楽天の三木谷さんだったらどうするのか?
今までのビジネスモデルの付加価値をさらにつけることによって、顧客満足度を高めライバルとは別の道を歩むのか。それとも価格競争に参入して、成長マーケットのシェア争いをするのか。あるいは、手数料を若干引き下げて、顧客離れが無いように、ある程度の価格戦略を取るのか。
正解がどこにあるかは、わかりませんが、自分だったらどうするか、今のうちに考えてみる。そして数か月後、あるいは1年後の、実際のマーケットの動きをウォッチする。そんな方法で、リアルなビジネスケーススタディが学べるのです。
楽天、ヤフー、そしてアマゾン。ショッピングに利用する側としては、競争は大歓迎ですが、ビジネスを手掛ける企業の競争は激烈です。次の一手を間違えると致命傷になってしまう。そんな、ギリギリの経営判断が問われる重要な局面だと思います。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年10月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。