先日、バンクーバーで成功しているある飲食系ビジネスマンの方と話をしていて「成功の秘訣は」と聞くと、「誰にも真似されないモノを提供すること」と直球ど真ん中の回答が気持ちよく返ってきました。その彼のビジネスを追随する人が現れないのは複数の特徴をもたせているからだと思います。この料理といったらこの店だよねとイメージさせること、ちょっと背伸びして行っても(つまり価格的に高いけれど)失望させないこと、そして店の内装や規模はここまでできないよね、というレベルに仕立て上げることでしょうか?
以前、日本で不動産系上場会社のある社長と話をした時、その彼もまったく同じことを私に述べていました。「このビジネスモデルは誰も追随できないんですよ。理由は規模かな。中古マンションをいっぺんに50戸も買える資金力を持っているところは専業である当社しかないのです。だからこそ、市場価格すらコントロールできるのです」と。この社長さんは泣く子も黙るGSでかつて伝説の男と言われた人ですからパワーも違います。
追随されない方法としてカリスマ性をもったオーナーや創業者が最前線に立つという手法は日本でもかなりおなじみだと思います。その代表例はジャパネットたかたの高田明さんではないでしょうか? テレビショッピングは洋の東西を問わず何処でも非常に一般的です。日本の地上波テレビ放送でも深夜(というか早朝)はこのテレビショッピングの番組が占拠しています。ケーブルでは専門チャンネルもあり、日本でも北米でもそれなりに売れているようです。その中で、高田さんのあのトークはその中で商品を引き立たせる独特のうまさがあり、同社の顔役としてなくてはならない存在となっています。
一方で企業が永続的であるならばオーナーが持つカリスマ性をその企業価値とするのには難があります。それゆえにビジネスモデルとして追随を許さない工夫が必要なのです。そして、その工夫はずっと続くものではありません。商品によりライフは1年と持たないものもあるでしょうし5年持つものもあるのでしょう。企業としてそのビジネスモデルに頼り過ぎないということが重要ではないでしょうか?
追随を許さないということになればやはり複数の特徴を持たせ、「あれならあの店」という不動の地位を確保することでしょうか? 一方で価格戦略は必要以上に安くして価格競争に巻き込まれるより妥当な価格ながらこれだけゲットできるという商品内容のお得感を引き出し、これじゃないとだめなんだよねというものに出来ればベストではないでしょうか?
音響製品でBOSEというドイツの会社があります。ここの製品価格はいつも強気。そして値引きはほとんどありません。ある意味、音響製品のアップル版ともいえそうですがなぜ他の音響製品の数倍の価格でも立派なビジネスができるかと言えば追随を許さない音質が指名買いに繋がっているといえるのです。私の車にはBOSEのスピーカーが標準装備されていますが、BOSEの銘板は車の乗る人になるほどね、と言わせる説得力があるのです。
では特長さえあれば他はギブアップしてよいのか、といえばそんなことはありません。
飲食であれば私は正三角形のバランスをいつも説いています。つまり、うまいだけではなく、店舗のデザインと店員のサービスが均等にバランスが取れていることが大事だという意味です。日本では一昔前、ラーメン店などで旨ければサービスは二の次といったところも散見されました。むしろ、サービスの悪い店が逆説的に週刊誌などで取り上げられたケースもありますがたぶん一時的なもので終わったのではないでしょうか?
バンクーバーの居酒屋では店員が客の注文を大声でリピートする店が多く見られますが、一部のファンを除き嫌がるケースも見受けられます。それは店の雰囲気を活発にするというレベルを超えて「耳障り」と思われているきらいがあるからでしょう。お客様が心地よく過ごせない店は永続モデルではないのではないでしょうか?(もっとも居酒屋をクラブのように見立てて顧客層を絞り込むという発想はあるかもしれませんが)
私自身、追随を許さないビジネスをいつも考えています。自身のビジネスでできているのは正直、マリーナ事業の一つだけです。これは他に作れないという物理的強さを持ち合わせており、誰もこの事業を邪魔することは出来ません。このような発想を持ちながら常に考え続ける、そして刺激を受け続けることでよい知恵が生まれてくるのかもしれませんね。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年10月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。