破綻処理なしの「分社化」は資本主義のルール違反

2013年10月31日 09:48

東電の「分社化」についての自民党案がきのうまとまり、来週、安倍首相に報告される予定だ。BAD東電をつくって「除染・中間貯蔵施設」や「廃炉・汚染水対策」に国費を投入するものだが、肝心の破綻処理にはふれていない。


「東電と国の責任の所在の明確化」については「原子力事業や災害に関する各法律において『国がより前面に出る』ための国の法的立場を明確にした上で、必要な資金の拠出や実施体制への関与のあり方・規模を早期に明確化すること」と書かれているが、国の法的立場をどう明確にするのかは書かれていない。

「国民の理解」を得るために「まずは東電自らの努力、さらにはより一層の徹底した社内合理化を進めることを含め、厳しい自己改革が必要である」と書かれているが、要するに「徹底した社内合理化」をすれば、株主責任は問わないで国費を投入するということだ。

こういう事業会社への国費投入は史上初である。今までにも銀行については長銀や日債銀などに資本注入した前例があるが、これは返済するという前提だった(破綻したので返済されなかったが)。預金取扱金融機関は債権者(預金者)が非常に多くて債務整理ができないので、これは特例だ。

事業会社を破綻処理しても、業務に支障はない。日本航空の場合は官民ファンドの産業再生支援機構が3500億円出資したが、会社更生法で株主資本は100%減資された。これでも「国費を出したのはおかしい」という批判があったが、この出資は返済された。これまで国が東電に「出資」した1兆円は実質的な「贈与」になり、これまでに3兆円以上が「交付」されているが、返済の見込みはない。

そこへ突然、汚染水処理の470億円が出てきたが、これは氷山の一角だ。今後の廃炉には1兆円以上、除染には5兆円以上かかると推定されている。特に除染は、市町村が勝手にやった費用のツケを国に回し、それを国が立て替えて東電に請求している。今までに404億円を請求したが、東電は74億円しか払っていない。ほとんどの除染が法的根拠のない1mSvまでの作業だからである。

この結果、差額の330億円は国が実質的に負担することになるが、これは違法な国費投入である。これが既成事実になったら、際限ない国費投入が始まる。今回の自民党案は、これを法的に正当化して原発事故の責任をなし崩しに納税者に負わせるものだ。

もちろん東電は実質的に破綻しているので「国がより前面に出る」ことは必要だが、その前提として破綻処理は不可欠である。これは「国民の理解」のためではなく、加害者の東電株主が責任をとらないで被害者である納税者の金を使うのは、資本主義のルールに反する。国会も財務省も許さないだろうし、それが法的に正しい。

泉田知事のように勘違いしている人が多いが、破綻処理は「懲罰」ではない。会社更生法で債権カットしたGOOD東電はピカピカの優良会社になるので、むしろ「救済」に近い。経産省は「東電の債権をカットしたら銀行が融資してくれなくなる」というデマを流しているが、メガバンクが貸さなければ外資系が喜んで貸すだろう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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