『サクラ大戦』にみる米田司令の「父性」 --- 多田 純也

2013年11月10日 11:08

1996年に発売された『サクラ大戦』シリーズは、その斬新なゲームシステムや魅力的なキャラクター、戦隊ヒーローシリーズを彷彿とさせる王道のストーリー展開に豪華な声優陣と、全シリーズで楽曲を担当した田中公平氏の見事な音楽と歌で、当時のセガサターンやドリームキャストの売上に大きく貢献しただけでなく、当時としては初と言えるメディアミックス戦略の先駆けとしても、ゲームだけでなく、アニメ、映画化、ゲームのキャラを演じた声優さんによる舞台やフィギュアやプラモデルなどの模型業界や、漫画版やその漫画版を全編CGと新録で動くフルカラー漫画として展開するTOMOTOONなど、現在も幅広く人気を誇っている。


今年で、シリーズ誕生から17年になる同シリーズだが、ここで「『サクラ大戦』シリーズの主人公は誰か?」と聞かれたら、ファンはどう答えるだろうか。

「そりゃ当然、プレイヤーキャラである大神一郎だろう」と答える人も居るだろうし、「自分の大好きなヒロインキャラ」と答える人も居るだろう。

だが、私なりに同シリーズがひとまずの完結を迎えた、シリーズ第四弾『サクラ大戦4~恋せよ乙女~』や、映画版や一連のOVAを見た感想で個人的に、『サクラ大戦』シリーズの真の主人公は、表向きは大帝国劇場支配人にして、実は帝国華撃団司令米田一基中将なのではないかと考える。

劇中でも語られるが、ゲーム本編より前に帝都は降魔戦争と呼ばれる魔との戦いが繰り広げられ、霊力に長けた米田中将以下四名による陸軍対降魔部隊が命がけで戦い、結果的に降魔の侵略から帝都を守ったものの、米田は共に戦った自分の部下二名を失い、ゲーム『1』でも最後の部下だった、副司令の藤枝あやめを失ってしまう。

(この世界での)日露戦争の猛将と謳われ、降魔戦争から帝都を守った対降魔部隊隊長という英雄として、ゲーム本編で帝国華撃団の創設者となったが、霊力を殆ど失い、前線に立つことも出来ず、年端もいかない少女たちと若き隊長を戦いの場に送り出す米田の心境はいかばかりだったろうか。

普段の大帝国劇場支配人としての米田は、常に支配人室で飲んだくれているが、本当はそんなふがいない自分に対するやけ酒なのではなかったのかと、ふと考える。

OVA『サクラ大戦轟華絢欄』第5話「父と娘」ヒロインさくらの親戚の結婚式の帰省で父親代わりを努め仙台へと向かう列車の中で、米田はさくらだけでなく、自分は花組全員を自分の本当の娘のように思っていると呟く。

それは勿論、先の降魔戦争やゲーム本編での”もう誰も犠牲者を出したくない”という思いから来るのだろう。

ゲーム『4』で、全ての戦いを終えた米田は、プレイヤーキャラである大神一郎に自分の愛刀と大帝国劇場支配人と帝国華撃団総司令の任を託して、一線から退く。

エンディングムービーで、桜舞い散る桜並木で、とっくり片手に歌を歌いながら歩く米田は、帝国華撃団だけでなく巴里華撃団のヒロインたちが駆けつける幻を見る。

彼女たちは米田を通り過ぎ、大神のもとに駆け寄る。

自分の娘のように愛した少女たちは、自分が認めた大神一郎という若き青年とともに生きて行き、嫁いでいくだろう(『4』のテーマの一つは、これまでの帝都と巴里のヒロインと大神との結婚でもある)。

その幻が消え、米田が視線を移すと、今度は降魔戦争でともに戦い散っていった仲間たちが、米田を温かく見守っている。
”破邪の血”を受け継ぎ、命と引き換えに降魔を退けた、さくらの父、真宮寺一馬。
降魔戦争で、己の信ずる正義に迷い一時は魔に堕ちた、山崎真之介。
その敵となった山崎との愛で苦しみ、散っていった藤枝あやめ。

「咲いて散る、桜の花…サクラ大戦かぁ…」と呟きながら桜並木を歩き、『サクラ大戦』シリーズは、ここでひとつの完結を迎えた。
米田一基の、長い戦いが尊い犠牲と、次の世代への希望と未来を抱きつつ、遂に終わった瞬間だった。

同シリーズの『1』から『4』までプレイしたプレイヤーにとっては実に感慨深いラストシーンだった。
よくネット上では、「『4』は、新作として発売されたのに、プレイ時間が短くて不満だ」といった声も聞くが、私の中では『4』は、それ一作がエピローグと割りきってプレイしてるので全く不満はない。

先のエンディングムービーを見るだけでも十分買った価値はあったと今でも断言できる。

劇場版『サクラ大戦~活動写真』(ゲーム中の時間軸では『3』と『4』の間)で囚われの身になった米田は、敵の親玉に「アンタはあの娘達がなんのために戦っていると思う。あの娘達が何を想い、何を願って戦っているのか、それが分かるかね、アンタに。」「あの娘達は強い。今でもこの帝都を立派に守ってきた、そしてこれからもだ。俺はそう信じている。」と毅然と言い放つ。

それだけ、彼女たちを信頼しているからだろう。

そして、戦いに勝利し、米田は敵に通じていた議員を殴り飛ばして、「オメェも日本人だろ!自分の国に誇りを持ちな!!…、あの娘達は、それがあるから強いのさ…。」という米田の顔は、完全に父親の顔だった。

プレイする人の数だけ、それぞれの『サクラ大戦』シリーズの主人公があるだろうし、ゲームに限らず、様々なメディアで展開する同作品を通じて、それこそ、それを含めれば真の主人公は星の数ほどあるだろう。

ですが、私の中では『サクラ大戦』シリーズは、また同時に『米田大戦』でもあったと今でも思う。

是非とも、未プレイの方は、「どうせギャルゲーでしょ(笑)」と馬鹿にしないで、一度プレイしていただきたい。

ゲーム以外でも、色んなメディアからこの作品を通じて、この作品の魅力に触れていただきたいと、一人のサクラ大戦ファンとして強く願う。

多田 純也
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