中韓と距離をおけば日本は繁栄するというのは本当か --- 東猴 史紘

2014年01月19日 12:06

(1)7年ぶりに首相の公式参拝

昨年末、安倍首相は靖国参拝をした。首相による公式参拝は平成18年の小泉元首相以降、7年4ヶ月ぶりである。参拝に関する日本国内の賛否は大きく割れ、以下の世論調査を見ても評価は難しい。

・産経FNN合同世論調査「評価しない53.0%」「評価する38.1%」
・共同通信社「よくなかった47.1%」「よかった43.2%」
・TBS系報道番組「情報7daysニュースキャスター」「反対32%」「賛成68%」
・yahoo!ニュース意識調査では「評価しない16.7%」「評価する82.1%」


ただ、どちらかというと「反対はしないけど、賛成もできない」という微妙に暗い空気が日本を漂った感は否めない。また、海外の反応もすこぶる悪かった。中国と韓国は当然として、同盟関係にある米国すらも国務省声明で「失望した」と日本を批判した。

安倍政権は「経済再生」を最重要目標に掲げている。日本が失われた20年から脱却し、経済再生を成し遂げるには靖国神社や尖閣諸島等の歴史問題は障害となる面もある。2012年の尖閣デモが原因でトヨタや日産といった大手自動車会社の売り上げがその月に5割近く下がってしまったのはその最たる例である。

今一度、日本の経済再生にとって歴史問題は棚上げしたほうがいいのか? 悪いのか? を考えてみたい。

(2)日本の貿易相手国トップ3

日本の貿易相手国を見てみると、上位トップ3は中国・米国・韓国である。つまり、日本は貿易相手国上位3カ国の中で2カ国も歴史問題を有するのだ。その3カ国の順位にも変化が起こった。以下、財務省貿易統計を見てみる。

[1995年]
1位 米国(25.2%)
2位 中国(7.4%)
3位 韓国(6.2%)
↓↓
[2007年]
1位 中国(17.7%)
2位 米国(16.1%)
3位 韓国(6.1%)
↓↓
[2012年]
1位 中国(19.7%)
2位 米国(12.8%)
3位 韓国(6.1%)
(財務省貿易統計 貿易相手国上位10カ国の推移-輸出入総額:年ベース-)

過去に最大貿易国であった米国は2007年を境に中国が日本の最大貿易国となった。また、2010年には中国のGDPは日本を追い抜き世界2位まで上ってきた。将来的には米国を追い抜くという予測まである。こういった流れの中で日本は親米に偏りすぎていた外交関係を見直して、中国や韓国を歴史問題で刺激せず友好関係を深めていくだといった声が大きくなるのは当然とは思える。

(3)日本が衰退した時の共通点

確かに、米国だけでなく中韓との友好関係を深めることができれば日本にとってはベストなのだろうがそれは難しい。日本や韓国や朝鮮半島(韓国・北朝鮮)と関わりを深めたとき衰退・危機に陥るということを現代史が教えてくれているからだ。以下、大正、昭和、平成時代を振り返ってみる。

大正時代には、中国大陸の満州に進出した日本は泥沼にはまり、米国等の西洋諸国と敵対してしまい国連脱退を余儀なくされ結果、第二次世界大戦において原爆を2回落とされ焼け野原にされた。昭和には、田中角栄内閣が誕生し日中国交正常化した。中国との友好関係を結んだ田中総理は極めて高い評価を得たが、日本経済は狂乱物価により不景気になり、その後ロッキード事件で失脚した。

平成では、直近の鳩山内閣が従来の日米関係を断ち切り中国と連携を深めるべく東アジア共同体構想を掲げた。しかし、その結果は説明するまでもない。政権はそのまま崩壊した。第1次安倍政権も、小泉政権で悪化した日中関係を改善させようと就任当初に真っ先に中国を訪問したが、短命政権に終わり、その後日本は毎年首相がコロコロ代わる悪夢の時代に陥った。

朝鮮半島(韓国・北朝鮮)との関わりも同じだ。戦後の特需景気は朝鮮半島のお陰だが、それは日本が米国との友好関係にあったからその恩恵を得ることができたのだ。

つまり、過去の日本の歴史を振り返ると米国など西洋諸国ではなく、中国との友好関係を深めたり、関わったときに日本が衰退・滅亡の危機に陥っているのだ。この点、『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(石 平著)に詳しい。同書では「日本という国は、中国大陸と距離を置いた時代にもっとも輝いているのである」と言い切っている。

(4)日本が発展した時の共通点

逆に日本は西洋諸国との友好関係を中心とした外交・経済運営を展開したときは成長を遂げている。

明治時代の文明開化は中国ではなく、西洋文化を取り入れた結果である。昭和時代では吉田茂が米国(支配下ではあるが)と共に焼け野原にあった日本の基礎を作り上げた。また、所得倍増を掲げ、高度経済成長を成し遂げた池田勇人政権も中国や朝鮮半島ではなく、欧米との関係を重視したからこそである。以下、「池田勇人の対外認識とアジア政策 李炯喆著」を一部抜粋する。

「池田勇人内閣は経済政策を優先的な政策としつつ、政治問題の争点化を避けた。対外的にも沖縄問題、韓国との国交正常化問題、中国承認問題のような過熱しやすい争点は後回しにして、IMF8条国への移行、GATT11条国移行、OECD加盟など、日本経済の国際経済への復帰を主眼として、その目的を果たした。確かに、日韓及び日中との国交正常化はアジアへの復帰を果たすには避けられない過程であるが、池田の経済主義的効用論から見れば、日本外交の主軸をアジアへ置くよりは欧米との協調を深めたほうが、まだ先進国への復帰を果たせなかった日本の実利に適うことであった。」

また、平成においては徹底して靖国神社を参拝して日米関係を重視させ中国との関係を切った小泉純一郎内閣は構造改革を断行し「いざなぎ超え景気」を実現した。平成は失われた10年、20年と言われるほど不景気に見舞われた時代だが、唯一この小泉政権のときが好景気になった。

やはり「日本という国は、中国大陸と距離を置いた時代にもっとも輝いている」というのは正しいようだ。

(5)経済優先の政治、外交を

さて、安倍首相は今年の靖国神社参拝に関して、「今後、靖国を参拝するのかしないのか、今は申し上げるつもりはない」としているが、第1次安倍政権で靖国参拝しなかったのは痛恨の痛みと表現していることからも、今年も参拝する可能性は極めて高いだろう。

参拝するのだとしたら小泉政権みたく中国や韓国との関係悪化を恐れず徹底的に参拝したほうがよい。靖国は歴史カードにならないということを示せるからだ。しかし、これはリスクが高い。4月には消費増税という経済の落ち込み要因が控えている。国内消費の落ち込みが予想される中、日中韓のビジネス上の障害となりうる靖国神社参拝は果たしてどうなのか。

そう考えると、今年は中国や韓国と関わりや摩擦を生んでしまい経済再生の妨げになりうる歴史問題は棚上げして、昨年以上の経済優先の政治、外交を行うことではないか。第二次安倍政権が誕生して以降の日本経済は確実に回復している。この流れを止めてほしくない。日本の経済が蘇れば、歴史問題でも中国や韓国に対して優位な外交を展開することができる。「経済は外交の武器」だからである。

東猴 史紘
元国会議員秘書
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