どうなる、中国の未来(その1) --- 岡本 裕明

アゴラ

このタイトルをご覧になって多くの人は「試練がある」「もう持たない」「崩壊する」と即座に反応する方が多いかと思います。事実、私も以前、「オリンピック10年後の試練」という内容のブログを書かせていただきました。発展途上にある国家がオリンピックを開催した場合、その10年後あたりに大きな経済的歪みが生じるという事実がその根拠でした。東京オリンピックのオイル危機、ソウルオリンピックのアジア危機、モスクワオリンピックのソ連崩壊、アテネオリンピックのギリシャ危機といった具合です。ならば中国は2018年前後ということになります。


崩壊するというシナリオの理由はインフラ、ハコモノ投資を主体とした国家の成長には無理がある、ということかと思います。さらに中国経済の心配は実態がよく見えないところにあります。一般市民も分からないし、8000万人以上の共産党員も分からないのは一種の秘密主義が生み出した国家のあり方であります。結果として噂が噂を呼ぶのですが情報統制がいかに民にとって理不尽なことか外から見るとよく分かりものであります。日本でも戦時中の情報統制は後々ひどかった、ということが判明しました。

ところで中国が二層型経済を作り上げている中でどちらの目線で捉えるかによって崩壊のシナリオは変わってくるかもしれません。二層とは都市部で働く人と農村で働く人を考えております。今や、世界最大の格差を生んだ共産主義中国はイデオロギー的にはまったく、矛盾を生んでいるのですが、農村にいる民の所得水準を引き上げるというスタンスに立てば、中国にはまだまだ伸び代は残っているはずです。

中国で中流が増えたという報道はあくまでも都市生活者の中の話であり、農村組はまだ完全に取り残されているのであります。つまり、都市レベルでのバブルは崩壊してもおかしくないのですが、農村組まで入れるとまだまだ中国経済は伸びなくてはおかしいのであります。このあたりが崩壊する、しないのポイントのずれなのかもしれません。

バブル崩壊した場合、様々なシナリオが立てられると思います。中央政府が立て直しを図るメインシナリオからソ連のように割とすんなりと国家の体制変換が進む場合もあるし、国を割る戦いになるケースも考えられます。ロシアは多くの民族闘争を経て、独立国を承認してきました。中国共産党が倒れればその歴史を考えれば間違いなく民族闘争の動きは出てくるでしょう。その場合、大きな混乱と騒擾は避けられません。これが世界の秩序や経済にどれだけのインパクトがあるか考えると共産党が崩壊するシナリオはあって欲しくない最悪の選択肢であるともいえるのです。

理財商品が行き詰る日はさほど遠くないかもしれません。その場合、だれが損をするかといえば都市部の金に目がくらんだ中流層であり、まさにバブルの崩壊のシナリオそのものになります。ですが、これが何を意味するかといえば多くの都市生活者の中流層と共産党員が振り落とされ、ほんの一握りの幹部だけが生き残り、強権を振り回せる強大国家を誕生させることも可能であります。

アラブの春の背景は何だったでしょうか? ごく一部の権力者がその富を集中させたことにあります。中国では個人の富の蓄財と権力が最も重要なことでありますが、いかに他人より上に行くか、その激しい競争が繰り広げられるというのが私の見る中国の近未来です。

但し、そうなった場合、国は荒れるでしょう。ただでさえ大問題になっている環境負荷はさらに悪化することも大いにあり得ます。それでも富を築いたものは勝ち抜きゲームの勝利の美酒に酔うというまるで安物の歴史小説に出てくるようなシナリオすら見えてくるのです。

ではそのような試練が待ち構えていると分かっているならばどう対処すべきでしょうか? おのずと答えは出てくるはずです。上海出身の中国人の友人と飲んだ時、「中国のマネーは腰が据わっていない。理由は中国人が誰も中国の将来を信じていないからさ。そこに喜んで入ってくるのが日本のマネーだよ。」と言ったその言葉にすべてが凝縮されているような気がします。

明日、この続きをお送りしたいと思います。

今日のところはこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年2月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。