イエレンFRB議長、ビットコインもバーナンキ路線を継承 --- 安田 佐和子

アゴラ

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は27日、米上院銀行委員会の公聴会に姿を現し粛々と資産買い入れ縮小を行う意志をあらためて表明しました。買い入れ終了は、「今年の秋頃」と明言。バークレイズやJPモルガンを始めとしたエコノミストが予想したように、10月に150億ドルの減額を発表し幕引きすることこそメインシナリオと示唆したかたちです。そのほか足元の経済指標の弱含みは大寒波と積雪の影響と一蹴し、市場関係者を安堵させました。S&P500は、過去最高値を更新して取引を終えています。

別の市場関係者も、イエレンFRB議長の発言を受けてホッと胸を撫で下ろしたことでしょう。

質疑応答で、イエレン議長はビットコインなどに「監督あるいは規制権限を持たない」とはっきり線を引いたからです。

過去を振り返るとバーナンキ前FRB議長は2013年11月、米議会向けの書簡にてアラン・ブラインダー元FRB副議長の議会証言を軸にビットコインへの理解を明確にしていました。今回の発言で、イエレンFRB議長は金融政策スタンスだけでなくビットコインに対する姿勢もバーナンキ路線を踏襲したことになります。

Mt. Gox騒動の渦中にあって、イエレンFRB議長の見解はウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙からエンガジェットまで幅広く取り上げられていました。ただ保守派寄りのWSJ紙は「ウォールストリートのアナリストは、ビットコインに疑問を投げかけてきた。シティグループのスティーブン・イングランダー為替ストラテジストも顧客向けに『ビットコインはMt. Gox騒動後に一段と投機的となった。多くの人々を惹きつける中央組織不在の構造こそ重荷となるだろう』との見解を寄せた」と結んでいます。

ウォールストリートだけではありません。ジョセフ・マンチン米上院議員(民主党、ウェスト・バージニア州)も議会証言前、26日に公開されたルー米財務長官宛ての書簡にて「ビットコインが他国で否応なく禁止されたとき、価値のない通貨の詰まったバッグを手にアメリカ市民が途方に暮れることを最も懸念している」と主張。ビットコイン廃止を求め、27日の公聴会でもイエレンFRB議長に規制強化の必要性を投げかけていました。同議長は、「規制を課すはずの中央発行体や1つのネットワーク運営が存在せず、取り締まりは困難になるだろう」と煙に巻いてましたが。

ビットコイン支持者の一部はというと、マンチン米上院議員のストレートな攻撃に選挙資金を寄付した企業リストで対応しました。

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(出所 : engadget)

リストの情報源は明確でないものの、こうしたリストを元に支援者であるJPモルガンとの関係性を指摘する声が出ていたんです。

こうした企業名は、政治資金の提供者一覧にて確認できます。恐らく、ビットコイン支持者はマンチン氏がウェスト・バージニア州知事時代に米上院議員に補欠選挙に出馬し当選を果たした2010年までの5年間の記録を洗ってたどりついたんでしょうね。同議員がビットコインに反対する意図を探る上で、2ちゃんねらー並みの検索力をみせつけています。

JPモルガンといえば、かつてビットコインと似たような仮想通貨を扱うプラットフォームを開発中との報道が出て、広報が否定した経緯もありましたっけ。

FRBが誕生したのは1913年12月。ロンドンで発生した手形割引拒否を引き金とした恐慌の対応策として個々の銀行による紙幣発行を廃止すべく、JPモルガンの創立者ジョン・ピアモント・モルガン氏やポール・ウォーバーグ氏、ジョン・ロックフェラー氏が後ろ盾となって設立されました。あれから100年。FRBを率いるイエレン議長が与えたビットコインへのフリーハンドは、前任者の言葉とともに歴史に刻まれるのでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年2月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。