特許訴訟で衆知を集める知財高裁(その1)

2014年03月12日 08:07

知財高裁が特許訴訟の争点についての意見を公募している。米アップル日本法人と韓国サムスン電子は、スマホの通信技術の特許の使用条件をめぐって争っているが、その控訴審で意見募集した。日本では初の試みで、米国で採用されている「法廷助言制度」にならったもの。筆者も「著作権法がソーシャルメディアを殺す」(以下、「小書」)第7章で、司法による著作権法改革の具体策として提案。脱稿後、本ブログ「グーグルの書籍検索サービス合法判決でますます拡大する日米格差(その2)」(以下、「グーグル判決」)でも提唱した制度である。


法廷助言制度は当事者以外の第三者が、裁判所の友(Amicus Curiae)となって裁判所に意見(Amicus Brief)を提出する制度。筆者は05年に、ファイル交換ソフトの著作権侵害責任が問われたグロッグスター事件の米最高裁での口頭弁論を傍聴。この時に法廷助言の効用を実感した。提出された40以上の法廷助言を一通り読んで、口頭弁論に臨んだが、その中に特許法に古くからある理論を適用すべきだとの意見があった。良いアイディアだなと思っていたら、判決もこの理論を採用した。

ダニエル・フット東大大学院教授は、1969年から86年まで米最高裁長官を務めたバーガー判事の書記を経験した。書記は当然法廷助言を全部読むが、中には説得力のある意見もあり、現に判決に採用された意見もあったと述懐している。

法廷助言の効用は最高裁判事も認めている。人種的マイノリティを優遇する積極的差別是正措置(Affirmative Action)に対して、白人が逆差別にあたり、法の下の平等を保障した憲法に違反するとして訴えた。この訴訟で、03年に最高裁は5対4の僅差で合憲判決を下した。合憲意見に加わったオコーナー判事は中道派で、彼女がどちらにつくかで、保守派とリベラル派の判事の意見が分かれる判決の帰趨が決まるため、アメリカで最も影響力を持つ女性といわれた。

この判決では彼女がリベラル派についたため合憲判決が下った。判決の後、彼女は、「積極的差別是正措置のもたらす利益は、理論ではなく現実であることが法廷助言によって判明した」と述べている(詳細は小書第7章参照)。

グーグル判決で紹介したグーグルの書籍検索サービスに対する著作権侵害訴訟の判事は、法廷助言からだけでなく、自身の体験からも現実を知ったようである。判事は口頭弁論で、「私の書記も文献調査にグーグル書籍検索サービスを多用しているが・・・」と原告に切り返した。判決の2ヶ月前のことだったが、これまで権利者よりの判決を下してきた判事なので、合法判決が下りるか疑問視していた筆者は、この時点で、その可能性は十分あるなと直感した。

この訴訟でも、図書館や研究者などから多くの法廷助言が提出された。判事は判決の中でもそれらを紹介しながら、グーグル書籍検索サービスの社会的効用を強調した。原告の作家組合は、著作権者の許諾なしに図書館の蔵書を全文スキャンしたグーグルを訴えた。グーグルは検索用のデータベースを作成するために全文複製はさけられないが、利用者に見せる検索結果は数行だけなので、米国著作権法107条に規定するフェアユース(公正使用)であると反論した。判事は多くの法廷助言が指摘した、書籍検索サービスの社会的効用も勘案して、グーグルの主張を認めた(詳細はグーグル判決参照)。

米国ではこのように地裁の事件に対しても法廷助言を提出できる。今回の意見公募は知財高裁独自の試みであるが、こうした効用のある制度の試行に踏み切った知財高裁(飯村敏明所長)の英断をまず評価したい。同時にこの試みが成功して、米国のように全面的に採用されることを願ってやまない。特に「最高裁 石のお城に 石あたま」という川柳も生まれる最高裁こそ、この制度を採用して、オコーナー判事のいう「理論でなく現実」を知ってほしいからである。この点については(その2)で紹介する。

応募方法については、米国と異なり裁判所が直接、一般の意見を募集できる規定がないため、知財高裁は両当事者の合意を得て、代理人を通じて提出するようにした。このため、応募要領は双方の代理人の下記のウェブサイトに掲載されていて、締め切りは3月24日(月)である。

アップル側:伊藤見富法律事務所(http://www.mofo.jp/)
サムスン側:大野総合法律事務所(http://www.oslaw.org/)

城所岩生

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