誰が「課金すればより高く飛べるマリオ」なんか欲しいものか --- 多田 純也

2014年03月13日 19:01

香港に拠点を置く最高投資責任者とやらが、任天堂に対してソーシャルゲームへの参入を促す書簡として「99ドル払えばマリオがもっと高く飛べる」という課金モデルを提示したそうだが、この発想の時点で決定的に任天堂がこれまで作り続けてきたゲームと、安易な課金目当てのソーシャルゲームとの埋めようのない”ズレ”を感じたゲームファンも少なく無いだろう。


ここ数ヶ月、私なりに少ないながらそれなりに投資をして、いくつかのソーシャルゲームをプレイしてみたが、結論としてはそれは自分がこれまでプレイしてきたゲームとは余りにも異質なものだった。

キャラクターというか、キャラクターのカードを入手する際にある程度の課金をしない限り、ほぼ確実にレアなキャラクターは手元には入らない仕組みや、プレイする時間にまで課金アイテムを必要とするシステムは、それまでの様々なゲームをプレイした私にとってストレスでしかなかった。

百歩譲ってレアキャラの入手に課金が必要なのは由としても、ストレスなくプレイするだけでも課金アイテムが必要で、課金をしないと数分間の待ち時間を要するシステムは、流石にどうかと思った。

そして、先日これまで使い続けたiPhone4sをiPhone5sに機種変した際に、うっかりとデータの引き継ぎをしなかったために、これまで集めてきたデータがパァになった途端の虚無感は相当のものだった。

その後も、自分の好きなキャラクター作品のソーシャルゲームを落としてはプレイしたが、どれも同じような内容だった。「レアが欲しけりゃ課金しろ」「プレイ時間を短縮したけりゃ課金しろ」のオンパレードでしかなかった。

と、こんなことを書くと正に今更発言でしかないのだが、正直言って腐ってもブロック崩しからスタートした生粋のゲーマーとしては大いに失望したものだった。

では、そんな課金ありきのソーシャルゲームと所謂”任天堂的なゲーム”とは水と油の如く、決して交わらないものだろう。

故横井軍平さんや宮本茂さんが、そして現社長のポケモンの生みの親である岩田聡氏が作り続けてきたゲームは、常に”爽快感と達成感のあるゲーム”だからだ。

横井軍平さんが最期に携わった、ワンダースワンの名作パズルゲーム『GUNPEY』も、宮本茂さんの『スーパーマリオブラザーズ』も、岩田聡さんの『ポケモン』シリーズも常に爽快感と達成感に満ちていた。時に壁にぶち当たっても、それを攻略した先に確実に快感が待っている。

それをゲーマーたちは分かっているから、任天堂のゲームを楽しんだんだ。

Nintendo64ソフトの『ゼルダの伝説時のオカリナ』のCMに出演した格闘家の前田日明氏は、いつもの口調でCMの締めで「よし、もう一回!」とつぶやく。

何度でもやり直す楽しさ、何度壁にぶち当たってもそれを攻略したくなる快感。

それこそが、脈々と受け継がれている”任天堂ゲーム魂(スピリッツ)”なのではないだろうか。

世界の誰が、課金するごとに高くジャンプするマリオを操作したいだろうか。

世界の誰が、快適に移動するには課金アイテムが必要なリンク(『ゼルダの伝説』の主人公)を操作したいだろうか。

世界の誰が、課金することで得られるピカチュウに喜ぶだろうか。

そんなものは誰も必要としてない。

何度もプレイして、何度も壁にぶち当たり、何度もポケモンゲットに失敗してこそゲーマーは熱中するのだ。私の大好きな”ダベり本”である、永田泰大氏の『ゲームの話をしよう』の中で、ゲーマーをサディストとマゾヒストに例えて、その両方を楽しませるゲームを対談中に高く評価している。また、同氏はゲーマーについて常に効率よくプレイするタイプと無駄なプレイをしつつ時にとんでもないスコアを叩き出すタイプをよく別けて紹介する。

その一例として、Nintendo64ソフトの『ポケモンスナップ』を前者のタイプの編集者と後者のタイプの永田氏とで、激写したポケモンの写真を見比べて楽しんでたそうだ。ポケモンの修正を理解しつつ待ち構えて撮ったスナップと偶然撮れたスナップ、それは甲乙つけがたく、どちらも楽しめたそうな。

そうした古き良き時代の”任天堂的なゲーム”の世界に、課金前提のプレイが入る余地はないと思う。少なくともソーシャルゲームの世界においては。

岩田社長も、決してソーシャルゲームへの参入を全く考えてないわけではない。任天堂が、近い将来ソーシャルゲームに参入したとしても、そこには私達が楽しんできた”任天堂の世界”がストレスもあからさまな課金制度もなく待っているだろう。

そう、遠い昔にゲームウォッチやGAMEBOYに夢中になったように。

多田 純也
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