ビットコインの「採掘」に関する基礎知識

2014年03月20日 17:01

ビットコインの採掘とは何をしているのか?という質問が多い。これに関しては、なかなか説明するのが難しく、ちゃんと説明しようとするとテクニカルになって長くなってしまうし、簡単に説明しようとするとイマイチなものになる。 下記の文章は、テクニカルな部分を極力おさえつつ、できるだけ簡単に説明しようと努力した。

Q ビットコインの採掘とは何をしているのか?

ビットコインの採掘とは、比喩であって、実際にやっていることは、ビットコインの仕組みのメンテナンス作業のことである。採掘というのは比喩である。

Q なにか暗号をつかってコインを作り出しているのではないのか?

採掘というとそういうイメージがあるのだが、そうではない。何かの暗号をつかって、コイン暗号みたいなのを作り出すといったことはしていない。 ビットコインを採掘するというと、特殊な暗号を解いて、それがコインになるようなイメージで伝わっている。暗号をといてコインを作り出す作業が採掘だと。実際はそうではない。採掘とは全くの比喩で、実際には、ビットコインが正しく動くようにメンテナンス作業をしている。

Q 採掘を行わないとどうなるのか?

ビットコインの送金そのものができなくなってしまう。または、不正を働くことが可能になってしまう。

Q 採掘とは、送金の確認や不正の監視といったことでいいか?

概念的にはそう考えてよろしい。

Q ビットコインの採掘と送金の関係についてはどういうことか?

ビットコインの送金はとてもおもしろい方法でなされている。ビットコインを送金したいひとは、勝手に送金を宣言することができて、それを他のコンピュータに知らせる。 その後で、その送金がおかしいものではないか、不正ではないかを、他のコンピュータが全員でチェックする。そして、チェックをくぐり抜けたものを、データベースに記録する。

Q そのチェック作業とデータベースへの記録が、「採掘」ということか?

そうかんがえてよろしい

Q 送金を勝手に宣言というのがよくわからない。なぜ勝手に宣言できるのか?

ビットコインは、銀行などの機関をつかわず、あるコンピュータからあるコンピュータへ直接送金する。 わたしのコンピュータが、貴方のコンピュータに送金したいとき、私のコンピュータが自分で送金の情報をつくって、貴方に送る。 自分が持っているコインを、貴方に、持っている範囲で渡すというなにか証書みたいなのをつくって、貴方に渡す。貴方はそれを確認する。こうして送金がなされるイメージだ。

Q どういう情報なのか?

送金元のアドレス、送金先のアドレス、金額である。

Q それは勝手に作るのだから、デタラメな数字を言ってもいいのではないか?全員が全員正直者ではない。

そのとおりで、私は1ビットコインしか持っていないのに、10ビットコイン送るという送金情報をつくって、貴方に送っても良い。 また、あなたに1ビットコイン送ると同時に、別のひとにも1ビットコイン送ってもよい(二重支払)。 こうした不正の送金情報をつくってあなたに渡すこともできる。

Q そんなことができれば、成り立たなくなってしまう。チェックしなくてはいけない。

そこで、私と貴方のほかの、第三者がこれをチェックする。 これがビットコインの仕組みの面白いところだ。 自由に送金情報をつくれるが、事後にチェックする。

Q 性悪説か?

性悪説であり、送金は勝手だが、チェックして不正は許さない、という方式だ。 銀行などの中央機関がある場合とは対照的である。銀行の場合は性善説で、銀行は絶対に嘘をつかないという銀行の信用(=性善説)がある。銀行がおこなう取引は正しいという仮定になっている。 ビットコインでは、だれでも銀行に相当する送金をつくれるので、性悪説がとられている。

Q では、どのようなチェックをするのか?

具体的には、持ってないコイン以上のものを送金していないかどうか? そもそもそのコインの正当な保有者なのか? コインを二重に支払っていないか?といったことをチェックしている。

Q そのチェックをしているのが採掘者という理解でいいか?

およそその理解でよい。実際には採掘者以外のコンピュータもチェックしていて、不正な送金をリレーしないようにしている。

Q ビットコインの送金には10分かかるといわれているが、これとの関係は?

ビットコインは、10分毎に、その間に行われた送金取引をまとめてチェックして、承認をしている。承認が完了すると、「確認済み」となり、確定の記録になる。 これが、まさに採掘とよばれている行為だ。 これは10分毎に行うため、ビットコインでは10分まって確認済みにならないかぎり、送金は確定しないということになる。

Q 採掘は誰でもできるのか?

誰でも行うことができる。インターネットに接続されたコンピュータさえあれば行うことができる。

Q どうやって行うのか?

採掘のためのプログラムがいくつかある。これをインストールして、プログラムを走らせることによって、自動的に行うことができる。 。 Q 採掘には許可などは必要がないのか?

特定のライセンスは必要なく、誰でも、いつでも自由に参加することができる。誰も管理しているわけではなく、自由に行って良い

Q では、採掘者自体が不正したらどうなるのか?誰でも参加できるなら、チェックするひとも不正ができるのではないか?

そこがまたビットコインの仕組みの面白いところで、不正をする採掘者と、不正をしない採掘者を競わせている。不正をしないほうが経済的に得になるようになっている。

Q 採掘には複雑な計算をする必要があるときいたが?

報道などでは複雑な計算と書いてあるが、実際は計算量が多い問題である。 計算自体はとても簡単で、貴方のスマホでも行うことができるような簡単な計算だが、これを繰り返し、大量に行う必要がある。

Q なぜ大量に行うのか?

この計算は、確率的にしか正しい答えを得ることができない類の問題である。 要するに、理論的に計算することはできず、場当たり的な試行錯誤して探し当てるしか無いという問題だ。

たとえば、ここにクジがあるとしる。100億個のクジがはいった箱に、たった一つだけ当たりクジがあるとする。採掘でおこなう計算とは、ひたすらクジを引いて、そのあたりが出るまで繰り返すという作業と理解するとよい。クジを1回ひくのに1回の計算が必要。これは簡単な計算だが、100億個の中から当たりクジを引くには、最悪100億回の計算が必要になる。

Q 採掘とは、大量の試行錯誤をするところからきているということか?

金の採掘も大量の石のなかから僅かな金をみつけている。それに近い作業をしているので、採掘という比喩が用いられているのだろう。

Q 採掘とクジの当たりとの関係がわからない

ビットコインでは10分ごとの送金取引をまとめてチェックしている。10分毎に、このくじ引きゲームが催されると考えて良い。世界中の採掘者は、当たりくじをひこうと我先に、計算を始める。世界中で誰かが当たりくじを引いた場合、その人が採掘に成功ということになる。

Q 採掘に成功するとなにか良いことがあるのか?

当たりくじを引くことができたひとは、その人の権限で、送金取引を承認することができる。送金取引を、データベースに書き込むことができる。 そして、その報酬として、新しいビットコインが生成され、その人のもとになる。これが採掘報酬である。ビットコインは採掘時のみに発行される。

Q なぜそんなくじ引きみたいな無駄なことを課すのか。10分毎に自動的に承認すればいいのではないか?

採掘者のなかにも不正をするひとがいる。どこまでも性悪説なのがビットコインだ。
簡単に採掘できてしまうと、不正が働きやすくすなる。

Q くじ引きに不正防止があるということか

確率的にしかあたらないくじ引きみたいなものに成功したひとだけに、承認権限を与えるというのがビットコインの仕組みの根幹のアイデアだ。不正を考えるひとでも、連続してクジに当たるのは不可能だ。将来にわたって不正するには、すべてのクジの当たりを不正をする人が引き続けないといけない。

Q なぜ、みんな採掘に参加するのか?

採掘に成功すると、ビットコインがもらえるからである。 この報酬目当てに、採掘をおこなう人がいるおかげで、ビットコインの仕組みが成り立つようになっている。

Q 採掘できなかった人はどうなるのか?

採掘競争は10分毎にリセットされるゲームだ。10分のあいだで、採掘に成功できる人は世界でひとつしかいない。もし誰かが採掘に成功したら、ゲームはリセット。次の採掘ゲームが新しくスタートする。

Q となると、世界中で一人しか採掘できないとなると、すごく確率が低くなるのでは?

なので、実際は、採掘プールというものをつかう。これは採掘者を何百人とあつめて、集団でひとつのコンピュータとみなして採掘を行うというものだ。共同採掘だ。 採掘に成功すると、得られたビットコインは、この採掘プールの参加者の何百人の間で配分されるという仕組みになっている。

Q 採掘で得られるビットコインはいくらか?

現在は、採掘成功につき、25ビットコインである。当初は50ビットコインであったが半減した。

Q 半減するというのはどういうことか?

採掘の報酬は、4年ごとに半減する仕様になっている。現在は25ビットコインだが、あと3年もすると、12.5ビットコンに減る。さらに、また4年後は、6.25ビットコインになる。

Q いずれそれはゼロに近づくのでは?

その通りで、採掘量はどんどんへっていき、2140年ごろ、採掘量はゼロになる (実際には、ビットコインの最小単位0.00000001ビットコインを下回る)

Q それがビットコインの発行上限か?

そうである。10分毎に新しいビットコインが採掘され、2140年までの採掘量をすべて足し算すると、2100万ビットコインになる。これがビットコインの発行上限である。

Q ビットコインが発行されなくなると、採掘する人がいなくなるのではないか?採掘する人がいなくなったら、ビットコインは動かなくなるのでは?

そこは、実際どうなるのかはわからない。 ただ、ビットコインの送金手数料は、採掘者のもとに渡ることになっている。将来、送金の数が非常に多くなれば、新しいビットコインの生成によって得られる報酬より、送金手数料の報酬のほうが大きくなるかもしれない。

Q 採掘コンピュータについて教えて欲しい。自宅のPCでもできるのか?

できる。 ただし、自宅のPCで採掘出来る量は、微々たるも微々たるもので、電気代のほうがよっぽど高く突いてしまうだろう。採算があわない。

Q 採掘しているひとは、どのようなコンピュータをつかっているのか?

ASICという、採掘の計算に特化したコンピュータチップを使っている。これは先程の比喩でいう、クジを高速で引き続けるために設計された専用のチップだ。このチップは、クジを高速で引き続ける以外の用途には使えない。ただし、その用途につかうと、あなたのPCの千倍、一万倍といったスピードがでるというのもだ。 シリアスな採掘者は、このチップを何十、何百と揃えて採掘をおこなっている。

Q 採掘の画像はないか?

ここに、米国最大の採掘コンピュータの映像がある。驚かないで欲しい。まるでデータセンターである。 https://www.youtube.com/watch?v=5CjldZLXiAU&feature=youtu.be&t=3m14s

Q これを見る限り、到底素人の採掘はムリな気がするが・・・

現在採掘行為はプロによるビジネスになっている。素人は家庭でコンピュータを組み立てて利益をあげることは非常に難しくなっている。 あなたもこうすれば採掘で儲かるといった話しが出まわる可能性があるが、そういった話は詐欺の可能性があるので注意されたい。家庭のコンピュータで副業で採掘して億万長者といったことはあり得ない。

Q 採掘や、ビットコインの仕組み、技術についてわかりやすいものはないか?

まず、野口悠紀雄氏の連載が、技術面に踏み込んでいて、わかりやすい。一読されたし。

「通貨革命か、それとも虚構か?「ビットコイン」を正しく理解する」

採掘に関しての、やや技術よりの説明は、私のブログのこのエントリを参照されたし。

ビットコインの採掘とは実際には何をしているのか?

さらに、ちゃんと理解したいという人のために、ビットコインの技術、仕組み、暗号についての解説書を執筆した。手前味噌ではなく、現時点で、仕組みと技術に特化して、端折らずに解説している本は他にないので、これを読んでほしいとしかいいようがない。

なお技術書ではなく、一般むけにかいてあるので、初歩的な理解でもわかるはずだ。

Q 技術的な仕組みを理解してなにか意味があるのか?

ビットコインは、経済的な面ばかりが語られるが、技術を理解していないとまるで頓珍漢な議論になりがちだ。経済的な議論をする上でも、技術を抑えておかないとまともな議論が成り立たないと筆者は考えている。

技術と、経済の両方の知識を理解しないといけない問題なので、ビットコインについては語れるひとが少ないのだとおもう。そういう方が多く出てきて、ちゃんとした議論がなされることを期待している。筆者が、書物や、ブログをかいているのも、一助になればと思ってのことである。

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