日本経済の直面する100年に1度の変化

2014年03月31日 23:30

今夜の言論アリーナは小幡績さんと私で出来レースになりそうだったが、意外におもしろい話になった。アベノミクスはしょせん偽薬だが、1年半で資産価格を5年前のレベルに戻したのは立派なものだ。これはわれわれも、偽薬効果を過小評価したと認めざるをえない。


他方、もう一つ意外だったのは、円安で経常赤字になったことだ。これも結果論でいえば当然で、付加価値ベースでみると、中国に中間財を輸出して(ほぼ同額の)最終財を輸入しているので、このサプライチェーンが変わらない限り、為替レートの効果はプラマイゼロで、最終的な輸入額のドル高だけ貿易赤字になってしまう。これは黒田総裁も理解していない。

特に大きいのが、エネルギー価格だ。GEPRにも書いたように、今回の経常赤字は第二次石油危機以来であり、資源のない日本にとっては危機的な事態である。LNGの価格が2.5倍になった時期に原発を止めて史上最高価格で買ったダメージは、GDPの0.4%に及ぶ。これは日本の潜在成長率0.8%の半分を失う巨大な損害である。

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これを端的に示しているのが、上の交易条件(輸出物価/輸入物価)の悪化である。円安と原油高で輸入コストが上がり、日本は貿易で稼げなくなったのだ。対外純資産はまだ300兆円あるが、経常赤字になると、毎年50兆円ずつ増える政府債務で10年足らずで食いつぶし、そのあとは金利が上がってゆく。

これを解決する方法は、やはりグローバル資本主義しかないだろう。日本はすでに所得収支で食う国になっているので、資本収益率を上げる必要がある。特に対外直接投資が重要だ。それでも将来は経常赤字になるので、対内直接投資も増やす必要がある。このフローからストックへの転換は、100年に1度の大きな変化である。

ただし資本収益率を高めると雇用の「空洞化」が進み、Pikettyのいうように格差は拡大するだろう。資本主義の最先端を走るアメリカでは、所得格差が社会をゆるがす大問題になりつつある。今までは資本収益率が悪い代わりに格差も小さかった日本は、よくも悪くもアメリカに近づき、世代間格差を加えるとアメリカより格差は大きくなるだろう。

アベノミクスの偽薬効果はもう終わった。次の問題はそれよりはるかに大きく、困難だ。高度成長期の蓄積を大英帝国のように100年かけて食いつぶすのはベストシナリオで、へたをすると日本はあと10年ぐらいで食いつぶしてしまう。これが日本経済の直面する最大の課題だが、理解している人はほとんどいない。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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