憲法9条はノーベル平和賞に値するか --- 岡本 裕明

2014年04月04日 18:30

朝日新聞によると一介の主婦が思い付きで始めた「憲法9条にノーベル平和賞を」という動きが急展開し、平和賞への推薦にまで至ったようです。一昨年のノーベル平和賞は270件あまりの推薦の中からEUが選ばれました。今年の平和賞にその数百あるかもしれない推薦の一つになるということです。ノーベル平和賞は「国会議員や大学教授、平和研究所所長、過去の受賞者らが推薦できる。受賞者は人物か団体のみ。憲法は受賞できない」(朝日新聞)とのことから受賞対象者を「日本国民」にして提出したようです。


憲法第九条
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

多分、この主婦は純粋な意味での行動だと思いますが、今後の展開には注目をすべきことになりそうです。

まず、安倍首相が考える憲法改正についてはその動きを止めるものではないと思いますが、注意深い検証が必要になりそうです。特にもし、今年の秋に平和賞でも受賞してしまえば国民の現憲法に対する満足感が高まり、憲法改正の動きが一気に萎むことになりかねません。ある意味、政権と時の宰相のポリシーが一主婦により崩される可能性はないとは言えないということでしょうか?(もっとも「日本国民」がノーベル賞を貰う可能性がどれぐらいあるかという議論は別です。過去の事例を見ると分裂しそうなEUを助けるとか、平和主義のオバマ大統領にその意思の踏襲を担保するために平和賞といった具合にプリベンティブ(予防措置的)受賞がみられます。よって日本が中国と島をめぐる対立をする懸念をもって予防措置的な発想からすれば本推薦は的を外していないという見方もできます)

次に世界がどうとらえるか、です。例えば日本は何が何でも絶対に第三国間の紛争を武力を行使して協力できないとすれば例えば、アメリカは日本とのパートナー関係を考え直すのでしょうか?

戦後70年経ちましたが過去70年の世界地図と今から始まろうとする新たな世界地図は明らかに相違すると思っています。例えば、過去70年はアメリカとソ連の傘の下にあり、東アジア地区においては日本は戦後復興、朝鮮半島は朝鮮戦争を経て経済的には世界最貧国水準、中国は文化大革命で10年の足踏みというベースの中で日本の経済的一人勝ちが目立っていました。

ところが今世紀に入り韓国がいち早く立ち直りました。中国も鄧小平の時代から急速な経済発展が「世界の工場」として輸出を支え、内需の柱である不動産と財政支出(特に鉄道事業)の開花がありました。中国、韓国の経済発展については日本の影響も大きかったのでしょう。技術の盗用などの議論はともかく、日本のリーダーシップの下、アジアが強く経済的に発展したことは大局的には素晴らしいことなのです。

但し、一定の経済力がつけば必ず「競争心」が芽生え、経済だけでなく、あらゆる方面において「勝ち進もうとする」のも人間の性とも言えましょう。それが現在起きつつある日本と中国、韓国との軋轢の原因の一つであり、かつての傘からこぼれ、あるいは新たなる傘ができつつある状況ではないでしょうか?

では、今後も大規模な戦争が起きるリスクは高いのか、といえば私はないだろう、と思っています。なぜなら70年も戦争を知らない日本が戦争をする体制にないのであります。相手国も程度の差こそあれどしかりであります。また、近代戦争は武器が強大であり、あたかもテレビゲームのごとく行われる時代です。つまり、武器の近代化、強靭化こそがリアルの戦争に踏み込めない状態を作っているともいえるのではないでしょうか?(核も同じです) 例えばクリミアで戦争が起きると主張する意見もありますが、それを踏みとどめる各種制裁と対話が人間の英知であるともいえるのでしょう。

憲法9条を通じた日本国民への平和賞というのは私には主張としてしっくりこない気がします。平和を望むのは日本国民だけではなく万国共通であります。9条があるから平和だとすればこれがなければ好戦国なのか、という言い方もできます。それよりも日本が世界平和にどれだけ貢献してきたかというアピールがむしろ、最大のポイントだと思うのですが、そこを日本はどこまで推せるのでしょうか?

ただ、この一主婦の行動は日本人に平和とはなにかということを考えさせるにはとても良い機会であるとは思っています。個人的にはノーベル推薦は付帯的なもので「(自国を含めた)国際紛争に対する日本の抑止力の方法と貢献」という観点から今一度見直すことこそが重要ではないかと思います。

今日はこのぐらにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年4月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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