誤解される靖国と多神教 --- 山城 良雄

2014年04月23日 05:00

最初に断っておくが、ワシは靖国神社自体にあまり好感を持っておらん。というより、宗教と言うもの全体に、ウンザリしている部分がある。

あっけらかんと非科学的なことを言い出して、デカイ顔。ケってな感じになる。科学で全てを解決するのは可能できない問題も多いやろが、非科学では解決できない問題はもっと多い。てなことを言いながら、今回は靖国神社それもA級戦犯の合祀を擁護したい。


たとえば、A氏とB氏が戦死した若者を追悼するとする。A氏は「その若者に祈る」。一方、B氏は「その若者のために祈る」。どや?違い、わかるか?

Aは多神教、Bは一神教の人や。言い換えてみればわかりやすい。A氏は「神の一員になったその若者に祈る」、B氏は「その若者が天国に行くように神様に祈る」。考えてみれば、誰が死のうが、何がおころうが、一神教国では祈りの対象は神様しかおらん。

ただし、実際には二人のメンタリティは、そないにかけ離れたものではないやろ。ただただ、その若者のことを思っているだけや。

靖国の追悼の方式は、間違いなくA氏流や。戦死者のひとりひとりが、全て神様の一員というわけや。時代、戦功、階級に関係無く、全て246万6千余柱のうちの一人と考える。戦争の位置づけや憲法との関係、信仰の形なんぞを別にすれば、この「みんな神様」という雰囲気は、多くの日本人に違和感はわないやろ。

多神教のメンタリティーは、ポケモンやAKBに近い発想と言える。キャラをどんどん増やしていく。そやから、多神教は一神教を受け入れやすい。特に、一神教側が他宗教に寛容やと簡単に融和してしまう。

クリスマスのミサをあげたあと、信者一同と終天神(12月25日)に繰り出す神父というのは、別に珍しい存在ではない。「アラーの他に神はなし」で非寛容なイスラム教が、キリスト教ほど日本に定着しないのは、このせいやろ。モスクで結婚式あげる日本人少ないもんな。

けれども、逆に一神教側が多神教を受け入れるのは容易な話ではない。唯一神以外の存在に対して祈るということは抵抗が強いのやろな。ただし、一神教を徹底すると窮屈で退屈な宗教になる。完全無欠の神様と自分との緊張関係……普通の人間にはシンドイ話や。布教に不利、特に子供には絶対に好かれんやろ。そこで、キリスト教では、サブキャラクターが出てくる。

まず、神様だけでなく、三位一体ということでキリスト(人間としての顔を持つ)に祈る事もできるようになった。イスラム教徒は決してムハンマドには祈らへん。次に、カトリック教会は、ゲルマンの土着信仰からマリアというキャラをスカウトしてきた。南米なんかでは、三位一体とは神様・キリスト様・マリア様という、なんともユルい俗信がある。

仕上げは、プロテスタント系からの冷たい視線をものともしない聖人の追加。十二使徒に始まって、最近ではヨハネス・パウロ二世まで候補になている。一神教と多神教のいいとこ取り、という批判は免れんやろ。

さて、ここで靖国のA級戦犯の合祀に話は戻る。神様を追加するという行為は、一神教国、特にカトリック教徒か、カトリック文化になじみのある人から見ると、聖人の創設にしか見えへん。遊就館の展示内容や昨今のネトウヨの発言なんかが、この誤解の後押しをしておる。東条英機をセンターに据えた新ユニットのデビューというわけやな。

この誤解を解くのは正直言って難しい。一神教の人に多神教の感覚をわかってもらうのは、その逆よりも数倍たいへんやという覚悟がいる。下手をすると、まだしも、多神教文化になじみのある中国人や韓国人の方が、理解しやすかったりするで。

もし仮に、日本人が「A級戦犯のために八百万の神様に祈る」というのなら、イメージが大部違う。ヒトラーに仮に子孫がいたとして(おらんらしいが)、冥福を神様に祈ったとしても、倫理的に非難するのは難しいやろ。実際、ナチスの下級将校の子孫が、教会で祈る事は普通に行われている。赦すことと正当化することとは全く違う。

「日本だけが悪かった」という主張と、「人は死ねば神様、たとえA級戦犯でも」という2つの主張。ワシかて、それぞれに、もっともな部分も認めるが、この2つの主張が妙な化学反応をすると、「日本の戦争は聖戦であった。全て悪いのは連合国である」という、アメリカ人には絶対に受け入れられない宣言に化ける。ここまで気合いのはいった無茶を言う日本人は皆無のはずやのに。

靖国を国としてどう扱うのかを考える場合に、キリスト教文化の国にヤスクニを理解してもらうことは、絶望的に困難であるということを認識しておくべきやろ。そして、こういう方向性の努力を靖国神社の関係者が怠ってきたことは、認めざるを得なのと違うかな。

いずれにせよ、西洋人に対して、多神教に関する何の説明もなしに、ヤスクニの存在を理解してもらうのは無理や。ムシの良い期待は、国益をムチャクチャ損なうことは間違いないやろ。

今日はこれぐらいにしといたるわ。

帰ってきたサイエンティスト
山城 良雄

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑