クールでポップな国に留学しないか? --- 中村 伊知哉

2014年04月28日 08:23

日本に留学しませんか? イギリスの学生たちに向け、日本の大学をPRするイベントに参加しました。驚いたことに、千人近くの参加を得ることができました。日本熱、高い。経済、技術、学生生活、さまざまな魅力を訴える企画のトリとして、ポップカルチャーのお話をしてきました。ラフなメモまで。

ロンドンロンドンロンドン。楽しいロンドン愉快なロンドン、ロンドーンロンドン。

これが日本人にとってのロンドンのイメージです。

そんなイメージをロンドン五輪の開会式が変えました。


ジェームスボンドが女王陛下を空中からエスコートし、Mr.ビーンがシンセサイザーを演奏し、ティム・バーナーズ・リーがメッセージを発し、デヴィッド・ベッカムがアシストして、ポールマッカートニーがヘイジュードとうなる。閉会式にはエリックアイドルがAlways Look on the Bright Side of Lifeと語りかけました。

クールです。

次はわれわれの番。東京は2020年に五輪をホストします。では誰が開会式の壇上にふさわしい?

トヨタ、ホンダ、ソニー? いいかもしれないが、人物ではありません。

政治家はどうか? 日本人は、サー・ウィンストン・チャーチル、マーガレット、トニー、みなさんの代表をよく知っています。みなさんはどうです? もちろん、われわれも多くの立派な政治家を輩出しています。だが、首相は毎年交替していて、名前を覚えられないだけです。

マンチェスターのシンジや、グラスゴー・セルティックのシュンスケは? いいかもしれません。が、アメリカや中国ではさほど知られていないかもしれません。

ガンダム、孫悟空、ピカチュウ。彼らなら大丈夫でしょう。彼らが日本人かどうかは存じません。でも、日本を代表することはできます。日本はキャラクターの国ですから。ナルト、デスノート、ブリーチ。彼らも大丈夫でしょう。日本はポップカルチャーの国ですから。

ぼくが初めて海外に出たのは32年前、1981年、ロンドンでした。ロンドンロンドンロンドン。ロイヤルウェディングをこの目で見ました。ロンドンは幸せイッパイでした。

でもロンドンは怖かった。パンクスと暴徒であふれていました。ぼくが持っていた花の子ルンルンのピンクのビニールバッグをよこせと追いかけられ、それだけは渡せない、とんでもない目に遭いました。

大変な刺激になり、帰国後、少年ナイフというバンドを作りました。そのバンドは90年代に入り、マイクロソフトのCMでローリング・ストーンズの後釜に座り、世界的に有名になりましたが、その後20年間、日本のミュージシャンは国際展開に成功していません。

ところが昨年、奇妙なことが起こりました。初音ミクというミュージシャンがロンドン五輪の開会式で歌ってほしい歌手の国際投票で一位を獲得したのです。結局、ポールが歌ったので実現しませんでした。が、なぜ初音ミク? 過去20年で、何かが変わったのです。

2006年に16歳のフランス娘2名がベラルーシで捕らえられる事件がありました。パリを出て、ドイツ、チェコ、ポーランドを超えたところでビザ不所持で捕まったのですが、アニメとビジュアル系のファンだった彼女たちが目指していたのは日本でした。日本を世界の中心と考えていたのです。ぼくらにとって、日本がヨーロッパからそう見られているというのは、ショッキングでした。

毎年パリで開催されるジャパンエキスポには20万人が集い、アニメやゲームのコスプレだけでなく、日本の女子高生コスプレや、10年前に駆除したガングロが闊歩していることにも驚きます。領土問題で揺れる中国の北京大学で講義した際も、博士課程の学生たち全員がぼくの知らないAV女優を知っていて驚きました。

この20年で日本はポップの国に姿を変えました。

日本のポップカルチャーにはいくつか特徴があります。

1 輸入
 海外から技法を輸入し、独特の発展をみせる。アニメもゲームもそうです。ロリータは典型。ヨーロッパのお姫さまファッションが原宿で発展しました。むかしからそう。鉄道技術と紡績技術をイギリスから輸入し、いま鉄道システムとファッションを輸出していますありがとうございました。

2 多様
 SF、スポーツ、食べ物、歴史、哲学、恋愛、教育。子ども向け、青年向け、女性向け。あらゆるジャンルのマンガがあります。和洋中どんなレストランもあり、フランスやイタリアの国旗がこんなに下がってる国はありません。残念ながらイギリス国旗は見られません。

3 技術とデザインの融合
 ニンテンドーがゲーム機とスーパーマリオを同時に作ったように、技術・ものづくりの力と、コンテンツ・表現の力とを組み合わせるのが得意です。ボーカロイド技術とアニメキャラとを組み合わせた初音ミクが典型。

4 大人と子どもの未区分
 電車で大人がマンガをむさぼり読み、アニメにハマります。子どもは高額所得者で、安全なので自分でゲームソフトを買いに行きます。子供服とレディースがハッキリ分かれる西洋と違い、ティーンズファッションが発達しています。生まれてすぐ寝室が分けられる西洋と違い、親子は川の字で寝ます。

5 庶民文化
 武家文化でも貴族文化でもなく、大衆の文化が中心文化です。「千と千尋の神隠し」のような難解なアニメがタイタニックを上回る歴代1位の興行収入を生む、その大衆の審美眼。道を聞かれれば地図を画像表示でき、1億人がタテ笛を吹ける、その表現力。それが土台です。

6 参加
 その表現力をみんなが発揮します。7年前の米企業の調査では、世界の全ブログで使われる言語の37%が日本語で、英語の36%を上回り1位。今年2月の調査では、モバイル利用者の平均情報発信量は日本人は世界平均の5倍で断トツ1位。実は情報の生産・発信力が高いのです。

だからアマチュアクリエイターとファンのバザール「コミケ」は年間500億円という映画興行収入の1/3もの売上をみせます。「初音ミク」は作詞、作曲、歌ってみた、踊ってみた、いろんな参加法によって、みんながソーシャルメディアの上で育てたのです。

不思議でしょ? 見て学びに来ません?

今や日本のポップカルチャーはディスプレイを脱しました。例えばロボット。マンガやアニメにインスパイアされつつ、生きるコンピュータとして発達を遂げています。あるいは自動販売機。日本は麺も寿司もバナナも卵も下着も買える自販機大国です。このユビキタスなマシンをデジタルメディアに変えようとしています。

ウォシュレットを作った国として、トイレをメディアにしたらどうか。そんな提案をしていたら、セガがホントに作りました。おしっこで対戦するサイネージです。こんなマシンを本当に作ってしまうクレージーな企業がある、これがみなさんに来日して産学プロジェクトに参加することをお勧めする理由の一つです。

アメリカで日本のお菓子がウケてると聞きます。日本のお菓子はおいしい。ものづくり力です。そして日本のお菓子はヘンです。キノコの形のチョコや魚の形のクッキーがあります。カールというお菓子にしか現れないおじさんを国民全員が知っています。デザインです。それがネットで買えるようになった。技術とデザインとネットの組み合わせ。初音ミクと同じですね。

お菓子だけでなく、食べ物全般がクール視されています。いちばんクールなのは日本のお母さんたちだと思います。キャラ弁が知られるようになりましたが、よりスゴいとぼくが思うのは、いろんな料理を家庭で出し続ける彼女たちの創造力です。スキヤキや天ぷらはもちろん、餃子、カレー、フレンチトースト、パスタ、ハンバーグ。和、中、印、仏、伊、独、多国籍です。腎臓パイのようなイギリス料理はお目にかかりませんが。

コスプレもそうなんですよね。自分で衣装を作って、自分で着て、参加する。作る力と表現する力、技術とデザインのドッキング。

面白そうじゃないですか? 見て学びに来ません?

先日、パリにて、「Tokyo Crazy Kawaii」というイベントを開催しました。日本のポップカルチャーや食べ物やファッションを持ち込んでビジネスにしようというものです。ぼくが委員長なんですが、いま日本にはクールジャパン担当大臣というのがいて、女性です、その方にゴスロリを着ていただきました。今後、パリだけでなく、世界各地で開催していきたい。大学としてそういう産官学の国際的な活動に貢献したい。

参加しませんか?

毎年、大学にて、ワークショップコレクションというイベントを開催しています。デジタル技術を用いて、子どもたちがコンテンツを創り、発信する活動を一堂に集めるもので、前回は2日で10万人が参加しました。国際的にも広げていきたく、そのプラットフォームを大学が引き受けたい。

参加しませんか?

アドビによれば、世界で最も創造的な国というアンケートで日本は36%で1位。アメリカは26%、イギリスは9%。最も創造的な都市では東京が30%。NYが21%、ロンドンは8%。

お待ち申し上げております。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2014年4月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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