「男の友情」が障害になる時 --- 長谷川 良

2014年05月08日 07:26

鳩山由紀夫元首相が中国を訪問し、日本政府の公式見解と異なる歴史認識を表明し、招待先の中国政治家たちには大喜びされたが、安倍晋三政権関係者は「困ったものだ」と呟くしかなかった。元首相の「言論の自由」を奪うことはできないからだ。


安倍首相と同じように、ドイツのメルケル首相は前首相のシュレーダー氏(首相任期1998年10月~2005年11月)の言動に対して感じているだろう。ウクライナ情勢が危機を迎え、武力衝突が発生、多数が犠牲となっている。ロシアのプーチン大統領へ毅然とした制裁を決定しようとしている矢先、この前首相は自身の70歳の誕生日祝賀会でプーチン氏を迎え、男の友情を世界にアピールしたばかりだ。シュレーダー氏がプーチン氏と抱き合って再会を喜び合っている写真が世界に発信されたばかりだ。メルケル首相は「困った奴だ」と呟くだけでは済まなくなるかもしれないのだ。

シュレーダー氏がロシア最大のガス会社、プロガス社の子会社「Nord Stream」AGの幹部に就任して以来、シュレーダー氏とプーチン氏は友情を深めてきた(シュレーダー氏のウクライナ問題に対する見解は「なぜプーチン氏を擁護するか」2014年3月29日)を参考)。

独週刊誌シュピーゲル誌電子版によると、サンクトペテルブルクのホテルでプーチン氏は約20分間、シュレーダー氏70歳誕生日の祝賀パーティーで演説をした後、夕食のため一緒に食事に出かけたという。

一方、メルケル首相は5月2日、ワシントン訪問の際、オバマ大統領に米国家安全保障局(NSA)盗聴問題でその責任を追及せず、ウクライナ問題の対応で欧米の一体化を演出してきたばかりだ。

シュタインマイアー外相がバルト3国を訪問し、対ロシア制裁で連携強化するために飛び回っている時、シュレーダー氏とプーチン氏の抱き合って再会を喜ぶ写真が世界に流れたわけだ。同外相はシュレーダー政権下で首相府や外相に就任している。すなわち、シュレーダー氏は昔のボスだ。だから、というわけではないだろうが、同外相は前首相の言動に対し批判を控えている。

メルケル政権に参加している社会民主党の党内には親露党員が少なくないが、ウクライナ危機がエスカレートしている時だけに、シュレーダー氏の振舞いに与党内でも不満が溜まってきている。建前上は「シュレーダー氏は政権とは関係がない。一個人に過ぎない」と説明してきたが、メルケル政権の信頼性にも悪影響が出てきた。

鳩山元首相は宇宙人であり、その発言に信頼性がないことは周知の事実だが、シュレーダー氏は依然、カリスマ性を有する人物だ。その発言はメディアにも直ぐに載る。プーチン氏がシュレーダー氏を手放さないのも当然だろう。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年5月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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