学校のゾンビ退治(1)利権としての家庭科 --- 山城 良雄

2014年05月08日 09:22

教育論というのは無責任なもんや。自己愛のないヤツはまずおらん。教育を受けたことのないヤツはもっとおらん。そやから俗流教育論の定番パターンは、「自分はすばらしい○○をした。いまの子供は○○をしていないから問題が多い。だから、○○をするべきだ」という構造になる。実にわかりやすいがな。

○○の部分は……食育であったり、武道であったり、ITであったり、農業体験であったり、体罰であったり……人間のやることなら、たいていのものが入る。スポーツ選手や芸術家が教育を語るときに、独自の○○を持っていないことは珍しいやろう。


それ自体は結構な話やけど、その際に「〇〇をするかわりに●●をやめよう」ということには、まずならん。〇〇業界と●●業界のケンカにはしたくないからな。で、結局は足し算の教育論になってまう。

そやけど、ヒマに見える子供にも時間の限界がある。1日24時間以上教育を受けられないし、1年はわずか365日、20年立てば成人になる。いろんな〇〇を足していくとどう考えても、24時間×365日×20年(計算は各自で)を超える。当然、優先順位という考え方が必須になってくる。〇〇の取捨選択。トリアージと言ってもええ。

取捨選択と言うても、圧倒的に捨てるものの方が多くなる。外国語ひとつをとっても、世界に100以上ある言語の中から、多くの場合、英語だけで手一杯や。生物であつかう植物も、音楽で歌う曲も、体育の種目も、切り捨てられるものが山ほどある。

何かを切り捨てる……日本人が特に苦手としていることや。結局、何もかも捨てきれずに三方一両損みたいな話になる。特に、一度カリキュラムになったものを、あとの改訂で完全廃止するのは不可能に近い。たとえば、ゆとり教育がヤメになっても、「総合的な学習の時間」は、小中学校のカリキュラムに宿便のように残っている。

ゆとり全盛期のころでさえ、「総合学習は何かをするには時間が足りないし、何もしないには時間が多すぎる」と、評判が悪かったのに、コマ数を半減させてなおかつ存続するとは、何を考えておるんじゃろな。

脱ゆとりなら、こんなもんザクっと廃止以外の選択肢はないのに、なぜか残っている。まさにゾンビや。トイレの花子さんほどの可愛げもない。ゾンビだらけの公立校のカリキュラムは公共事業と同じく利権の固まりになっている。さすがの民主党の仕分けも、ここへは切り込んで行かんかった。

今回から、ワシは学校のゾンビ退治をしようと思う。足し算ではなくて引き算の教育論。「●●をやめよう」というシリーズや。今回、まずは家庭科や。

以前、高校では女子だけが必修だったのが、国連から「男女平等に反する」と叱られて、たいした議論もなしに、男子まで必修になった。

しかし、予算や時間のことを考えれば、日本の学校制度導入以来、高校男子の家庭科がなかったために、どんな弊害があったかをシッカリとした説明してもらわん限り、男子全員に押しつけるのは筋が通らんがな。

文部科学省の担当者は、「いかに自分たちが不適切教育を受けて、そのことで人格上あるいは社会生活上、自分たちの世代の男性は問題のある存在なのか」について、とくと語っていただきたかった。もちろん、過去に女子に家庭科を強制的に学習させることで、どんなメリットがあったかの説明も必要やった。

もし、過去において「男子はやらなくても平気、女子は大いにメリット有り」となったら、「男女平等」自体が間違っているということや、国連の勧告なんぞ鼻で笑って無視すればええ。国連はんが、そないに男女平等にこだわるなら、まずはイスラムへ言ってもろいたいもんやで。

逆に、どうも女子の必修にもメリットがなさそうやとなったら、せっかくの国連勧告なんやから、この機会にビシっと家庭科廃止や。まあ、穏当を重んじるなら、男女とも選択教科にして、生徒個人の選択にゆだねれば話が分かりやすい。

実はそれまでも、高校の家庭科は男子も選択できたが、実質的に履修する権利はほとんどの学校で無視されていた。だから、この機会に完全選択制にすりゃええと思ったが、そうはならんかった。

問答無用の必修化。繰り返しになるが、この改革は、それまでの高校男子が受けた教育の欠陥を認めた上での話なんやろな。家庭科をやらんかった男が高卒の資格を持つことは、国の一大事なんやな。確認しとくで。

要は利権。土建やら発電と比べたら、家庭科利権なんぞカワイイものや。それでも、家庭科を廃止して具体的なメリットがある人間よりも、廃止すると具体的なデメリットがある(と言うより、飯の食い上げになる)ヤツの方が圧倒的に多いから、簡単にはつぶせん。

家庭科は基本的にややこしい教科や。その後、なぜか情報教育を取り込んでしまった。どういうリクツで、パソコンの操作が家庭科の一単元になったのか、ワシは知らん。まあ、想像はつくが、わざわざ書くほどの上等な理由やない。情報単元の内容に、昔懐かしいBASIC言語がある。なるほど、BASICでプログラムを書き始めると、すぐにスパゲティになるから家庭科なんやろな。

「きちんと数学や理科をやっておらんヤツに、妙なプログラミングを教えて欲しくない」、と言っている大学工学部のセンセはいっぱいいてはる。ちなみにワシ的には、きちんと数学や理科をやってへんヤツに教えて欲しくないものは、他にもある。たとえば、料理、裁縫、育児……。

一度出来上がった利権は、暴力以外の方法で解消できないとうのが、日本の民主主義の最大の欠点や。着実に破綻に向かっているのに、誰にも止められない年金なんぞ、その典型やろ。規模は小さいが、学校の中でも同じ事がおこっておると思う。

今回のシリーズで、ワシは学校内のゾンビ利権に喧嘩を売ることにした。日本中の子供が、効果の怪しい「ゾンビ教材」で潰されるのを防ぎたいからや。で、今回は家庭科やった。全国の中高教員のみなさん。次はアンタの教科かも知れんで。楽しみにしててや。

今日はこれぐらいにしといたるわ。

帰ってきたサイエンティスト
山城 良雄

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