日本の飲食業はもっとオープンになるべき --- 岡本 裕明

アゴラ

知り合いがバンクーバーに遊びに行き、滞在期間中、ランチ、ディナーと見事に調べぬき、その結果、行って良かったレストランの名前にはある共通点がありました。

それはサービス。

少なくとも私が過去それらの店に行った際にもうんと唸らせたその総合力はサーバーの力が大いにあった気がします。多分、日本では良いレストランは行きつけにならないとサーバーが心を開いたサービスをなかなかしてくれません。一見さんではほとんど無駄口も叩かず、仕事をしているという感じです。ところが北米のレストランの場合、初めて行ったレストランでもサーバーの腕の違いを感じるのは、まず、テーブルについているお客を見たうえでさっとその雰囲気を察し、もっともふさわしいグリーティングから入ります。


そして2時間なり3時間なりの食事の間、エンタテイメントとしての振付をしてくれるのです。もしもその日のディナーが最高だと感じたならばそれはサーバーがポイントポイントで微笑んだり、一押ししてくれたり、ちょっとしたささやきの中にそのグループを楽しませる功労者だったかもしれません。

執事という言葉をご存じでしょうか? 英語ではバトラーとも言いますが、主人やその家族のことを知り尽くしたうえで尽くしてくれる人とも言いましょうか? 「華麗なる一族」の高須相子は愛人でもありますが、教育係を通じたバトラーのようにも見えます。

高級レストランでは住み込みの執事のようなサービスは出来ませんが、なるべくそれに近いサービスをするよう努力しています。例えば北米でディナーを予約する場合、ネットで行うこともできますが、実は電話で予約した方が100%良いと思います。それはレストランのレセプショニスト(案内係)が大抵、今回の予約が特別な日かどうか、聞いてくれるのです。奥さんや友人の誕生日とか、結婚祝いとかなかなか、ネットでは表現できないことも電話ならばバトラーとしての役割を受けてくれるのです。あるいは食べられない食材などもその時にお願いできるのです。

例えばあなたがその街に初めて行くのであれば予約の際、その旨を伝え、地元の美味しいものを、と伝えておけば必ずそれは当日の担当のサーバーに伝えられています。サーバーはグリーティングしてくれた後、きっとあなたを満足させてくれるようなプレゼンテーションをしてくれるでしょう。

日本ではこのようなレストランは行きつけの慣れしたんだ店でない限りなかなか出会えません。私は初めてのお客様に対する「構え」と疑心暗鬼が見え隠れするのです。京都あたりに行けば「一見さんお断り」の店はあちらこちらにあるかと思いますが、まさに日本の閉鎖性を物語るものであります。

折しも日本は外国人観光客を年間3000万人受け入れたいという目標を持っています。それに対して日本人は構えてしまっています。私の友人が先日一人で韓国に行った際、焼肉屋に入ろうとしたところ、おひとりさまはお断りと言われどこも入れず苦労した、と言っていました。日本ではおひとりさまはOKかもしれませんが、お客から心を開かないとお店から良いサービスを期待できないのは残念なことです。

サーバーはお客様と話をすべきでしょう。その時、初めてお客様が求めていることが分かるものです。寿司をイスラム教徒に普及させるには醤油を使わず、ソース系や炙りなどで多様化させることが必要です。その際、ちょっとした会話と気配りでそのようなお客の好みは分かるものです。寿司屋の親父は長年の勘があると思いますが、それを標準化するレベルアップが日本のレストランには必要ではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年6月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。