日本農業の市場は北米にもある --- 岡本 裕明

2014年06月09日 11:15

私が日本で最も成長性のある産業は何か、と問われれば間違いなく、「農業」と答えます。繰り返し繰り返し伝えられている日本の農産物の高品質さ。日本でサラダを食べるとレタスやトマトの色や味がカナダのそれとはまったく違います。カナダのように高緯度の関係で採れる野菜の種類が少ない国ではアメリカやメキシコなど南からの輸入に頼るわけですが、流通も日本のように素早くないですから、当然ながら品質、鮮度は大幅に落ち、八百屋では「こんな屑野菜でも売る気か?」と思わせる商品でも客は喜んで買っていくのです。それはカナダ人は新鮮で高品質の野菜を知らないから、と言った方がよさそうです。


一方で日本の農業改革に関する延々と続く議論を見ていると「反対派」は農業開放により日本の農業敗退は確定的である、と決めつけています。その決めつけている人たちの多くは農協の幹部とその票田からメリットを受けた議員で論理的ではないボイスの大きさを武器とし、それはかつての自民党が胡坐をかいていた構図とも言えます。

今般、政府は全国農業協同組合中央会(JA全中)を3~5年でなくし、全国農業協同組合連合会(JA全農)は株式会社化する方針を決定しました。反対派を抑え、勢いに乗る自民党が「今だからできる」農業改革に踏み込んだという点で評価できると思います。安倍政権はこの1年半の間に実にたくさんの政策を進めてきていますが、農業に関してはTPPという一事象を焦点にしていたため、日本の農業改革を通じた構造的変化、体力蓄積といった部分もTPPの陰に隠れがちだった気がしますが、着実に改革は進んでいるということです。

農林水産大臣は常に政権と農水内部のとの軋轢で苦戦し、もっとも多くの大臣を輩出している省庁の一つです。ちなみに2000年代になってから私の数える限り23人の農林水産大臣がいたはずです。ざっくり半年に一度、顔が変わっているとすればこれで何ができたか、と言われても何も反論できないでしょう。その中で現大臣の林芳正氏だけは第二次安倍内閣発足時から一度も変ることなくその席にいるということは特筆すべき事実であるのです。農業が大きく変化しつつあることは政権の安定感がもらたした賜物とも言えましょう。

農協の歴史を振り返れば戦後の農地改革、つまり食糧不足の日本に於いて安定的な農作物の供給、そして小作農の優遇であり、それを束ね、システム化させる役割を果たしたのが「ザ農協」であります。そこには農機具の手配やローン、住宅、農業教育、出荷を通じた販売まで一気通貫のサービスが存在し、農家は農協なしに生きていくことができない巨大なるムラ社会を作っていました。言い換えれば筋肉が落ちて歩けない人間に農協は車いすを用意します、と言い続けてきたわけです。決して、歩行練習をして一人で歩けるようにすることはしませんでした。

さらに全国700の農協同士の競争もあり、新たなる農産物をいかに囲い込み、その努力をおらが村にとどめるかという閉鎖社会を作り上げてきました。だからこそ日本にコメの種類は登録ベースだけで400以上の存在する結果となっているのです。まさに無駄な農協同士の競争をし続けてきたともいえるでしょう。

日本の農産物がなぜ高いか、様々な理由があるでしょう。ですが、非効率性の賜物とマーケティングの欠如は否定できない事実です。第六次産業と称する農業製品の加工、流通改革は例えばTPPにより、カナダへの農産物のアクセスができるということです。アメリカが後ろに控えているカナダの市場に誰も入り込むなど考えていないはずです。香港で日本の高い農産物が売れているというニュースは時々ありますが、高品質を求める大市場は北米にあることを忘れていませんか?

私がもしも20代の若さで起業をするなら植物工場をロシアやカナダの僻地に作りたいと思っています。それぐらい新鮮で品質の良い野菜は手に入りにくいものなのです。日本の方は知らぬ間に当たり前のように素晴らしい農産物を享受できるのですから実に幸せだと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年6月9日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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