渋谷駅の利用者減は東急の渋谷「私物化」が原因か

アゴラ編集部

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渋谷、という街は、敗戦直後、都内の繁華街の例に漏れず、ドヤ街でした。「渋谷」という地名の通り、また実際に行けばわかるんだが、JRの駅のあたりは谷底になっていて今は一部が暗渠になっている渋谷川などが流れていた。NHKや東急ハンズのほうへ行くと宇田川町という地名があり、この宇田川も渋谷川の支流です。

高度成長期になり、東京の人口が急増し始めると郊外の住宅地が開発されます。東急や西武、東武などの私鉄が沿線を伸ばした後背地に宅地を造成開発し、旧国鉄のターミナル駅とつなぐ戦略でしのぎを削ったのもこのころです。渋谷もご多分に漏れず、東急と西武の争奪戦の舞台になりました。パルコなどで攻勢を強めていた西武が衰退し、今の渋谷は実質的に東急の「牙城」になっている。


ライバルがいなくなった渋谷を東急が「私物化」し始めるのは必然、と言っていいでしょう。東急文化会館を渋谷ヒカリエにし、東横線を延伸させ、地下駅化させ、246号の向こう側にセルリアンタワーを建て、ジメついた谷底の渋谷を「再開発」しようとしているわけです。しかし、少子高齢化も影響しているんでしょう。「若者の街」という渋谷の役割とイメージが変わりつつあります。

JR東日本(東日本旅客鉄道)が先日発表した2013年度の乗車実績によると、渋谷などターミナル駅や山手線各駅の利用客が減ったようです。渋谷駅の一日平均の乗車人数は前年に比べて約8%減の3万3470人も減ったらしい。JR渋谷駅は、19年連続で新宿と池袋に次ぐ3位をキープしていたんだが、これで5位になってしまった。一方で4位に浮上したのが横浜駅です。

ターミナル駅の利用客数の変化を眺めるといろんな背景が想像できるんだが、JR渋谷駅が大きく利用者を減らしている理由に東急線が副都心線で相互乗り入れしたため、との分析も多く目にします。JR東日本の広報部も表題の記事も同じ見立て。当コーナーでも以前「渋谷駅のカオスはいつ解消される」というエントリーを上げたことがありました。

この記事で指摘したエスカレーターの数は、原宿寄り出口で一機増えた程度です。依然として真ん中のJR側出入り口に一機しかないエスカレーターは、時間によって上下逆にしたまま。横浜在住の当方も渋谷駅は目立って使わなくなりました。当然、東横線に乗る頻度も減っている。「渋谷ラビリンス」は解消されず、東急の「私物化」が進めば独善的な開発が続けられるんでしょう。

利用客が減っているJR渋谷駅に比べ、東急電鉄の渋谷駅のほうは一日平均約44万人と前年約43万6000人から1.2%の増加になっています。また、6月6日から東急全線と他社線乗り降り自由で横濱中華街の特別食事券がセットになった「旅グルメきっぷ」なるサービスを始め、さらに「渋谷よりみチケット」なるサービスを6月26日から12月25日まで行っています。これは東横線横浜駅~田園調布駅間、東急多摩川線の各駅から田園調布駅・目黒駅経由のPASMO大人通勤定期券を使っている乗客に、東横線渋谷駅から田園調布駅間を1カ月500円で期間中何回でも利用できるというチケット。渋谷駅の迂回客増加を止めようとする苦肉の策なんでしょうか。

EconomicNews
東急東横線沿線住民がそっぽを向いた「渋谷駅」。JR渋谷駅利用客激減が意味するコトは?


3 reasons the teen summer job is vanishing
Vox
米国では夏のシーズンに若者の仕事が減っているようです。夏休みにバイトをするのは洋の東西を問わず、というわけで、米国では1990年代以降、7月に働く若者の数が減り続けている。これは7月に限らない傾向なんだが、より高齢の労働力が彼らを排除している、という背景があるらしい。さらに若者自身の労働意欲が減退し、学校の勉強が忙しくてバイトしているヒマがなくなりつつある、という事情も関係している。米国では9月が入学シーズンなのでサマースクールへ入学して「就学プログラム」を受講する若者が増えているようです。米国の話なので日本の大学生には当てはまらないことも多いんだが、若年層の労働市場と労働意欲の問題も洋の東西を問わなくなっているんでしょう。

国内初の当年予測 2014年のがん罹患数、死亡数予測公開
国立がん研究センター
このリリースによれば、天気予報のように「今年のがん患者数や死亡者」の「予測」が発表されるようになりました。従来は、数年遅れで数値が発表されていたんだが、現在進行形や予測、といった形で具体的な数値が公表されるのは国内初めてらしい。これによれば、2014年のがん罹患数は約88万人、がんが原因の死亡数は約37万人になります。死亡数では肺がんが圧倒的に多く、膵臓がんが増えているようです。がんは早期発見早期治療が一番です。定期的な健診に行きましょう。

カンヌのPRゴールド受賞した「ライスコード」はなぜ世界で評価してもらえているのか?須田和博さんの分析は『新しい普遍』最古×最新がそこにあるからだ。
坂井直樹のデザインの深読み
政府も積極的に米食を推進したり、和食が世界遺産になったりしてるんだが、なぜかパン食が増え続けているようです。当方はよほどのことがない限りパンを食べない。パンはやはり日本人が作ると美味しくないと思うからです。なぜなら、国内で美味いパンを食べた経験がないからでしょう。小さい頃から慣れ親しんできた穀類は米です。このブログで紹介されている試みは、米食の再発見につながるかもしれません。

腸内細菌叢と免疫系との間に新たな双方向制御機構を発見
理化学研究所
地球上で最も重量の多い生物種は何か、といえば細菌類です。我々ヒトの体内には「共生菌」と呼ばれる「善玉」と食中毒などを引き起こしかねない雑菌などその他の「悪玉」がいるんだが、連中は口腔内から肛門までの消化器官に棲息しています。理研と東大の研究チームが発表したこのリリースによれば、これら腸内の共生菌とヒトの免疫系の関係がわかったらしい。免疫系は「他者」を排除する機能を持っています。しかし、共生菌は排除されない。その秘密がわかれば、ピロリ菌など、消化器官の細菌類が影響する疾患の予防や新たな薬の開発などに貢献する、と書いています。
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腸内細菌叢と免疫系との間の双方向制御機構。免疫系に異常が生じると腸内細菌叢のバランスが乱れ、その結果、自己免疫疾患やアレルギー疾患、肥満症などの病態を悪化させてしまうかもしれないことがわかった(提供:理研)


アゴラ編集部:石田 雅彦