なぜ人手不足になるの?(フォロー版)

2014年07月23日 16:02

3ヶ月前のアゴラこども版に、今ごろまたアクセスが集まっているので、その後の動きをフォローしてみよう。


これはもともと黒田総裁の「物価が上昇している局面においては、基本的に、賃金の上昇率が物価の上昇率を上回って推移している」という話が因果関係を取り違えているという話を説明したものだが、その後の動きは上の図のようになった。黒田氏は

物価が上がる→それ以上に名目賃金が上がる

という因果関係を想定しているようだが、そんなメカニズムは経済学に存在しない。これは「労働需要が旺盛で名目賃金が上がったとき、それよりゆるやかに物価が上がる」という因果関係を逆に見たものだ。浜田宏一氏が想定しているのは

物価が上がる→実質賃金が下がる→労働需要が増える→失業率が下がる

という経路で、図のように現実にはこっちが起こっている。失業率は3.5%で、「超完全雇用」といってもいい。その理由は簡単だ。インフレで実質賃下げが行なわれたからだ。5月の有効求人倍率は全体では1.1倍だが、建設が3倍以上、外食が2倍以上なのに対して、一般事務は0.3倍だ。上がる産業と下がる産業が併存し、平均賃金はやや下がっている。まだ余剰人員が多いのだろう。

要するに黒田総裁の想像するような「物価が上がって労働者も大変だから賃金を上げよう」というやさしい経営者はいないのだ。製造業の実質賃金はアジア諸国に比べるとまだ高いので、ゆるやかに下がってゆく。建設や外食などの国内産業では、労働人口の減少がきいて人手不足になっているが、賃金を上げても3Kには人が集まらない。

このように人手不足が続くのに賃金が上がらないのは、エネルギー価格や輸入インフレの供給制約がきいているからだ。GEPRでも紹介したように、鋳造などのエネルギー多消費産業は存亡の危機である。円安でエネルギー価格が上昇し、収益が悪化しているので雇用が増えないのだ。

このように賃金が下がりすぎると、消費が減退する。上の図からもわかるように、消費不況の兆候がみえている。これは消費増税の一過性の影響かもしれないのでまだ即断はできないが、コストプッシュ・インフレは悪影響しかなく、支持率の落ちてきた安倍首相にも不吉な兆候だ。まず原発を正常化し、供給制約をなくすことが大事だ。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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