短期で投機な投資家を歓迎する日本市場の異常 --- 岡本 裕明

2014年07月29日 10:24

アマゾンの4─6月期の決算が散々なものとなったことを受け、投資家やファンドマネージャーからバッシングの声が上がっています。「この会社は投資ばかりして株主に還元することを忘れている!」と。それに対してCEOのジェフベゾスは「もっと長期的に見てほしい」と訴えているそうです。

金融緩和の恩恵を受けてお金にお金を稼がせる傾向が強まったのは洋の東西を問いません。そこはイージーマネーに群がる貪欲な人々が溢れています。


日本の株式市場。私も指摘させていただいたように東証の10銭刻み変更が個人投資家のポジションを大きく変えようとしています。7月28日月曜日のミクシー株。株価は13%以上も上昇し、新高値を付けました。特に買い材料があったわけではなく「何気なく暴騰してしまった」というのが正直な印象でしょうか? この会社、どう考えても現在の株価の半分以下の株価価値しかないはずですが、ネットを駆使する個人投資家たちは値動きの荒いこのような銘柄に熱い注目をし続けています。同社株はもはや歴史に残る大相場としても過言ではないのですが、それを支えるのが熱烈なサポーターである「短期」な個人投資家なのです。そして同社の人気ゲームは株価も人気ゲームのごとく短期間に10倍に駆け上りました。

今日の日経電子版には二つの注目記事があります。

一つは「値動き 債券並み 個人が去った『みずほFG株』」。もう一つが「円ドル取引半減、19年ぶり低水準 東京市場の上期 」というものです。みずほFG株についてはこのブログですでに指摘させていただいていました。一方の為替取引の低迷については非常に興味深い記事であります。1─6月の円/米ドルの直物取引が46%減となり、7月もこのままで行けば1995年以来の水準。また、個人を主体とするFXについても3割減の水準であるというのです。

理由は値動きが少ないことで魅力がなくなり、新興企業の株取引にシフトしているというのです。

為替については値動きは安定している方がよい、というのが一般ビジネス社会での考えですので常識的にはこの凪のような円ドル相場はポジティブなはずですが、お金にお金を稼がせる短期筋はこれでは稼げないというわけなのです。ミセスワタナベの動きはもはやトレーダー達のレーダーからは外れてしまう存在となってしまうのでしょうか。

機関投資家、金融機関の自己売買部門、それにここにきて改めて注目されているHFT(High-frequency trading)は東証の出来高の半分以上を占めていると言われています。HFTはアルゴリズムを使ったプログラム売買と超高速トレードにより売買板の枚数勝負といってもよいでしょう。だからこそ、10銭刻みのみずほ銀行株はHFTにとっては絶好のチャンスであるわけです。欧米ではこのHFTに対して規制の声も上がる中、東証はそんなモンスターを三顧の礼でお迎えしたわけです。

首相官邸は株価対策に躍起になっているとも言われていますが、それは政権の成績であるとともに自民党が安定政権を維持するための一種の札束のバラマキと言われても致し方ありません。その一方で日本でいわれ続けているのは「本当の投資家を育てよう」ではなかったのでしょうか? NISAの拡充計画もその一環であると私は認識しています。現実の世界は短期筋が市場をかく乱し、本来あるべき投資家を育てる環境がなかなかできないのは東証の決定がトリガー(引き金)だったと思いますが、もともとは世界に蔓延する金融緩和が招いた「短期」な人々たちの驕り以外の何物でもない気がいたします。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年7月29日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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