共和党、不法移民に厳格な法案を可決─WSJ紙は猛批判 --- 安田 佐和子

アゴラ

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共和党は米7月雇用統計が発表された同じ日の遅く、異例にも党員集会で厳格な不法移民対策案を通過させました。

同案には「ドリーマー」と呼ばれる不法入国した未成年者から権利保護を剥奪するとともに本国へ送還し、米国=メキシコ間での大規模越境者問題を食い止める内容が盛り込まれています。夏期の休会直前に、異例の可決となりました。民主党が握るため、法案が発効する見通しは極めて低いんですけどね。

当初はベイナー米下院議長(オクラホマ州)が率いる下院では国境間警備費用に6億4800万ドル(ホワイトハウスが要求した37億ドルは ’白紙の小切手’ 同然として拒否)、2008年に成立した法案の調整で不法移民の流入を抑制する方向で傾いていたものの、ティーパーティー派で似非フィリバスターで知られるテッド・クルーズ米上院議員(テキサス州)、ジェフ・セッションズ(アラバマ州)の働きかけで保守化が進んだかたちです。

これに痛烈なパンチを放ったのが、他ならぬ保守寄りのウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙。タイトルからして「共和党の国境問題スペクタクル(GOP’s Border Spectacle)」と皮肉全開の本文では、中間選挙では米下院だけでなく米上院でも勝利が期待できるところを「出来る限り多くの不法移民を本国へ送還させることが最重要政策かのような印象を与えた」と舌鋒鋭く攻撃しております。

WSJ紙が中間選挙をにらみ歯ぎしりするには、ちゃんと根拠があります。7月28日付けの記事「共和党が米上院で多数派を取るには(Graphics: How the GOP Could Take the Senate)」によると、米上院で共和党が過半数を奪取する可能性は決して小さくはない。

現在の米上院では53議席が民主党で多数派となっており、共和党は45議席、無所属は2議席。11月4日実施の中間選挙で共和党が米上院を奪回するには、6議席必要です。

今回の中間選挙では、民主党のうち34議席、共和党は30議席が改選に当たりません。そのうち23議席は民主党、共和党いずれにとっても安全な椅子とされています。この段階で、民主党は44議席、共和党は43議席を確保しているかたちです。

残りの13議席が運命を握るなかで、現職が民主党のモンタナ州、サウスダコタ州、ウェストバージニア州の3州では共和党候補が勝利する見通し。2012年大統領選でロムニー候補が勝利しつつ、現職が民主党である4州(アラスカ州、アーカンソー州、ルイジアナ州、ノースカロライナ州)のうち2州奪えば5議席増やせます。ここでの議席数は民主党が44議席、共和党が48議席。さらにマコーネル米上院院内総務が座るケンタッキー州を確保すれば49議席。あとはコロラド州、ニューハンプシャー州、ジョージア州のいずれか2州で得票できれば米上院で過半数の51議席を獲得できる公算なんです。

米上院で注目すべき州は、グレーに塗られた部分で示しています。

senate race
(出所 : WSJ)

WSJ紙が調査した選挙資金、世論調査での平均支持率は、以下の通り。

▽アラスカ州、2012年はロムニー候補に軍配

マーク・ベグリッチ(民主・現職)、210万ドル、42.3%

ダン・サリバン(共和)、170万ドル、42.3%

▽アーカンソー州、2012年はロムニー候補に軍配

マーク・プライアー(民主・現職)、410万ドル、43.5%

トム・コットン(共和)、280万ドル、46.3%

▽コロラド州、2012年はオバマ米大統領に軍配

マーク・ウダル(民主・現職)、570万ドル、44.4%

コリー・ガードナー(共和)、340万ドル、43.4%

▽ジョージア州、2012年はロムニー候補に軍配

※サクスビー・チャンブリス議員(共和)は引退

デビッド・パルデュー(民主)、80万ドル、43.7%

ミシェル・ナン(共和)、230万ドル、42.0%

▽アイオワ州、2012年はオバマ米大統領に軍配

※トム・ハーキン議員(民主)は引退

ブルース・ブラーリー(民主)、270万ドル、43.3%

ジョニー・アーンスト(共和)、110万ドル、44.0%

▽ケンタッキー州、2012年はロムニー候補に軍配

ミッチ・マコーネル(共和・現職)、980万ドル45.8%

アリソン・ランダーガン=グリムス(民主)、620万ドル、44.3%

▽ルイジアナ州、2012年はロムニー候補に軍配

メアリー・ランドリュー(民主・現職)、620万ドル、45.7%

ビル・キャシディ(共和)、590万ドル、46.7%

▽ミシガン州、2012年はオバマ米大統領に軍配

※カール・レビン議員(民主)は引退

ゲイリー・ピーターズ(民主)、330万ドル、42.3%

テリー・リン・ランド(共和)、430万ドル、36.5%

▽モンタナ州、2012年はロムニー候補に軍配

ジョン・ウォルシュ(民主・現職)、70万ドル、37.0%

スティーブ・デーンズ(共和)、170万ドル、49.5%

▽ノースカロライナ州、2012年はロムニー候補に軍配

ケイ・ヘーガン(民主・現職)、870万ドル、45.3%

トム・ティルス(共和)、150万ドル、42.3%

▽ニューハンプシャー州、2012年はオバマ米大統領に軍配

ジーン・シャヒーン(民主・現職)、510万ドル、50.3%

スコット・ブラウン(共和)、150万ドル、39.8%

▽サウスダコタ州、2012年はロムニー候補に軍配

※現職のティム・ジョンソン議員(民主)は引退

リック・ウェイランド(民主)、40万ドル、29.5%

マイク・ラウンズ(共和)、80万ドル、44.0%

▽ウェストバージニア州、2012年はロムニー候補に軍配

※ジェイ・ロックフェラー議員(民主)は引退

ナタリー・テナント(民主)、150万ドル、38.5%

シェリー・ムーア・カピート(共和)、490万ドル、48.5%

共和党が多数派の米下院は7月末、オバマ米大統領に対し職権乱用で提訴する決議を案を可決しました。せっかくオバマ米大統領の支持率が最低近くをさ迷っているというのに、共和党は何だか迷走気味。無党派層を取り込んで勝利を確実にしなければならない今こんな状態では、WSJ紙が怒りの鉄拳ならぬペンを振るうはずです。

(カバー写真 : Speaker John Boehner)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年8月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。