動き出す為替、その影響を探る --- 岡本 裕明

2014年08月06日 11:38

ここしばらく膠着状態が続いていた円ドルの為替がやや円安に動きが出てきました。一般的には膠着後の動きは一方向に大きくなると言われており、円安に果たして本当に走り出すのか注目しています。

市場の見方は円安が進むとする予想が多いようです。理由はアメリカが資産買い入れプログラムを今年中にも終了させ、来年のしかるべき時期には利上げが視野に入ってきたというのが主たるポイントでしょうか? それに対して日本は「異次元の緩和」をまだ続けている最中であります。

私はただ、この意見にあまりに傾注するのはどうかと思っています。


まず、アメリカの金利ですが、市場が期待するように来年の半ばごろに本当に金利が上がるほど景気が回復しているのかどうか、これが懐疑的であります。失業率は改善していますが、賃金は上がっていません。自動車は売れていますが、これは与信を下げた上にその債権を販売すると仕組みが自動車販売を押し上げています。決して健全で自然な需要とは言えません。むしろ、本当の消費動向を示しているのが当局からの目が厳しい住宅販売でそれがイエレン議長の言う「スローなペース」であればアメリカの自然体の経済は相対的に見ればそれほどではないのかもしれません。

それともう一つは金利とは経済成長率にリンクしていると言ってもよいわけですが、成熟しているアメリカ経済が今後再び輝きを取り戻し高度成長をするとは思えず、それならば仮に金利が上がっても知れているとみています。つまり、日本と同じ、低金利からの脱出は簡単ではないと考えています。

一方の日本。黒田日銀総裁の強気ぶりには言葉を差しはさむことすら憚れますが、留意しなくてはいけないのは異次元の緩和をこれ以上進める積極的理由はないということです。それはインフレは思惑通り改善しているとする黒田総裁本人が認めているからです。あえてそれ以上に金融緩和を行うのならばそれは消費税の10%引き上げをにらんだ刺激以外の何ものでもなく、黒田総裁はあくまでも安倍首相の消費税10%プランを実行するための重要部隊であると考えた方がよさそうな気がします。

多分ですが、アメリカは日本がこれ以上の異次元緩和をすることを望んでいないはずで、日本も本来であれば今後はむしろ出口戦略のタイミングを計ることになるべきではないでしょうか?

仮にこの見方がわずかでも正しいとすれば円安のシナリオは崩れかねません。

もう一つは円安をもはや「良」としない変化であります。輸出はほとんど増えませんでした。輸出企業の利益増大と輸出数量の拡大の違いがきちんと区別されておらず、円安は日本経済を救うとし、喜び踊ったのでした。結果は輸入価格の上昇。ここにきて明らかに見えてきたのは材料費の高騰に伴う値上げです。今までは人件費高騰でした。明らかに値上がりの体質が変化しています。これは消費者にボディーブローのように効いてくるはずです。

それを考えればあまり派手な動きのない現状の為替水準は確かに居心地が良かったはずなのです。

更に最近動き出したBRICSによる開発銀行設立の動き。この目的がIMFのBRICS版という説明よりも為替のドル除外化目的の可能性が大いにあり、ドル基軸の権威が変化するかもしれない点は一応頭に入れておく必要がありそうです。「開発銀行」をフルファンクションさせるには数年はかかるかと思いますが、中期的にドルの威信がどう変化していくか注目です。

アメリカ自体、大統領の弾劾という話も出ている中で早くもオバマ後のアメリカを視野に入れた動きとなりそうです。民主党の候補は圧倒的にクリントン女史。共和党はブッシュ弟という声もありますが、このあたりも為替を占ううえでは重要な判断材料になることでしょう。

もっとも市場関係者は「いつの話になるかわからないそんなことよりも1時間後の相場の話」と軽くいなされるのでしょうけど世界の体制が安定から少しずつ変化していく感じを強く持つ今日この頃です。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年8月6日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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