朝日新聞の得意な思考停止ワード

2014年08月09日 13:01

朝日新聞の慰安婦検証記事は、過去の誤報を訂正したのはいいが、素直に「当社の慰安婦報道はすべて嘘でした。すいません」と謝罪すればいいのに、「女性の尊厳」がどうとか説教を始めたので、「開き直りだ」と批判を浴びている。このように誰も否定できない言葉で思考停止させるのが、彼らの常套手段だ。それをあげてみよう。

  • 女性の人権:売春がいい仕事か悪い仕事かといえば、いいという人はいないだろう。それを現代の基準で「性奴隷」とか「人権侵害」と非難するなら、吉原はもっと大規模な人権侵害だった。公娼はひとりひとり登録して、警察が管理していた。それが人権侵害というのは話が逆で、公的に衛生管理して彼女たちの生命を守ったのだ。

  • 生命の尊厳:原発がなくてすむなら、ないほうがいいい。しかし日本経済は、原発を止めたままでやっていけるのか。原発を止めたら化石燃料で、大気汚染と地球温暖化が起こる。大気汚染によって、全世界で毎年700万人が死んでいる。
  • 子供の未来「プロメテウスの罠」の鼻血の記事にみられるように、「子供の命を気づかう母親」というのが、朝日新聞のよく使う聖なるアイコンだ。子供の発言を利用して、「福島は恐い」などと大人のいえないことをいわせる。
  • 可能性はゼロではない:強制連行の証拠はないが、元慰安婦は証言しているので連行された可能性はゼロではない。福島で放射線障害は出ていないが、これから出る可能性はゼロではない。あす東京に大地震が来て朝日新聞東京本社が全壊する可能性もゼロではないから、地震のリスクをゼロにするために閉鎖したほうがいい。
  • 経済性より安全性:官僚や財界は国民の生命より自分たちの利益を考えているから、朝日のような正義の味方が国民の生命を守るという。しかし坂本龍一氏のような高度医療は、金がなければ受けられない。所得が今の1割だった江戸時代には、平均寿命は40歳以下だったのだ。

こういう思考停止ワードに共通しているのは、美しい建て前だということだ。世の中にはリスクも便益もあるが、リスクだけを見て便益を否定したら貧しくなり、結局は別のリスクが増えてしまう。それを見ないで、朝日の社会部が「リスクはゼロじゃない」と建て前を振り回したら、それに抵抗できない人は黙ってしまう。

これは戦前に朝日が使った「統帥権の干犯」や「国体の本義」などのスローガンと同じで、具体的な中身がないが、それを疑うと「非国民」として社会から排除される。こうしてみると、国民を戦争に巻き込んだ朝日新聞のレトリックは、21世紀になっても変わっていないことがわかる。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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