金曜日(8月8日※編集部注)の東京市場は午前10時に激震となりました。オバマ大統領がイラク北部のイスラム過激派「イスラムの国」に対して空爆を許可したためです。日経平均は崩落状態となり、終値ベースで454円安と実に2.98%の下げを記録してしまったのです。
この空爆許可が市場に与える影響はブルームバーグや日経などメディアも大きな影響があるという趣旨の報道をしていましたが、実はこの大幅下落は日本だけでした。
香港市場は0.23%の下落、シンガポール0.76%下落、イギリス0.45%下落、ドイツ0.33%下落、フランス0.05%の下落です。その上、ニューヨーク市場は1.13%の上昇と大幅高になっています。市場の下落の主因はロシアの経済制裁の直接的影響を重視したものであり、空爆許可は二の次であります。北米でもニュースとはなっていますが、比較的扱いは小さ目であります。
東京市場だけの下落は一体なんだったのか、ということになります。
多分ですが、先物主導の売り崩しでプログラム売りが加速され、個人のろうばい売りが出たとみるのが正しそうです。言い方を変えれば東京市場は薄氷の株価であるともいえるのです。ほかの市場が比較的冷静であり、特に時差があまりないアジア市場でも下落幅が限定的だったことを考えれば東京市場の腰の弱さを露呈したともいえます。言い換えればプロや海外の短期筋が主流の投資マーケットが形成され、欧米市場のように腰の据わった長期投資の割合が少ないともいえます。これはとりもなおさず、日本に株式を長期投資として考える素地がまだまだ育っていないともいえるのではないでしょうか?
金曜日の北米マーケットが終盤に差し掛かっている今の時点で日経先物は200円高となっていますから週末に新たなるニュースが出ない前提で見れば日経平均は大幅な値戻しが月曜日に期待できるのではないでしょうか?
ただ、新たなるニュースが出ない限りであって、もはや明日のことすら読めない状況にあることは事実です。
地政学的には今日、金曜日の時点においてはイラク問題が最重要、次にハマス/イスラエル問題。ウクライナ問題はロシアが緊張緩和の動きを示したということでテンションが下がっています。但し、これも日替わりメニューのようなものですから全くあてにはなりませんが。
ではオバマ大統領。ふとわいてきたような今回の空爆の許可でありますが、カナダの新聞を見る限りは共和党に押された形に見て取れます。つまり、オバマ大統領としてはしぶしぶの許可だったというトーンであります。北部イラクに取り残され、水も食料も尽きたアメリカ人を救うためとしていますが、もともとオバマ大統領はイラクからの撤退が大統領としての最大のテーゼでありました。何のためにここまで努力してノーベル平和賞受賞者としての看板があったのでしょうか? それとも民主党からこのままでは中間選挙に勝てないというつるし上げがあったのでしょうか?
ウォールストリートジャーナルには「イラク政策を転換した」とあり、イラク戦争を終結させるために立候補したオバマ大統領にとっての苦渋の選択だった趣旨の記事が掲載されています。
この判断には二つの結果をもたらすでしょう。
一つはオバマ大統領の外交的手腕の評価は失墜したということ(二か月間、イラクに派遣していた軍事顧問団を放置した結果、今回の状態に陥ったと共和党は主張するでしょう)。
アメリカは再び、テロとの直接的戦いを余儀なくさせられる可能性が高まったこと。
グローバル化が進むとモノ、ヒト、そしてカネが地球儀ベースで動きます。そして、あらゆる事件や紛争がインターネットという手段を用いて地球上の隅々まで瞬時に情報をもたらします。今、我々が必要なのはその情報をどう料理するか、ということであります。そう考えると金曜日の東京市場は新たなこの材料を調理も消化もできず、あたふたしてしまったというのが正しい表現なのでしょうか? 地球儀レベルで見る日本の弱さとはこの辺りにありそうです。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年8月9日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。