知財計画2014年策定の大詰めの会合にて。角川さんと川上さんが並んで座っているのは、五十音順だからです。
2014計画、最後は座長一任とされました。ぼくの総評コメントです。
コンテンツ政策はファンド設立、著作権法改正など各種施策が講じられてきていますが、成果を上げるのはこれから。今年は更に前進すべく、デジタルネット基盤整備とソフトパワー強化、国内基盤と海外展開の2本柱を議論。それぞれ深堀りのため、アーカイブと音楽のタスクフォースを設置しました。
議論の結果、クラウドサービス、オープンデータ、教育情報化、アーカイブ利活用、音楽データベース整備といった意欲的項目を挙げることができました。これをどう実行に移すかが問題。政権の実行力を強く期待する次第です。
一方、事態は動いている。KADOKAWA・DOWANGO報道には驚きましたが、IT・コンテンツ産業は世界的にもまた次のステージに進む気配です。他方、TPPの交渉模様も報じられており、危機感を抱きます。その進展次第で知財計画も根本的な影響を受けます。知財計画をまとめ、実行を期すと同時に、事態の変化にも対応できるよう身構えておきたいと考えます。
さて、その会合はやはり簡単には収まらず、数々の発言がありました。
Google野口委員:ビッグデータが日本独自のプライバシー規制をしくことを危惧する。営業秘密保護強化に逆行。ITと知財を統合した政策を講ずべき。
→重要な指摘です。
瀬尾委員:アーカイブにおいて国会図書館の位置づけが重要だが、国会のものなので政府計画に言及されない。政府を超えたヨコ串を考えることが必要。
→別の議論の場が必要ですね。
角川委員:クールジャパン特区を作り、海外からの来訪者が行ける場、インバウンドの受け皿を作るべき。
→竹芝でも考えてみたいです。
角川委員:かつてジャポニズムは政府支援もなく立ち枯れた。クールジャパンも21世紀のジャポニズムになりかねない。
宮川委員:グローバルな違法ダウンロード対策には、権利者-ISP連携によるブロッキングが効果的。より踏み込むべきだ。
川上委員:日本と海外企業との競争に不公平が生じないようにすることが最大課題。その視点が欠けている。海外サーバに日本の制度をどう適用するかをまず考えるべき。
→ぼくもこれが今の最大課題だと考えます。本件について、山本一太大臣も本件をIT政策の文脈で取り扱うと確約しました。
重村委員:現地向けサイトを作って継続的にプロモーションをすることを支援する施策を希望する。
→発信サイトの支援は効果的・効率的だと考えます。ぼくも以前から主張していますが、なかなか施策に結びつきません。
斉藤委員:各企業の取組が点から線、面に広がるようにしたい。成功例を作ることが効果的。
→御意。
迫本委員:今回かなり政策が明確化・具体化した。PDCAで継続的に見ていく仕組みが大切。
→御意。
喜連川委員:教育IT化が遅れている。オンデマンド教育を容易にすべく著作権制度を変えたい。
→ぼくもその議論を進めてもらいたいと考えます。
喜連川委員:アカデミックなクラウド・ネットワークの構築が必要。ビッグデータ対策は遅れている。後押しが必要。
久夛良木委員:現実のパブリックデータとソーシャルメディアのリアルデータを集めて遊ぶゲームが登場しているが、これは日本では生まれない。それはなぜか、を考えるべき。
→考えます。
大崎委員:ドラマ、映画、音楽の人材を育成する拠点を設けるべき。
→竹芝を拠点にしたいと思いますが、大崎さんの意中は沖縄ですかね。
山本一太大臣:検証とフォローアップが重要。知財戦略を成長戦略・経済問題としてとらえる。
→実行のほど、お願い申し上げます。
知財計画2014の内容ですが、コンテンツ関連は「デジタルネットワーク基盤整備」と「ソフトパワー強化」の2本柱です。
デジタルネット基盤整備では、クラウドサービス促進、プラットフォーム構築、オープンデータ・ビッグデータ、教育情報化といった重要項目を掲げました。
教育情報化は、デジタル教科書の制度整備について本年度中に課題整理、2016年度までに措置、と時限を明記。遅い、という不満はあるけれど、前進です。
また、アーカイブについてタスクフォースを設けて深堀り。2020年を目標として利活用を進めます。そこでは孤児著作物の利用促進措置が論じられています。超重要課題です。アーカイブ対象として、映画、音楽、マンガ、アニメ、ゲーム、デザインを明記しました。ポップカルチャーに力を入れたいところです。
ソフトパワー強化について。aRma、J-LOP、クールジャパン機構など施策は積み上がったが、海外売上/国内市場は3.8%とか。低下してますよね。ううむ。
音楽タスクフォースを設けて海外展開策を検討しました。海外拠点の構築、データベースの整備、海外市場の調査、権利保護の強化、人材育成など数多くの項目。音楽をモデルとして海外展開の成果を上げたい。
特に、「コンテンツに関するデータベースの構築、国際的に共通化されたコンテンツの管理システムの導入に向けた民間での取組が促進されるよう、必要に応じて支援を行う」という項目が光ります。これに力を入れたい。
コンテンツとファッション、食べ物、観光との連携策も重視しています。ぼくもTokyo Crazy Kawaiiのような異業種活動に力を入れつつ、竹芝でそうした場づくりを進めたい。
もちろん、海賊版対策+人財育成は引き続き重要項目として列挙されています。6月末に工程表を加えて知財計画2014が完成する運びです。
ところで山本一太大臣があいさつで、ぼくと5時間メシ食いつつ少年ナイフの歌を歌ったことをバラしてしまったのですが、それは議事録に残るのだろうか……。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2014年8月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。