7月FOMC議事録はタカ派寄り、9月の出口戦略公表へ王手 --- 安田 佐和子

アゴラ

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7月29~30日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録は、9月16~17日開催分で出口戦略の方針を表明する可能性を残しました。

出口政策に向けた議論で、以下の方向で意見が収束してきた様子を浮き彫りとさせています。

1)フェデラル・ファンド(FF)誘導金利を政策金利の柱とする

2)FF金利は現状のレンジ形式を維持

3)FF金利の上限は、超過準備預金金利(IOER)と同じ水準に設定

4)FF金利の下限は、リバースレポ金利と同じ水準に設定

5)リバースレポは、時限的措置

6)再投資の終了は第1弾の利上げまで待つ

7)資産売却は出口戦略に含まず

6)については、2011年時点の出口戦略から180度転換させニューヨーク連銀のダドリー総裁の見解を採用したかたちです。7)は、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁などが旗振り役でした。全体的に、ハト派寄りメンバーの意見に収れんしたといえます。全体を振り返り、バークレイズのマイケル・ギャピン米エコノミストは「早ければ9月にも出口戦略を公表するだろう」と予想していました。

注目の第1弾の利上げに向けた議論は、「タカ派寄り」でした。

失業率が6月FOMC時点の予想レンジ上限にたどりつくなか「多くの参加者は、統治目標への水準回帰が見通しより格段に早く実現した場合、金融緩和の削除を現時点の予想より早急に開始することが適切とみなした(Many participants noted that if convergence toward the objectives occurred more quickly than expected, it might become appropriate to begin removing monetary policy accommodation sooner than they currently anticipated)」といいます。判断材料は「経済指標、労働市場、インフレ動向」を挙げました。

スタッフ経済見通しも、失業率の動向を踏まえ下方修正したと明記されています。インフレ見通しも、小幅に上方修正。統治目標に向かっていく方向性を確認しています。国内総生産(GDP)は上半期を下方修正した半面、下半期は据え置いたとしていました。

こうした見解に対し、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙のFed番、ジョン・ヒルゼンラス記者は「イエレンFRB議長の議会証言より(利上げに)わずかながら積極的」と評しています。PIMCOの前最高責任者(CEO)でアリアンツの経済主席顧問を務めるモハメド・エラリアン氏も、同じような認識をツイッターに上げていました。7月FOMCでは、タカ派で知られるフィラデルフィア連銀のプロッサー総裁が「長きにわたる低金利」の文言削除を求め反対票を投じましたが、次回はダラス連銀のフィッシャー総裁も加わる公算が大きくなったといえそうです。

エラリアン氏も、「市場予想よりタカ派的」との評価。

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タカ派寄り目された議事録に対し米株はナスダックの連騰を5で止めた程度で、ダウ平均とS&P500は3日続伸して引け。S&P500は終値ベースで7月24日の最高値1987.98pに約1.5ポイントに迫りました。出口戦略が発表されようが利上げをしようが、ウォールストリートが「長く緩い引き上げ」を予想しているからなのか、22日のジャクソン・ホール講演でイエレンFRB議長がハト派寄りを貫くと計算しているのか、景気鈍化の兆しが現れる米経済指標を見越し7月FOMC議事録を「過去の産物」と見なしたのか。22日のイエレンFRB議長の講演で、いったん答えが出てくることでしょう。

(カバー写真 : Tim Evanson)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年8月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。