なぜ、君は死を急ぐのか --- 長谷川 良

2014年09月10日 09:57

ドイツでは毎年、約600人の25歳未満の青年たちが自殺する。10歳から24歳までの青年たちの死亡原因で自殺は第2位だ。ちなみに、同国では毎年、約1万人が自殺する。この数字は交通事故死、麻薬中毒死、そしてHIVによる死者数を合わせたより多い。バチカン放送独語電子版が8月21日、報じた。

当方の周辺でも若者の自殺を聞く。初春の時だったと思う。地下鉄シュテファン大聖堂駅からスウェーデン広場を歩き、同広場駅に着いた時だ。駅周辺の様子がいつもと違う。若者が走ってきた地下鉄に飛び込んだという。警察、医者、地下鉄関係者が駅構内を閉鎖し、事故を調査中という。


また、数年前、ウィーンに住む邦人が自殺したことを知った時、ショックを受けたことを覚えている。オーストリアに住みながらその日本人は何をしていたのだろうか。音楽を学んでいたのだろうか。それともどこかの会社に勤めていたのだろうか。ウィーンは小さな都市だ。ひょっとしたら、その青年とどこかで会っていたかもしれない、と考えると心が痛くなった。冬が過ぎ、春が到来したが、彼はそれを持つことができなかったのだ。

音楽の都ウィーン市も自殺者が多いことで知られている。ベートーヴェン研究家としても有名なロマン・ロランはその著書「ベートーヴェンの生涯」の中で、「ウィーンは軽佻な街だ」と評している。観光都市として常にイベントを開き、イベントで暮れる。そのような都市の片隅で自殺者が絶えないのだ。オーストリアでは自殺を Volkskrankheit(国民病)と呼ぶ。

経済協力開発機構(OECD)によれば、2012年の韓国の自殺死亡率は29.1人でOECD加盟国のうち最も高いことをこのコラム欄で紹介したばかりだ。急速に経済国に発展した韓国の社会で自殺が疫病のように拡大してきているのだ。大統領職経験者から著名な俳優・女優たちも自殺する。著名人の自殺が報じられるたびに、「なぜ」という言葉が呟かれるが、誰も満足のいくような返答をする者はいない。

米ハーバード大学社会学者、ニコラス・クリスタキス教授は米国の自殺の名所といわれるカルフォルニアのゴールデンブリッジから飛び降り自殺した人間を調査する一方、飛び降りたが、死なずに生きた人間を詳細に検証している。

それによると、1937年から今日まで約1200人がゴールデンブリッジから飛び降りたが、そのうち26人が助かった。その助かった人たちの多くは自殺しようと飛び降りた瞬間、「全ての過去の問題は本来解決できたのだと分かる一方、飛び降りて自殺しようした行為だけはもはや取り返しがつかないと後悔した」と証言している。幸い、死なずに生きのびた人間は橋の上から水面まで約220フィート(約67メートル)の落下中に全く同じ経験をしているのだ。非常に興味深い研究だ。

どのような苦しい問題も解決できる。物の見方、生き方をチェンジすれば、全く別の視野が開かれる。失望するのに急ぐことはない……米大学教授の研究成果はそのようなことをわれわれに語り掛けている。若者たちよ、死を急ぐべきではない。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年9月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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