著作権シンポジウムにて --- 中村 伊知哉

2014年09月15日 10:56

著作権情報センターCRIC主催のシンポジウムに参加してきました。福井健策さんが基調講演+司会、池村聡さん、杉本誠司さん、増田雅史さんとぼく。ぼくがお話したことをメモしておきます。


◯海賊版対策について

知財本部でも、クールジャパン戦略でも、海外展開をどうするかは、デジタル化と並ぶ柱です。

守りとしての海賊版対策は、政治テーマでもあり、CODAなどの対策も厚くなっています。だが、攻めているのか?のほうが重要。コンテンツ産業の輸出は縮小傾向にあります。2006年から2011年にかけて、映画は10%、ゲームは20%、放送は30%の減少です。

海賊版対策はエンフォースが重要。ハリウッドは中国企業と正規版を開発・販売しているので、中国当局はそれを守ろうとしています。攻めることによって守る姿勢です。この点、日本企業はどれだけ攻めているでしょう?

ファンサブ問題も、自分たちがどれだけ攻めるかによって、位置づけも対応策も変わるでしょう。海賊版対策や制度対応以上に、ビジネスとしてどれだけ攻める気があるのかが気になるところです。

◯UGCと非親告罪化

非親告罪化は深刻です。洒落になりません。

ロンドン五輪の開会式で歌って欲しいアーチストの国際投票にて、初音ミクが1位を獲得しました。それはニコニコ動画でみんなが育てたから。それが日本の強みです。UGC、二次創作を育てるのが日本の戦略でしょう。

昨年、政府は重大決定をしました。「知財ビジョン」のトップ項目にUGCを据えました。コンテンツ産業の育成から、ユーザ創作へと重点を置き換えたのです。もう一つ、「ポップカルチャー分科会」の提言の冒頭で、クールジャパンのコアとして「みんなで」を掲げました。クリエイター、事業者だけでなくファンやユーザの力が重要だという認識です。

非親告罪化はこれに真っ向から対立します。TPPでこれを飲まされたら、どうすればいいのか。非常に大事な論点です。

(これに関して、中山信弘先生が同じ問いに対し、数秒思案して、「累犯に限るとすればどうか」とおっしゃったとシンポで福井さんから聞きました。う~ん。う~ん。なるほど。さすがだ。最初は親告罪にしたままにして、でも二回目からは故意・悪質がハッキリするから即時アウト。このほうが現行法よりいいんじゃないかと思います。TPPのせいにしてこれを導入してしまえばどうだろう、と思いました。)

◯電子書籍

出版社は必要か? という問い。はい、必要です。出版社も新聞社もレコード会社もそうですが、輪転機を回して印刷するだけならいらなくなるかもしれません。でも、出版社の機能は、編集、プロモ、営業、人材マネジメント=プロダクション、人材育成、そして金融。作って売れるまでカネをつないでくれるという大事な機能。これは引き続き重要です。

デジタル教科書は? という問い。教科書に認められている著作権法上の特例がデジタルには認められず進まない、という大問題があります。日本は教育情報化の後進国。この制度を整えないといけません。しかし、この整理は時間がかかるのではないかと懸念しています。

◯アーカイブ

政府でも議論が進みました。元は福井健策さんの「全メディアアーカイブ構想」です。東京五輪に向けて、ソフトパワーを発揮するインフラが必要です。デジタル教育の知識インフラが必要です。いずれも2020年がターゲット年となります。

さまざまなジャンルのものをアーカイブ化したいですね。ただし、課題はジャンルによって濃淡があります。文化財、出版、放送は利用促進が課題で、そのために連結した検索システムが必要。映画、マンガ、アニメ、ゲームはまずもって作ることが必要。

制度面では孤児著作物が重要テーマです。もう1つはビジネスモデルを作ること。人とカネをどうやってあてがい、サステナブルに運営できるようにするかです。でも、より大きな問題は、それを国として本気でやるのか、10-20年続く気合いを入れられるのか、決意が問われている状況です。

◯メッセージ

シンポのラストに問われた一言メッセージ。ぼくは「創る 張る」と書きました。

創る:著作権は大事、制度は大事、だが、ビジネスやサービスを創ることがもっと大事。守るより攻める。サービス、ビジネス、海外市場を作ろう。これに役立つ制度、仕組みを創りたいと思います。

声を張る:TPPでは知財は農業に埋没しています。優先度を上げなければいけません。そのためには、われわれ関係者が声を上げること。賛成も反対もあるが、問題が大事だということを強調しなければ。こういう場を作り、主張を高めたいと考えます。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2014年9月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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