ノリミツ・オオニシ記者はNYTの吉田清治

池田 信夫

朝日新聞は吉田清治についての誤報を謝罪したが、NYタイムズのオオニシ記者は、彼自身が吉田なみの詐話師である。特に世界に大きな影響を与えたのは、「安倍首相の発言は元慰安婦の傷口を広げる」という2007年3月8日の1面トップの記事だ。


この「安倍首相の発言」とは、3月5日に参議院予算委員会で安倍首相が河野談話について「官憲が家に押し入って人さらいのごとく連れて行くという強制性、狭義の強制性を裏付ける証言はなかった」とのべた答弁だ。これに対してオオニシ記者は、ヤン・ルーフ・オヘルンと呉秀妹と吉元玉という3人の元慰安婦の証言を根拠にして「安倍は嘘つきだ」と断定する。オヘルンの証言はこうだ。

On the first night, it was a high-ranking officer,” Ms. Ruff said. “It was so well organized. A military doctor came to our house regularly to examine us against venereal diseases, and I tell you, before I was examined the doctor raped me first. That’s how well organized it was.

彼女からみると「軍の組織的な犯行」に見えたようだが、残念ながら慰安婦が軍命の存在を証明することはできない。このスマラン事件(白馬事件)については軍事裁判の記録があり、珍しく証拠がそろっている。吉見氏も認めるのは、次のような事実である。

  • 現地の将校が、自由意思の者だけ雇えという第16軍司令部の規制を無視して35人のオランダ人を拉致し、4ヶ所の慰安所に閉じ込めて強姦した。

  • この犯罪行為をオランダ人が陸軍の小田島大佐に訴え、彼の勧告によって16軍司令部は、1944年4月末に慰安所を閉鎖した
  • 強姦の容疑者12人は、BC級戦犯として軍事法廷で有罪判決を受けた(岡田少佐は死刑)。

他の2人は「だまされて慰安所に行った」といっているだけで、陸軍の組織的な犯行だという証拠はどこにもない。つまりこれは軍紀違反の強姦事件であり、日本軍が責任を負うべき問題ではない。オオニシが痴漢事件を起こしても、NYTが企業としての責任を問われないのと同じだ。痴漢事件はNYTが組織的に痴漢をやっていた証拠にはならない。

特にオオニシの記事が悪質なのは、安倍首相は河野談話、つまり朝鮮半島の出来事について答弁したのに、インドネシアの強姦事件を持ち出してそれを批判していることだ。インドネシアは戦地であり、強姦事件はいくらでもあっただろう。軍がそれを奨励していたのなら批判さるべきだが、軍は慰安所を閉鎖して関係者を処罰したのだ。

もちろんオオニシはそれを知っているが、話を意図的に混同して「インドネシアで強姦事件があったから朝鮮半島についての安倍の発言は嘘だ」というデマをNYTの1面トップで流した。これがきっかけになって世界に「性奴隷」神話が広がり、アメリカの圧力で日本政府は河野談話の見直しができなくなった。

戦地で強姦事件があったとしても、日韓関係とは無関係だ。インドネシア人は、そんなことを覚えてもいない。高木健一弁護士がインドネシアまで行って「日本を訴えたら1人200万円もらえる」というビラをまいて原告を募集した。そんな弁護士の偽造したデマを大事件に仕立てて日本政府を追い込んだオオニシの大誤報を、NYTは訂正して謝罪すべきだ。