香港「富裕層」が怖れる直接選挙

アゴラ編集部

依然として香港政府と民主派との間でにらみ合いが続いている香港で、今日10月21日から本格的な「対話」が始まります。民主派は香港の中心地にバリケードを築き、次第に市民の生活や経済活動に影響が出始めている。市民の中からも長引く対立に批判の声が上がり始めているようです。

民主派の代表は、バリケード封鎖やデモが「過激化」して当局の弾圧を招くことに危機感を抱いているらしく、頻繁にデモなどの参加者へ暴力的行動をいさめるアナウンスを出しています。一方、当局との対話で民主派は、行政長官選挙での「民主化」を香港政府に突きつけるでしょう。


この「民主化」というのは簡単に言えば「直接選挙」です。香港の行政長官選挙では、選挙委員会によって選ばれます。この選挙委員会のメンバーは、財界や業界団体などから選出されるため、行政長官、という香港政府のトップを選ぶのは、現在の日本で行われている首相選出と同じ「間接選挙」となっている。日本と決定的に違うのは、選挙委員会も直接選挙で選ばれているわけではない、という点です。

民主派は、香港政府のトップも直接選挙で選ぶべき、と主張しているんだが、そうなると選挙委員会が有名無実化してしまいます。世界中の「民主的」な選挙は有権者をどう選ぶのか、という点で共通しており、例えば民主国家であるイスラエルがパレスチナを受け入れない理由は、パレスチナ人のほうが圧倒的に人口が多く、もし民主的な選挙で彼らに選挙権を与えれば、イスラエルの国そのものがパレスチナ人に乗っ取られてしまう、という恐怖心があるからでしょう。

現在の香港政府のトップである梁振英行政長官は、20日に記者会見を開き、香港の行政長官選挙に直接選挙制を導入すれば「貧困層にイニシアティブを握られるので受け入れることはできない」と言ったそうです。香港は世界的にも所得格差が大きな地域で、平均月収1800米ドル(約19万3000円)の「低所得者層」が有権者候補の半数になるらしい。

日本でもこの程度の所得者層は多そうなんだが、選挙へ行くか行かないかは別として一応、選挙権は持っています。しかし、香港ではこうした低所得者層の声を政治や行政へ反映させることができない、ということにほかならない。梁行政長官の発言は身も蓋もない内容とは言え、香港の「富裕層」の持っている不安を正直に表したものでしょう。

QUARTZ
Hong Kong has too many poor people to allow direct elections, leader says


Low oil price means high anxiety for Opec as US flexes its muscles
the guardian
原油価格が下落傾向にあるようなんだが、米国のエネルギー事情は「脱中東」に移行しつつあり、シェールガスや自然エネルギー、省エネ技術、などなどがその背景です。これは、OPEC(石油輸出国機構、Organization of the Petroleum Exporting Countries)にとって、こうした米国の筋肉質のエネルギー事情が不安、という記事です。いわゆる「石油危機」は、政治的に意図的に醸成されることもあり、イスラム国でドタバタしている中東情勢もひょっとするとこうした文脈の中にあるのかもしれません。しかし、中東依存が低くなっている米国は、そのドタバタに介入する理由がない。やはり、エネルギー的な自立は重要、というわけです。

気分は映画館! 電力いらずのスマホ専用プロジェクター
タブロイド
何か昔、学習雑誌の付録についてきたような「装置」です。しかし、幻灯機、というような趣がいい。とことんアナログなわりに4200円ほどの値段はどうなんでしょう。

The World’s Most Beautiful Boat—Yours for Half a Billion Dollars
THE DAILY BEAST
豪華ヨットの記事です。全長132メートル、高さが60メートルもある。デザインが近未来的でまるで宇宙船のようです。設計したのはロシア人のデザイナーらしい。お値段は150億円以上。富裕層向けの商品でしょう。
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Lobanov Design

10 things farmers won’t tell you
MarketWatch
農家があなたに告げない10の事柄、という記事です。農業はそれほど儲かるもんじゃない、とか、形の悪い作物が捨てられていたりする、とか、産直のマーケットは必ずしも新鮮じゃない、とか、農薬使用は再び増加傾向にある、とか。とは言っても、これは米国の話。日本の農家にとってはちょっと非現実的な内容なのかもしれません。


アゴラ編集部:石田 雅彦