保守言論に必要な「修辞的」戦術とは --- 栗林 孝行

2014年10月28日 13:03

中国が周辺諸国に対してあからさまな領土的野心を燃やしているという現実がある。日本がシーレーンを防衛する為にももっと本格的な集団的自衛権を持つ必要があるのは明らかである。

しかしこういった現状にあっても、未だに朝日新聞を始めとするリベラル言論は現実に即していない一国平和主義を掲げ無関係な徴兵制を出すなど意図的ともとれるミスリードまでして集団的自衛権を否定している。朝日新聞の誤報問題を切っ掛けにやや保守言論が盛り返して来たようには思えるが、現実に即していない集団的自衛権反対派は未だに言論の主流となっている。


そもそもリベラル言論が日本においてここまで台頭できたのは「言論としての美しさ」に優れているからではないだろうか。憲法9条を後ろ盾とする彼らの、国ならば当然持っている交戦権や軍隊の保持を禁止するという自分の立場を弱めてまで世界平和に貢献するという姿勢が日本人が美徳とする謙虚さと重なり、自己陶酔的な形で大衆に受け入れられたことは想像に難くない。

もちろん背景には戦後の厭戦感情や国への不信感もあっただろう。しかしリベラル言論が「言論としての美しさ」に優れており、どことなく国粋主義的な印象がある保守言論よりも大衆の支持を得やすいことは事実である。

では保守言論が支持を得るにはどうすればよいのか。リベラル言論と同じように「言論としての美しさ」を追求すればよいのである。始めに上げた中国の海洋進出の脅威を例に取ってみよう。「中国の脅威に対抗し、シーレーンを防衛する為にも集団的自衛権が必要だ」という主張は至極まっとうな主張と言える。

しかし日本は戦後70年近く(朝鮮戦争の掃海任務を除けば)集団的自衛権を行使しておらず、集団的自衛権がなくて良かったと思う人がいても、なくて損をしたという人は殆ど存在しないだろう。中国の脅威に関しても長らく平和を享受してきた日本人にとってはあまり現実感が湧かず、なんとなく陰謀論染みた主張に感じられてしまうかも知れない。

そういった実感しにくい脅威を主張するよりも、「集団的自衛権を持つことはアジアの安全保障の為に日本が果たすべき最低限の義務である」と主張した方が大衆に受け入れられるのではないか。

中国の周辺国家は多くが中国と経済的に依存関係にありながらも、集団的自衛権を持ち、程度の差こそあれ中国の侵略行為に対する抑止力として機能していると言える。一方で一部解釈改憲されたものの集団的自衛権が殆どない日本は、(米軍基地を除けば)日本以外への中国の侵略行為に対して全く抑止力になっていない。

中国が東南アジアを今よりもっと大胆に侵略してシーレーンを奪われても日本は自国を攻撃されるまで動くことができないのである。にもかかわらず、日本は中国と非常に強い共依存関係にあり、中国の軍拡に一役買っているとも言える。これは猛犬を養っておいて紐にすら繋がないで自由にさせておくような物である。乱暴な言い方をすると集団的自衛権がない日本はアジア全体の安全保障において邪魔でしかない。だからこそ集団的自衛権を持ち、日本はアジアの安全保障の為に最低限の責任を果たさなければならない。

「中国脅威論に基づいてシーレーン防衛をできるようにすべき」という主張も、「アジアの安全保障の為に国家としての最低限の義務を果たすべき」という主張も、目指すゴールはどちらも同じではある。しかし前者は「陰謀論に基づく国家権力の拡大策」と思われかねないのに対し、後者は「国家としての義務を果たす為の権利の主張」であることに間違いはない。「言論としての美しさ」は後者の方が優れているのではないか。

「言論としての美しさ」なんてどうでもいい。と思われる方も多いだろう。無論保守寄りの読者の方が多いであろうこのサイトの投稿には、「言論としての美しさ」なんぞに拘る必要性はあまりないだろうし、そういった印象論に関しては私としても多少の嫌悪感がある。

しかし朝日新聞にも存在する言論の出先機関とも言える保守言論を取り扱った週刊誌広告、書籍広告の内容や、左寄りの知人と議論する際には多いに意識すべきだ。元々保守の人に保守言論が支持されてもあまり意味がない。やや左寄りの人に「そういう考え方もあるのか」と感じて貰い、少しでもリベラルメディアの主張に客観的になって貰うのが何より大切ではないだろうか。

所謂ネトウヨと呼ばれる人々も、ヘイトスピーチが問題になっている在特会も、保守論客の一部もそうだが、未だに排外主義、国粋主義的な右翼思想から抜け出せていないように感じる。本当に広く保守言論を広めたいと考えるならば、そういった姿勢は寧ろ逆効果でしかない。これからの保守言論は現実主義、客観主義としての立場を固め、頭ごなしに否定されないよう理論武装する必要がある。

栗林 孝行
一般人

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