これからは仏語人口が伸びる

本山 勝寛

モロッコでハンセン病と人権国際シンポジウムを開催した。2010年に国連総会で採択されたハンセン病差別撤廃決議の実行を促すため、世界5地域を回って開催しているシリーズの一環で、3年かけてようやく4地域を回ることができた。日本財団は世界中でハンセン病制圧と差別撤廃に取り組んでいるが、患者数の少ないモロッコは誰も訪問したことがなく、全くゼロからパートナーを探し4ヶ月で国際シンポジウムを開催するというところまで漕ぎ着けなければず、これまで以上に苦労した。


特に苦労したのは英語が通じない点。モロッコの公用語はアラビア語とベルベル語だが、旧フランス植民地のためフランス語もかなり通じる。フランス語圏の特徴として、政府やNGO、ホテルやタクシーなど他の国々では英語がある程度話せるような人々でも、仏語圏ではあまり通じないケースが多いということ。それを悪びれることもなく、「なんでお前はフランス語を話さないんだ」というような態度の人が多いように思う。

関係者に連絡しようにも、ほとんどの人がそういった調子なので、なかなかコミュニケーションがうまくいかず苦労した。Google翻訳で英語から仏語に翻訳をかけてメールを送ることもしばしばだった。国際舞台で仕事をするには英語だけでは不十分で、それぞれの国で使われる言語を修得することが大きく役立つことは言うまでもなく、そのことを実感させられた期間だった。

先日「世界の4人に1人は英語が使え、その大半がネイティブではない」という記事で書いた通り、世界の英語人口は現在およそ17.5億人でトップだ。統計方法によって若干の数値の違いはあるが、これに2位中国語12億人、3位ヒンディー語7億人、4位スペイン語4.2億人、5位ロシア語2.7億人、6位フランス語2.2億人、7位アラビア語2.2億人と続いている。さらに、使用している国数でみると、フランス語は29カ国で公用語になっており、英語に次いで二番目に多い。

国連欧州本部や各種の国際機関が集まるジュネーブを有するスイスや、EU本部のあるベルギーもフランス語で、国際社会におけるフランス語の存在感は思いのほか高い。また、今回のモロッコもそうだが、アフリカ諸国もフランス語圏が多く、これから人口が急増する国々だ。

中国の人口がこれから伸びず、むしろ2100年には10億人に減少するのに対して、ナイジェリアの9億人を筆頭にアフリカ諸国は人口が急増すると予測されている。フランス語圏でみると、2100年にはDRコンゴが2.6億人、ニジェールが2億人、マダガスカルとマリが1億人、フランス8千万人、コートジボワール7600万人、ブルキナファソ7500万人と人口大国が仏語圏で多数出てくる。総人口数では約10億人に達し、中国語と並んで2位に躍り出ることになる。ちなみに2100年の日本の人口は8400万人と、現在より3分の2に減少すると推測されている。

日本では中国語を学ぶ人が増えているようだが、今後の長期的な人口推移と国の拡がりを考えると、フランス語を学んでおくこと、そして国としてはフランス語を教えられる人材を育てることも一つの戦略と言えるかもしれない。フランス語ができずに苦労した反省もこめつつ。

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学びのエバンジェリスト
本山勝寛
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「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。